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公望、ついにフランス、パリにおり立ち、下宿先に向かうもそこで…!

公望たちは長い船旅の末に、ようやく留学先のフランス、パリに到着した。


思えば長い旅路だった。


太平洋を渡るのではなくて、アジア方面から行くルートもあったのだが、こちらもまた、オランダ領東インド、インド、アラビアを経由して、そこからはアフリカ大陸を海岸沿いに南下していき、南アフリカの喜望峰から、さらに今度は海岸沿いに北上していき、ポルトガル、スペインを経由していかねばならないという、まさに地球一周の、とんでもない長旅となる。




さて…。




公望たちが到着したフランスは、1871年のプロイセン・フランス戦争に敗れ、さらにはパリ・コミューンが政府軍の攻撃によって鎮圧されたばかりの頃。


「ここがフランス、パリか…。」


到着したはいいが、この後公望は、約10年にもわたり、フランスで留学生活を送ることになる。


帰国後にはいよいよ明治政府内で頭角を現していくことになる。そのための、まず第一歩が、このフランス留学だった。


「そうだ、まずは凱旋門でも見に行こう。」


かの有名な凱旋門は、この頃の時代からあった。


さらに話を聞くと、シャンパーニュという地方で生産されている、シャンパンという、スパークリング白ワインがフランスの特産品の1つだという。


凱旋門の写真をデジカメで撮影した後に、そのシャンパンというスパークリング白ワインを試飲させてもらうことになった。


「これがスパークリングワインというのか。

それで、このワインの名称は、シャンパーニュ地方で生産されているから、シャンパンと。

これはさっそく日本にも広めたいものだな。」


「他にもここフランスでは、様々な種類のワインが生産されていますよ。」


「うむ。」


次に、ここでお世話になる、下宿先を探さねばならないと思ったが、それは既に、事前に手配されていた。


「ここが下宿先か…。」


慣れない異国の地での生活に、不安を隠せなかったが、この地で学びとったことを日本に持ち帰り、今後の国造りに生かしていく、という使命感もめばえてきていた公望だった。




この日は下宿先から町の外に出てみる。せっかくだから、パリの町並みでも見てみようかな。


「ほら、あの髪の毛の黒い人、あれは日本人ね。」


「日本人が洋服を着ているなんて。でも案外似合っているわね。

日本人が洋服を着ると、あんな感じになるのね。」


金髪の青い目の、ドレスを着た、いかにも高貴な身分といった感じのフランスの女たちが、口々にこう言っていた。


やがて公望は、セーヌ川沿いを歩く。パリの町中でも、馬車が走っていく。


パカッパカッパカッパカッパカッパカッ!




こうしたなか、岩倉具視、伊藤博文らの遣欧使節団は、フランスを発ち、一路ビスマルク首相のいるドイツへ向かうという。


当時はまだプロイセンからドイツになったばかりの、そのドイツへと向かうという。


当時フランスは、そのプロイセンとの戦争に敗れていた。


そしてそのプロイセン改めドイツでは、皇帝ウィルヘルム1世が絶対的な権限を持ち、議会の力を抑えていた。




伊藤博文らはそのまま、ドイツへ向かう。


公望たちは、伊藤博文らとはここでお別れ。


公望はその後長らく、このフランスに滞在することになるが、実は密かに日本に帰国していたこともあったという。


その間、日本とフランスを行き来しながら生活をしていたのだった。


「こんなこともあろうかと思ってね。空飛ぶ秘密兵器、専用飛行機を用意しておいたのさ。」


おや、いったいどこからそんな専用飛行機なるものを…。


そして実際に、大西洋横断飛行を、公望はリンドバーグよりも先に、しかも公望の場合はパリから飛び立ってニューヨークの方向へ、リンドバーグの時とは逆方向に飛んで大西洋単独横断飛行をやってのけたのだった。




おや、もうすぐ日が暮れるな。そういえばパリは『光の都』ともいわれる通り、夕日がきれいだ。


ちょうど夕方の時間帯になると、幻想的な光の光景が広がる。


それを目にしながら、公望は下宿先に帰っていったとさ…。





公望はついに、パリの下宿先に到着する。


「ここが下宿先か…。」


公望はおそるおそる、扉を開ける。


「ボンジュール。ようこそいらっしゃい。君が今度ここにやってきた日本人か。」


出迎えたのは、いかにも屈強な感じの男と、その男の奥さんらしい、魔法使いのような格好をした女だった。


さすがにこれには公望も驚きを隠せなかった。


「いったい何なんだ。この人たちのこの格好は。

西洋では皆、このようないでたちをするというのか、

いや、我らにはとても、理解し難い考えだ…。」


公望は直接は声に出さず、心の中で今のセリフを言っていた。




そしてその日の夕食に用意されたのは、フランスパンと、肉料理。


それと、オレンジジュースと、カヌレという小さなケーキだった。


このカヌレというのはいったい…。


「すみません。このカヌレというケーキについてお尋ねしたいのですが。」


するとその屈強な男は語る。


「ああ、そのカヌレというケーキは、俺ん家の隣の店で売ってたから、買ってきてやったんだよ。」


これがカヌレというのか。フランスの人々は、こんなおいしいケーキを食べているのか…。


公望はこのカヌレをたいらげた。


フランスパンと肉料理もひととおり食べ終えた後、オレンジジュースを飲みながら、しばしの休憩に入る。


そしてようやく旅の疲れも癒え、気持ちも落ち着いた。


「さてと、それではこのフランスの国の歴史について学習するか。

せっかくこのフランスまで留学しに来たんだから、まずはこの国の歴史について知っておかないとな。」


公望は本を開く。するとそこには、15世紀にイギリスとフランスが戦った、英仏百年戦争に関する記述があった。


「えーっと、なになに、英仏百年戦争でフランスは負けてばかり。

1420年にはパリまでも攻め落とされてしまったとか…。」


そんなさなか、イギリス占領下のパリに、1429年、1人の少女が現れた。


それがジャンヌ・ダルクだった。ジャンヌ・ダルクはオルレアンを解放し、それをきっかけにして、フランス軍は形勢逆転を果たす…。


「なるほどな、英仏百年戦争、そしてオルレアンを解放した少女、ジャンヌ・ダルクか…。」


公望はすっかりこの英仏百年戦争の、そしてジャンヌ・ダルクの物語にのめり込んでいた。


そして気がつくと、熱心に本を読みふけっていた。


その時だった。


突然、本のページが光り出した。


「な、何だ!?」


そして公望は、その本の放つ不思議な光に吸い込まれていった。


公望はそのまま、その本の世界に吸い込まれていったのだった。


「うわあああーっ!」




そして、気がつくと、そこはどこかの戦場のようだ。


そこはどうやらフランスのパリらしいが、町並みは大きく異なる。


中世風の甲冑(かっちゅう)を着た騎士たちが闊歩(かっぽ)する。


そしてどうやら、建物に掲げられている旗は、フランスの旗ではないようだ。


その旗は、どうやらこのパリを占領下においている、イギリス軍の旗のようだ。


だとしたら、ここは…?


いや、そんなはずはない。そんなことは現実には起こりうるはずがない。


そんな考えを抱きながら、公望は通りかかった人に話を聞いてみることにした。


「あのー、すみません。ここは1871年のパリですよね。」


するとその人はこう答えた。


「はあ?何言ってるんだお前。それにお前、この辺りじゃ見かけない顔だな。

それに服装も、このあたりじゃ見かけない服装だな。

そうだ。ここはパリだよ。ただし、1429年のな。

今やフランス軍は負けてばかりで、このパリも、見ての通り、イギリス軍に占領されちまってる。」


1429年、ということはここは、英仏百年戦争の時代の、つまり、ジャンヌ・ダルクの時代のパリだということになる。


つまり公望は、1871年のパリから、1429年の英仏百年戦争の時代のパリに飛ばされてしまったということになるのだった。


「えーーーーーっ!」


公望は自分の身に何が起こったのかもわからず、ただ唖然呆然とするばかりだった。


いったいこれからどうしたらいいんだ…。


公望はただ、途方に暮れるばかりだった。




その時だった。甲冑(かっちゅう)の音が鳴り響く。


どうやらこれは、たった今、パリを占領している、イギリス、いや正確には、イングランドの騎士たちのようだ。


ドーン!ドーン!


そして、大砲の音も聞こえるようだ。イギリス軍は当時発明されたばかりの大砲を使って、フランス軍を次々と打ち負かしていった。


「あれが、英仏百年戦争時代のイギリス軍か…。」


彼らに気づかれないよう、忍び足でその場を立ち去った公望だった。


やれやれ、ひとまず助かったが、しかしこれからどうすればいいのか、


それを考えると、またまた、途方に暮れるよりほかなかった…。


「……。」


公望は、あてもなくさまよい歩いていた。



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