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公望たちはワシントンへ向かう、そこで不平等条約改正の交渉を行うも、我が国の立場の低さを思い知らされる…。

アメリカもそれなりに見所は多かったが、留学の目的地はあくまでもフランスだ。物見遊山に来ているわけではない。


そして、ワシントンでは、岩倉使節団の代表者たちが、不平等条約改正のための交渉にあたることになった。


特命全権大使として岩倉具視、副使として木戸孝允、大久保利通、伊藤博文、山口尚芳が任命された今回の岩倉使節団。


特命全権大使


岩倉具視(いわくら・ともみ)


副使


木戸孝允(きど・たかよし)


大久保利通(おおくぼ・としみち)


伊藤博文(いとう・ひろぶみ)


山口尚芳(やまぐち・なおよし)


以下、一等書記官、二等書記官、三等書記官、四等書記官、大使随行、理事官といった役割の者たちが、日本政府の代表として随行した。


いわゆる『明治の三傑』のうち、西郷隆盛をのぞく2人、木戸孝允と大久保利通が、岩倉使節団の副使として派遣されたということ。


さらに、後に初代総理大臣となり、西園寺公望らに多大な影響を与えることになる、伊藤博文もまた、この時の副使の1人。


残る1人の副使は、山口尚芳だった。


しかしここで、岩倉使節団の代表たちは、今の日本の国際的立場の低さを痛感することになってしまうのだった。


ようやく近代化を始めたばかりの時期。そんな時期の日本の要求が、そうやすやすと受け入れられるはずもなかった。


アメリカ大統領とも直接交渉したようだったが、ホワイトハウスから出てきた使節団の代表者たちの表情は、一様に沈んでいた。


「だめだ…。実質門前払いのような物言いだったな…。」


明治時代の日本は、この後も長らく、この不平等条約に苦しめられ、何度も条約改正のための交渉を行っていくことになっていく。


公望のもとにも、その報告は届き、留学生仲間たちとともに、その話をしていた。


「そもそも日本の立場が低いから、こんな不平等条約なんか押しつけられるんだ。」


一同、そういった思いはあった。自分たちが海外に留学する目的は、将来の日本の役に立つ人間になるための勉強をして、そしてゆくゆくは、日本の国際的立場を高めていく、そのための貢献を行っていく、というもの。


そんな中、公望はまたまた、ある人物と出会う。


それは、福井藩出身で、この使節団の一員として随行していた、由利公正(ゆり・きみまさ)という人物だった。


「そなたが西園寺公望殿か。それがしは由利公正と申す。」


「由利公正殿か。」


「うむ。公望殿も、先ほどの不平等条約の件を聞いて、おそらく感じたことだろう。

日本はまだまだ近代化の第一歩を踏み出したばかり。

国際的な立場はまだまだ低い。

そこで、将来有望な、しかるべき若者たちを各国に留学させたいという政府の思惑と、

外国に留学して、外国の法律、制度、文化などを学びとり、それを将来的には日本に持ち帰りたいという若者たちの思惑とが一致したのだ。」


この由利公正だけでなく、今回の使節団の一員として随行している数多くの人たちと交流を深め、時には意見の交換も行うという、公望にとっては、目的地のフランスに到着する前の、途中の旅でも、さまざまなことを学びとる勉強となる旅となった。



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