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公望、アメリカで鉄道に乗る!

1872年、日本の年号では明治5年、新橋~横浜間に日本で最初の鉄道が開通した。


それにさきがけて、公望は西部開拓時代のアメリカの、大陸横断鉄道に乗ったのだった。


岩倉使節団の一行は、サンフランシスコをあとにして、ロサンゼルスへと向かった。


そこで公望はまたまた、新たな出会いをする。


「おお、あなた方はたしか、日本から来られた、岩倉使節団の方々ではありませんか。

あれをごらんください。あれは、野球というものです。」


アメリカを訪れて、このように行く先々で、いろんな人たちからアメリカの文化を教えられる。


「野球とは、ベースボールのこと。

そして野球場は、ボールパークといいます。

そもそもこのベースボールは、最初は消防団の運動不足解消のために始められたという、説があります。これは諸説ありですが、一つの説として、そういう話があります。

そしていつしか、野球そのものが楽しくなり、やがて全米に普及していったということです。」


公望はそれらの説明を熱心に聞いていた。


そしてその日は、ロサンゼルスの豪華ホテルに宿泊。


ここでは2泊した。1泊目は鴨肉の香草焼きと、ロールパンと、コーンポタージュスープと、オレンジジュースが、夕食として出された。


2泊目は舌平目の香草焼きと、なぜかコンビーフづくしのメニューだった。


それにしても2日続けて香草焼きとは、さらにはコンビーフなる、謎の食べ物が…、と、公望は思っていた。


コンビーフポテトと、コンビーフとピーマンのトーストが出された。


そしてこの日のスープは、コンソメスープが出された。


飲み物はコーヒー。コーヒーはもっと古い時代から、アメリカでは飲まれているという話を聞いた。


「やれやれ、こういうのも勉強のうちか。」


公望は頭の中で、そう思っていた。




2泊3日でロサンゼルスに滞在。ここから、鉄道に乗って移動するという。


なにしろ、アメリカの西海岸から東海岸まで移動していくわけだから、とても徒歩や馬車などでは間に合わない。


サンフランシスコに下り立ち、ロサンゼルスを経由して、そこから東海岸のニューヨーク、ワシントンへと向かうという行程だった。


ニューヨーク、ワシントンへ向かうため、アメリカ横断鉄道に乗っていくことに。


ヨーロッパではずいぶん前から走っているという鉄道だが、この時期になると、アメリカ大陸でも鉄道が走るようになっていた。


岩倉使節団の一行も、鉄道に乗るのは初めてだった。もちろん公望も、鉄道に乗るのは初めてだった。


鉄道は、それこそ徒歩や馬車などとは比べ物にならないほど速く走るという。いったいどれほどの速さなのか。


当然、明治初期の日本人たちには、それがどんなものなのかなど、知るよしもなかった。


「それでは、出発進行!」


当時の鉄道というのは、蒸気機関車、つまりSLのことだ。黒い煙をもくもくと出しながら、汽車が疾走する。


「うひゃあ!なんだこの速さは!今まで経験したことのない速さだ!

それに、それにこの雷でも落ちたかのような轟音と…!」


他の者たちは、その速さと轟音に驚き、あわてふためいていたが、


公望は一人、いつかこの鉄道が日本中を駆け巡る光景を、早くも思い描いていたのだった。


だって、実際にそうなっていくのだから。




「さてと、せっかくこの蒸気機関車の車両に乗り込んだ、正確には客車に乗り込んだんだから、車内の様子でも見てみるか。」


公望は客車の様子を見てみることにした。


なにしろ、西海岸から東海岸までは、列車でも何日もかかるという。


その間、公望たちは、ずっと列車に乗っている状態。何かやることでもないと、退屈してしまうだろう。


すると、ちょうど腹が減ってきたようだ。


そしてこの列車の中には、食堂車というのがあって、そこで列車に揺られながら食事をするのだそうだ。


この日の食堂車の料理は、サーモン、つまり鮭の香草焼きと、添え物のサラダ、パン、田舎風スープ、それと飲み物と、さらにデザートのケーキがついていた。


料理はそれぞれウェイターたちが持ってきてくれた。


「どうぞ。サーモンの香草焼きと、サラダと、パンです。」


「どうもありがとう。」


「どうぞ、こちらは田舎風スープになります。」


「へえ、これが田舎風スープというのか。」


「飲み物は、コーヒー、紅茶、オレンジジュース、ミルクの中から、どれか1つを選べます。」


「それじゃ、一杯目はコーヒー、二杯目は紅茶でよろしく。」


「こちらは、デザートのチーズケーキとなります。

ご注文の品は以上でよろしいでしょうか。」


「これがチーズケーキというのか。

ああ、注文は以上だ。

この食堂車の料理はなかなか美味しい料理がそろっているな。」


「ありがとうございます。そう言ってもらえると光栄です。」


アメリカの料理にしては、この食堂車の料理は、かなり高級感のただよう料理だなと、公望は心の中で思いながら食べていた。


さらに、客車は寝台車になっている。何日もかかる長旅なので、車内で寝泊まりできるようになっているようだ。


「さあ、今夜はもう寝るとするかな。おやすみなさーい。」


夜の地平線を疾走する列車。ただし、ごくまれに列車強盗が現れて、列車ごと盗まれてしまうこともあるとか。


まあ、それさえ気をつければ、快適な旅となるのだが、実際に旅をするのは、西部の荒野。


「とにかく、無事に旅を終えることができますように。」


そう言って、一同眠りについたのだった。


たぶん、明治初期の日本人で、このような列車の旅をしているのは、おそらく自分たちが初めてだろうと思いながら、眠りにつく。


そして夜も更けていった…。




翌朝、起きてみると、地平線から昇る朝日がまぶしい。


便所で用を足した後、手を洗い、顔を洗い、それから朝食へ。


「おはようございます。昨日はぐっすりと眠れましたか?」


「ああ、ぐっすりと眠れたよ。」


留学生仲間から声をかけられる。


そして朝食は、ハムエッグトーストと、ジャムロールと、ホットドッグと、添え物のサラダ、コーンポタージュスープ、それとコーヒー、紅茶、オレンジジュース、ミルクの中から選べる飲み物。


そして、またまた、食堂車自慢だという、チーズケーキが出てきた。


「それにしてもアメリカ人ってのは、こんなにたくさん食べるんだな。

だから、どうりで体が大きいわけだよ。」


そしてようやく朝食を食べ終えた後は、今度は留学先で、言葉の壁に困らないようにと、英語と、フランス語の勉強をすることにした公望たちだった。


「ふう…。」


公望は一息ついた。



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