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さようなら幕末、ようこそ明治(6) 慶喜の嘆き~江戸無血開城に向けた交渉~そして長岡戦争・会津戦争へ!

それにしても、有栖川宮熾仁親王(ありすがわのみやたるひとしんのう)といえば、和宮(かずのみや)と結婚する予定が、公武合体とかいう政略結婚によって反故(ほご)となってしまった人物。

自分と結婚するはずだった女をとられた恨みつらみはあるだろうに、その人が、江戸を戦火に巻き込まないでほしいと書状に書いたのは、睦仁(むつひと)、つまり明治天皇の計らいによるものだったという。

睦仁(むつひと)も、やるねえ。と、公望(きんもち)は思っていた。




ここは江戸城の内部。

東照大権現(とうしょうだいごんげん)真君(しんくん)家康公、お歴々の将軍の皆様方、申し訳ございません!!

この慶喜の代にて、終わりを迎えることになってしまい…。」


徳川幕府の元15代将軍、慶喜は、江戸城をお忍びで抜け出し、誰にも気づかれないように、いずこかへと向かう。

徳川家の菩提寺、池上増上寺と、上野寛永寺に立ち寄る。

池上増上寺では、突如として悪態をつくようなことを口にする。

「わしが大政奉還やってやったけどよ、本当はもっと早く!

他の誰かが大政奉還するべきじゃなかったのか!?

どうせ立て直せる見込みなんてなかったんだろうよ。

家慶、家定、いや家茂!お前が大政奉還やらなかったから、この慶喜がやってやったんだよ!」


慶喜は悪態をつきながら池上増上寺をあとにして、次に向かった先は、上野寛永寺。

ところがそこは、上野彰義隊(うえのしょうぎたい)なる者たちが居座っていた。

上野彰義隊(うえのしょうぎたい)…!」

慶喜は上野寛永寺には寄らずに、そのまま江戸城に戻り、なに食わぬ顔で将軍の間にて鎮座した。



大奥でも、幕府がなくなることは誰の目にも明らかとなったため、逃げ出す者たちが続出。

最後まで戦って討ち死にせよという意見の者たちもいたが、もはや戦意喪失気味となっていた。

篤姫(あつひめ)は、逃げたい者は逃げてよいと主張していた。

和宮(かずのみや)は、ただ黙りこんでいた。




官軍側の代表者、西郷隆盛と、幕府側の代表者、勝海舟との交渉が始まった。


この交渉の行方が、江戸の町の、江戸の人々の運命を左右する。


もしも万が一この交渉が決裂でもしようものなら、たちまち戦となり、江戸の町はたちまち火の海となり、多くの罪もない江戸の人々が犠牲になる。


当然、戦になれば官軍側も幕府軍側も、無益な戦によって兵の戦死者を増やし、いらぬ犠牲を払うことになる。


だから、この交渉は、なんとしてでも成功させてくれ…。


公望(きんもち)も、他の者たちも、ただ祈るだけだった。


そして…。


この交渉の結果、江戸無血開城となった。

江戸城は、官軍側に明け渡されることに。


ここでは歴史改変は行わない。この結果が史実通りだからだ。


公望たちは江戸城から外に出てくる幕府側の者たちや、大奥の者たちを、出迎えることになった。

その中にはもちろん、篤姫や、和宮らの姿も。個人的には篤姫や和宮らを出迎えたかったようだ。

「篤姫様!姉様!」


「公望…!」


公望は城門の前で待ち、出迎えた後はつもる話で盛り上がる。


一方、慶喜はというと、まだ城中にとどまっていた。静まりかえった城中に1人…。


幕府がなくなってしまったので、老中も、若年寄も、みんなやめさせることになった。


いや老中や若年寄だけではない。大目付も、寺社奉行も、町奉行、勘定奉行、それから各藩の家老も、奉行も、そして代官も、みんなやめさせることになった。




一方、公望と篤姫と和宮のつもる話は、その慶喜の処遇の話になった。


「それで、慶喜様は、どのような処遇になるのでございましょう?」

「慶喜様は、蟄居(ちっきょ)、謹慎の処分になると、聞かされておりますぞ。」


公望は篤姫と話をした後、今度は和宮と顔を合わせる。

公望は和宮と顔を合わせるなり、


「姉様!あねさま!和宮様!」

「公望…。まさか公望が、直接頼み込んでまで、出迎えに来るなど…。」


そこに篤姫が、


「ふふっ、公望とやら。もしや和宮のことを好いておるのではございませぬか?」

「いえ…、いえいえ!めっそうもない!

何しろこの江戸無血開城は、有栖川宮様のこちらの書状のおかげで、実現したようなものなのですから。」


そう言うと公望は、和宮のかつての許嫁(いいなずけ)でもあった、有栖川宮熾仁親王から渡された書状を、和宮に見せた。


「まあ、なんと、有栖川宮様が、そのような書状を!?」

「さようでございまする。この有栖川宮熾仁親王様の書状があったからこそ、江戸は戦火に巻き込まれることなく、無血開城となり、そして篤姫様や、姉様たちを助け出すこともできたのでございます。」


話がさらに続く中で、既に江戸市中にも江戸城無血開城の報は伝えられる。


「江戸のお城が、無血開城になったって!?」

「これで幕府軍と新政府軍の戦も終わり、新しい世が訪れるのね。」

「だけどなあ…。あれだけ幕府を倒せば新しい世になると言ってたのに、いざ本当に幕府がなくなることになったら、寂しい気持ちにもなるな…。」


そう、寂しい気持ちにもなるよな…。


大名行列も、参勤交代も、なくなってしまう。


大名の江戸藩邸も、旗本屋敷も、直参旗本も、なくなる。


大名の江戸藩邸や旗本屋敷は取り壊され、新たに西洋風の建物が建てられるようになる。


これが、幕末という時代…。


「これで、明治の新政府っていうのは、この国をどんな国にしていくつもりなんだろうな…。」

「日本は西洋みたいな国になるってことか。

いや、もしかしたら、本当に日本は西洋になっちまうかも。」

「おいおい、冗談やめてくれよ。日本が西洋列強の植民地とか、領土とかになっちまうってことかよ。」


その噂話のさなか、突然、大砲の音が響く。


「なっ、なんだあ…!」

「上野の寛永寺の方角だ!」


上野彰義隊が、この無血開城による江戸城明け渡しに納得できずに蜂起したという。


新政府軍はすかさず対応した。その結果、戦いは1日で終わり、近代的な装備の新政府軍が勝利した。


「やっぱり、刀では大砲にはかなわないな…。」


その夜の軍議は、まさにその明け渡されたばかりの江戸城で、開かれた。

「本日の上野彰義隊の蜂起を見てもわかるとおり、各地にはまだ旧幕府に味方し、戦を続けようという者たちがいる。

したがって我らは、その者たちを討伐するべく、「奥羽越諸藩連合」との戦を始める。」



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