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うなされた悪夢、そして京の都に帰還する途中にあの事件が…!

その夜、西園寺公望、いや、西園寺公望に転生していた、元不良の高柳京介は、悪夢にうなされていた。


その悪夢の内容とは…。


戦争が始まり、日の丸のついた、空飛ぶ乗り物が、無数飛び交い、鉄の軍艦に向けて攻撃をする。

どうやら、パールハーバーというところらしい。

パールハーバーに停泊していたその鉄の軍艦は、日の丸のついた空飛ぶ乗り物の攻撃を受け、爆発し、炎に包まれる。


1つ目の場面はそこで終わり。次の場面は、西洋風の建物と、日本家屋が建ち並ぶ、とある町。そこには、日本風の城も、建っていた。

そこに、今度はアメリカの空飛ぶ鉄の乗り物が、飛んでくる。その鉄の乗り物は、一発の爆弾を落とす。

ところがその爆弾は、恐ろしい悪魔だった。

一瞬にしてすさまじい爆音、爆風、熱線が、町を飲み込み、その町にあった西洋風の建物も、日本風の城も、日本家屋の家並みも、全て、爆風と炎と熱線で、見るも無惨に破壊し尽くされてしまう。


そしてその後には、巨大なキノコ雲が立ち上っていた。

これが、2つ目の悪夢の場面。また場面が入れ替わる。

3つ目の場面は、自分がバイクに乗って、どこかの道路を走っている場面だった。

バイクは猛スピードで走る。そして電柱の前に。あわててハンドルをきったが間に合わず、そのまま電柱に激突。そのまま即死した。そこで悪夢は終わり、そこで目をさます。

この時だけではない。時折このような悪夢を見るのだ。

「はっ…!」

そして目を覚ますとまだ真夜中。再び眠りに入る。


翌朝…。


「おはよう、公望や。なにやら昨晩はうなされていたみたいですが…。」

和宮が心配そうに語る。

「実はですね…。」

公望はその悪夢のことを話した。

「そうですか。そのような悪夢を…。」


そして朝食を済ませる。今日の朝には、京の都に帰ることになっていた。

「さあ、公望や。京の都にお帰り。公望の帰りを待っておられる方もいるでしょう。

…公望や、そなたはずっと後の時代に、とても大きなことを成し遂げることでしょう…。」


和宮は最後にそう言い聞かせて、公望たちを見送った。

しかしどうも、西園寺公望の記憶と、高柳京介の記憶とが、ごっちゃになっているような感じだった。

高柳京介は元不良とはいえ高校生だったため、前世では一応は歴史を学習していた。

したがって、公望が幕末から昭和戦争開戦前夜の間の出来事やその結末をあらかた知っているのは、実は高柳京介が学校で歴史の授業を受けて学習してきた、その記憶によるものだということ。

そして、西園寺公望=平成の世から転生してきて西園寺公望として生きることになった高柳京介は、江戸を出発し、京の都に帰還することになった。


それから、公望たちの一行は、横浜から、生麦村というところを通りかかる。

すると、そこには大名行列が通りかかっていた。


「したにー、したに!」


この掛け声。いったいどこの大名だろうと、聞いてみた。

「この家紋は、薩摩藩主の島津久光(しまづ・ひさみつ)公の大名行列のようです。」


生麦村…。島津久光…。


といえば、あの事件が起こるまさにその瞬間なのか…。

そこに、案の定、馬に乗ったイギリス人4人ほどが通りかかる。

この「生麦事件(なまむぎじけん)」の結末を知っているのは、現時点では公望1人だけだ。

その時、島津久光が、配下の侍たちを呼びつける。そしてその侍たちだけに聞こえるように、ひそかに耳打ちをする。

次の瞬間、侍たちは刀を抜き、イギリス人たちに斬りかかった。


「大名行列の前を横切るとは、無礼な!」


ズバッ!ザシュッ!


「うわあああーっ!」


最初に斬られたイギリス人は落馬しそのまま死亡。

他のイギリス人たちも、久光配下の侍たちに斬られ、結果2名死亡、残る2名も負傷したという、これが世に言う、「生麦事件(なまむぎじけん)」という、日本の侍がイギリス人に刀で斬りつけたという事件の顛末(てんまつ)

公望たちは、はからずもこの生麦事件の目撃者となったのだった。

「なんたることだ…。刀でイギリス人を斬るとは…。

これは間違いなく国際問題に発展するぞ…。

これでは、日本は非開国、野蛮国だと思われても仕方がない…。」


そして公望はその後の結果ももちろん頭の中に入っていた。

その後、薩摩(さつま)藩とイギリスが、薩英戦争(さつえいせんそう)を行い、薩摩(さつま)はイギリスのわずか4隻の軍艦の前に大敗し、あらためて列強の軍事力の強さを思い知ることになるのだという。

その後、島津久光の行列は、公望たちの存在に気づくことはなく、気がついた時にはその場を立ち去っていたという。

そして先ほど斬られて死傷したイギリス人たちも、別のイギリス人たちに助けられ、気がついたらそこには公望たち以外は誰もいなくなっていた…。


何やらキツネにでもつままれたような気分になっていた。

しかしここで立ち止まっていても、何の解決にもならないので、京の都への帰路を急ぐことにした。


そして、久々に京の都に帰還した公望たちだった。

「あー!やっぱりこの、京の都が一番よい!」

そして公望の同年代の女子たちからも、ようやく公望たちが帰ってきたということで、歓迎を受けた。

「お帰りなさいませ!公望様!」

高柳京介の時にはこんなことはなかった。西園寺公望に転生してきて、初めてよかったかもしれないと思った瞬間だった。

さてと、長い旅路でもう疲れたな…。今日はひとまず、ゆっくり休むとするか…、と、公望は思っていた。



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