表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/55

第10話 天誅と称して要人襲撃、暗殺を図る者たち(2)

公望(きんもち)は公家とは思えない、まるで武士のような剣さばきを見せた。


カキン!キン!ヒュッ!シュッ!バシッ!ザシッ!ドガッッ!


公望(きんもち)は、みねうちで次々と天誅組の連中を倒していき、なんとか5~6人を倒し、残りはあと1人となった。

「でやあっ!」

天誅組のその1人は刀を振るうが、次の瞬間、公望(きんもち)は拳銃を取り出し、


ダーン!


「ぐああっ…!」


公望(きんもち)の撃った銃弾は敵の持ち手に命中。敵は刀を取り落とした。

「ぐっ…!引けーっ!」

天誅組の浪士たちはそのままいずこかへと逃げ去っていった。


そしてあたりは再び真っ暗闇となる。かろうじて、月の明かりと、星の明かりが、照らしてくれている。そういえば、星が見えるんだな…。

公望(きんもち)は刀を(さや)におさめ、自らの屋敷へと帰る。


それにしても、あの天誅組の浪士たち、いったいどこの家中の者なのか…。


再び情報屋を呼び、調べてみることにした。すると、情報屋はこう言った。この情報屋はやはり、情報屋というだけあって、ありとあらゆる分野の情報に精通しているようだ。

「どうやら、京の都には今まさに、攘夷論を唱える各藩の藩士たちが、こぞって集まっている由にございます。」

幕府が開国を決めたことから、それに対する反発があり、外国人を打ち払うべし、という考えを持つ者たちが増えたということ。

そもそも「尊皇攘夷」という考えは、天皇を尊び、外国人を打ち払え、外国人を追い出して、自分たちの国であるこの日本を守れ、という意味だったが、

その本来の意味を履き違え、自分たちの意に反する者は誰かれ構わず殺してしまえ、ということで、天誅と称して、要人襲撃、暗殺といった行為に走る者たちもいるのだとか。

「ふん。そのような者たちなら、相手にとって不足はない、いつでも相手になってやる。」

公望(きんもち)はどや顔でそう言ったが、

「いけません!いくらなんでも、あなたさまは、かりにも西園寺家の跡取りでしょう。」

西園寺家の従者がそう言って制止した。そりゃそうだ。

何しろ、公望(きんもち)は後に「桂園時代」と呼ばれる一時代を築き、

そして何より、元祖、昭和の妖怪、昭和の最後の元老として、背後から政治を動かすような存在になるのだから、こんなところで攘夷論を振りかざすような浪士たちと斬り合って、万が一命を落とすようなことがあったら、それこそ歴史の流れが変わってしまう。

ただし、「昭和戦争」のあの敗戦の時代は、日本史の中でも屈辱の歴史と見る動きもあるようなので、背後から動かしていく中で、どのようにコントロールしていこうかと…。

しかし、実際にそれを考えるのは、ずっと後の時代のこと。

「すまん、すまん。できれば勤王の浪士たちとは極力はちあわせないように、気をつけるよ。」

西園寺は若い時は直接倒幕運動に関わることは少なかったが、ただ戊辰戦争に入ると、新政府軍の各方面軍に参加し、手柄をたてている。

その功績で、明治新政府の参与の1人に大抜擢され、そこから次第に頭角を現していくことになるのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ