第9話 天誅と称して要人襲撃、暗殺を図る者たち(1)
文久遣欧使節がヨーロッパに派遣されていたこの頃。
京の都では、攘夷派による、天誅と称した暗殺や放火などが相次ぎ、その中でも過激思想を掲げる、「天誅組」なる者たちが、尊皇攘夷に反する考えの者たちなどを狙って、襲撃、暗殺といったことを繰り返していた。
西園寺公望も、このこととは無縁ではいられなくなってきた。そんな中、薩摩、長州、土佐、肥前といった雄藩の台頭も、伝わっていた。
そんな中、情報屋のとある者が、公望のもとを訪ねていた。
「公望。外を出歩く時は気をつけろ。
最近、都では天誅と称して、井伊大老に味方した者たちや、尊皇攘夷の思想に反する者たちなどが、次々と襲われ、殺害され、さらし首にされているという。」
さらに情報屋は雄藩の動向についても伝える。
薩摩藩は西郷吉之助と、
大久保一蔵が中心となっていると聞いた。
西郷吉之助は西郷隆盛、大久保一蔵は大久保利通のこと。
一方の長州藩は、桂小五郎が中心となっていた。この桂小五郎は後の木戸孝允のこと。
武士の時代はよく名字や名前を変えていたのだった。それがなんと幕末のこの頃の時代まで続いていたのだった。
「とにかく今は、幕府に、朝廷に、雄藩に、それから、尊皇攘夷派、開国派…。
いったい、誰と誰が、何のために戦っているのかが、さっぱりわからん。
そのことが情勢を複雑怪奇なものにしているのだ。
誰でもいいから、何とかしてくれと、いいたいよ。」
しかし当の公望は、その天誅組に興味津々だった。
「一度その天誅組とやらに、会ってみたくなった。」
「それはいかん!お主まで殺されるぞ!」
「いや、それがしは剣術の腕も、拳銃の腕も確かだ。絶対の自信がある。
それに、どのみちそのような連中を、放ってはおけないからな。」
公望はなぜかその天誅組と、刀を交えて戦ってみたくなった。
あるいは、恐いもの見たさというやつか。
やがて日も暮れ、夜になると明かりもなく真っ暗闇。たまに行灯の明かりがあるくらいで、人通りもほとんどない。
公望は暗闇を照らす魔法を使って、あたりを照らしながら、1人歩いていた。そしてあたりの様子をうかがっていた。
すると、そこに暗闇の中から怪しげな頭巾をかぶった浪士らしき一団が現れる。
どうやらこいつらが、天誅組という奴らなのか…。
「西園寺公望だな。覚悟しろ。」
どうやらこいつら、こっちのことを知っているらしい。そして刀をぬき、斬りかかってきた。
キン!カキン!
公望は天誅組と刀を交える。そしてその華麗な剣さばきを披露するのだった。




