〈08〉
「かははははははははははは!!!!」
「ぎゃはははははははははは!!!!」
瞳を輝かせながら、自慢の拳で殴り合う二人。
うわー……ホントに俺要らねえじゃん。
つーか入る余地がねえ。なんで殴った箇所から爆発音みたいな音が出るんだよ。俺が殴られたら多分、その箇所が消し飛ぶよね?
でも途中で帰るのはなあ……アイツの正体も気になるし……あ、そうだ。
暇なので、光線ソードでバッティングフォームを鍛えよう。これなら筋肉痛にならないし。
来週、学校で野球のテストがあるのよね。
俺は足を少し広げて、光線ソードを構える。
そして腰から上を捻るようにして、光線ソードを思いきり振る。
光線ソードはぶおん、という音を出しながら中々綺麗な弧を描いた。
「……もっと手首を使ったほうが良いか?」
自問しながら、俺は再びバッティングフォームを構える。
「おい!ちょっと代われ!」
すると突然、背中を何者かに押された。
声とセリフからして、芍薬だろう。
「うおっ……!」
突然の事だったので、前のめりにつまづく。
「……っと。おい芍薬、何しやが──」
体勢を立て直しつつ、俺を押した張本人に注意をしようとした瞬間──
あたりが暗闇に包まれる。
──が、それは一瞬の内に元の光景に戻る。
「……ふぅ。俺じゃなきゃ死んでたぞ。芍薬」
一瞬の暗転。
その理由は、宇宙人による光弾で俺の頭部が吹き飛ばされたからだ。
頭部が無ければ、何も見えない。
実に単純な理屈である。
「死なねーから一緒に戦ってんだろ?」
意識が無くなると、俺の体は自動的に再生する。
だから頭部が無くなっても、俺は復活できるのだ。
このオート再生のせいで、頭部が無くなった時に死んだふりが出来ないのがたまにキズだ。
「え?俺ってまだ参加してんの?つーか俺要らなくない?」
「あ?いるに決まってんだろ」
「マジか。で?俺は何すれば良いの?」
必要とされるなら、俺は全力でそれに応えよう。
レディの頼みは断れないぜ。
「LINE来たから、ちょっと時間稼いでて」
芍薬はそう言って、近くの家の屋根までジャンプした。
……は?
「信じられねえ!!」
心の叫びを芍薬へ実際に出して、俺は正面を向く。
すると数歩ほど先に、ギザギザな歯をむき出しにして笑っている宇宙人が立っていた。
「…………よお、元気?」
何故か無反応。
俺は挫けずに話しかける。
「なあ、お前も休憩したらど──」
休憩したらどうよ?
そう言い切る前に、俺の頭部はサヨナラした。
「休憩?そんな勿体無いこと出来ねえな!!」
宇宙人は瞬間移動したかのようなスピードで俺のすぐそばまで接近し、腕のブレードで俺を切りつけようとする。
「さいですか!!」
俺はその行動を読んでいたので、目の前で光線ソードを回してそれを防御。
超近距離を仕掛けたがる、というアイツの性格はすでにわかっている。
「意外と良いセンスしてるじゃねえか人間!!」
「そりゃ何回かこういう経験をしたことがあるからな!!」
俺は宇宙人と距離を取る。
近距離でアイツに勝つのはまず無理だ。
「そうか……じゃあこれはどうだ!!」
宇宙人から出された光の球が俺に迫る。
──それも想定内だ。
「二度は喰らわねえよ」
俺は光線ソードを持って、バッティングフォームを構える。
「ピッチャー返しだ!!」
そして光線ソードを使って、光弾を宇宙人にむけて弾く。
「────!」
それが予想外だったらしく、宇宙人は自分の攻撃をモロに食らう。
──俺の攻撃が効かないのなら、相手の攻撃を当てれば良い。
これ、戦闘の基本ネ。
「来いよ宇宙人、今度はホームランしてやるぜ!」
なんて出来るかどうかわからない事を言って、宇宙人を挑発する。
さて、これで光弾を連発してくれたら良いんだが……。
「ぎゃははは!!やっぱ面白いなお前!!」
宇宙人はそう笑いながら言って、俺のそばまで瞬間移動する。
ああ、クソ!!
「じゃあ次は、ブレード攻撃を何とかしてみろよ人間!」
「……ああ、やってやるぜ!」
そんなハッタリをかまして、俺は再び宇宙人とチャンバラを始めた。