〈07〉
「ぎゃははは!新しい人間だ!ぎゃはは!お前も普通の人間とは違うのか?」
宇宙人が芍薬に訊く。
「ああ、ちょっと違うな」
芍薬は笑顔で答える。
「具体的には、このくらい違う」
芍薬はそう言って、宇宙人の近くにまでゆっくり近付く。
そして──
「しゃらあ!!」
宇宙人の顔面を殴る。
宇宙人はクルクル回りながら、二十メートルほど吹き飛ぶ。
「な?ちょっと違うだろ?」
「ちょっとってレベルじゃねーぞ!」
お前のちょっとはおかしい。
「かはは!おーい宇宙人。大丈夫だよなー?いきなり殴ったお詫びに、お前も一発殴っていいぜー!」
芍薬がニコニコしながらそう言った瞬間──
彼女も二十メートルほど吹き飛ばされる。
「…………」
さっきまで芍薬が居た場所には、握り拳を作っている宇宙人が取って代わっている。
凄く良い笑顔で。
「かははは!お前、中々良いパンチするじゃねえか!」
殴られた感想を言いながら、芍薬はうつ伏せの姿勢から、手足を一切使わずにバク転をして立ち上がる。
……どうやってんの?
「おーい、芍薬。大丈夫か?」
見た感じピンピンしているが、やせ我慢をしてる可能性があるので一応無事かどうか訊く。
「んー?大丈夫も何もノーダメージだぜ?」
「そうか」
二十メートルくらい吹き飛ぶ程のパンチをくらってもノーダメかよ。
俺は芍薬が本当に人間かどうか疑問に思いながら、彼女のそばに行く。
「…………なあ、人間ども」
宇宙人は、俺が芍薬のそばに行くのを待っていたかのようなタイミングで口を開いた。
「お前ら、最高だな!!」
宇宙人は目を見開かせながら、心底楽しそうに言う。
「私は今、メチャクチャ楽しいぞ!!周りから聞いた地球人の情報と全然違う!!ぎゃはははは!!」
何が可笑しいのかよくわからないが、宇宙人は笑い続ける。
「まさか私と互角に戦える奴が居るとは!!私の想像以上に地球は面白い!!ぎゃははははは!!来て正解だったぜ!!」
「そうか、そりゃ良かったな……なあ、宇宙人」
芍薬は宇宙人に話しかける。
──俺の後頭部を鷲掴みしながら。
「ん?なんだ人間?」
「地球に来た記念に、プレゼントをやるよ」
芍薬がそう言った直後、俺は重力から解放される。
「あ」
要するに、俺は芍薬にぶん投げられたのだ。
「馬鹿じゃねえのしゃくや──ぶへぇ!?」
どうやら気に召さなかったらしく、俺は宇宙人に顔面を弾かれてコンクリート塀へ叩きつけられる。
クソ痛え……あ、鼻折れてる。
「おいおいおい、人の好意を無下にするなよ」
なんて芍薬はのたまう。
おいおいおい、人を無下にするなよ。
「ぎゃははは!地球人のプレゼントがナンセンス過ぎて、つい叩きつけちまったんだよ」
「ナンセンスで悪かったな」
俺は骨折箇所を再生しつつ、突っ込みを入れる。
「かはははは!……さあ、私は早くアンタとバトりてえんだ。話し合いなら後でゆっくりしようぜ?」
「そうだな……じゃあ早速戦おうぜ、地球人!」
そう言って、二人は一瞬で肉薄する。
「あれ……?俺、要らなくない?」