〈01〉
ぷしゅう、という音を立てて電車の扉が開き、俺はいつも通りに駅へ降りる。
そして朝特有の、憂鬱な気分と愉快な気分が入り混じった、何とも言い難い気分を味わいながら俺は改札口へと歩く。
あー……また一日が始まりやがりましたよ。
俺はよくいるラノベ主人公のように、日々に対して退屈してはいない。
むしろ最高に楽しんでいる。
芍薬牡丹や天馬千兵衛みたいな、超を幾ら付けても足りない変人達と仲良くしているからな。
アイツらと一緒に居ると、毎日が充実するよ。
定期的に頭部が吹き飛ぶけど。
……まあ、そんな訳で日々をエンジョイしているんだが、俺の青春には一つ足りない物がある。
────それは、恋だ。
思春期の男子と女子が、時に甘くて時に切ない気持ちになりながら、お互いの心を近づける……みたいなさ!
甘酸っぱい思い出の日々が無いんだよ!
……え?芍薬?
…………あの………………彼女はちょっと……こう……戦闘民族すぎて…………恋という概念を知らないんですよ……はい…………。
まあそれは置いといて、とにかく俺はラブコメがしたいのだ。
だが悲しいかな、何故だか俺は女っ気が無く、芍薬以外の女の子との交流をあまり深められていない。
強いて言えば、芍薬の妹さんと千兵衛のメカ少女達ぐらい。
あ、宇治原はノーカンです。
……おかしいな。
中学生の時は女の子とそれなりに会話してたんだけどなあ……どんな娘と会話したかは忘れたが。
「寂しい高校生活だ……」
俺は悲しみを吐いた息に乗せるように呟きながら、学校からの最寄駅である誤差夢駅から出て、学校へと向かう。
……さて、誤差夢について説明をしよう。
誤差夢は海沿いにある町で、大きな港による貿易が盛んだ。
なので海外の文化がかなり浸透しており、建物もレンガ造りが多いし、美味い洋食の料理店が沢山ある。
栄えているのは駅と港周辺のみで、そこら以外の地域はアパート街が多い。
そしてちょうど駅と港の間に、俺が通っている魔辺流高校がある。
……そこ、DCなのに魔辺流?とか言わない!
学生は大体、色んな店がある駅か港の周辺で買い食いをしたり、寄り道をする。
名物はコウモリクッキー。何故コウモリなのかは知らん。
以上が誤差夢の説明。
……今はそんな事より、俺の高校生活についてだ。
これだけは千兵衛の助けを借りられんな。
もし頼ったとしても、『ふむ。俺には紹介できるような女性が居ないので、お前の心を満たせるような美少女ロボをつくろう』とか言いそうだし。
芍薬は……女の子とか紹介してくれそうだが……ほら?類は友を呼ぶっていうじゃん?
宇治原は……うーん……会う度に正気度を下げてくる娘を紹介されてもな……。
クラスメートに紹介してくれそうな奴は…………居ないか。
……あれ?チェックメイトじゃん。
どうやら俺は、普通で生身な女の子とメモリあえない運命にあるらしい。
「……あれ?」
いつの間に欠伸をしていたらしく、俺の頬には涙が伝っていた。
俺は指で涙をぬぐい、しっかりと集中前方へして、具体的には自分の高校生活など考えられないくらい集中して、力強く歩く。
すると、後方から──
「ねえサスケ君!結婚しよ!」
──突然、プロポーズされた。