〈15〉
現在、午後十二時半。
教室の窓から差し込む日の温もりを全身で感じつつ、俺は親指と人差し指を使ってページをめくる。
………………ほう………………ふむ………………。
…………うん。
この娘の脇から胸にかけてのライン、最高だな!!
何度見ても決して飽きさせない美しさがある。
素晴らし過ぎて、見る度に銀河を感じるね。
「……ふぅ」
俺は感動の溜め息を吐いて、本を閉じた。
────やはり、最高だな。
『もぎたてフレッシュ!ピチピチガール』は!!
……さて、ちょうど読み終わった所なので、宇治原との決着後に俺達は何をどうしたのか説明しよう。
宇治原の敗北宣言の後、俺は宇治原に対して幾つか質問をした。
お前の詳細は?何故地球人を攫うのか?俺達地球人に害をなすつもりがあるのか?
それらの全てに、宇治原は答えた。
なんでもアイツは、銀河の果てにあるスミ星って惑星の住民らしい。
スミ星は地球より遥かに科学技術が進歩してて、俺達が電車で出掛けるのと同じようなノリで宇宙旅行が出来るんだと。
そんな惑星に住んでいる宇治原は、宇宙をテキトーに旅行していた時に、ある面白そうな惑星を見つけた。
地球である。
大気に毒もなく、環境がスミ星と非常に似ているので宇治原はそのまま地球へ突入する。
この時に、宇治原は重大なミスをした。
普通、スミ星の住民は違う惑星へと突入する際に、自立型の機械を地球へ飛ばし、機械に文化や言語を理解させてから突入する。
そしてその機械を翻訳機兼ナビゲーターとして利用し、ある程度の交流が出来るような状態で、惑星を旅するのだ。
が、なんとこのアホ宇宙人は、その機械を家に忘れたらしく、何も準備をせずに突入したのである。
そんなこんなで地球へと降り立ったバカ宇宙人は、地球の知識を得るためにある行動に出た。
スミ星人は俺たちと違い、生命体を一時的に自分の体内に取り込むことによって、少しづつだが、その生命体が持っている情報や知識を手に入れられる。
だから、誘拐を開始した。
そして徐々に、地球を知ろうと試みた。
……と、まあ要するにだ。
宇治原は忘れ物を取りに帰るのが面倒臭いので、地球人を誘拐したわけだ。
なんと傍迷惑な宇宙人であろうか。
俺は先程とは違う溜め息を吐き、なんとなく携帯を取り出した。
「……む、メッセージが一件」
メッセージを受信していたので、その内容の確認をする。
えっと……『カラオケなう。サスケ、今日は一日中サボるって伝えてくれたよな?』か。
携帯の画面を下の方へスライドさせると、メッセージの下に写真が貼られていた。
明るい室内で、紅髪の女性と黒髪の女性が笑顔で肩を組んでいる写真だ。
差出人の欄には、芍薬牡丹という文字。
俺は『ああ、ちゃんと伝えておいた』と返信して、前の席の人物に声をかける。
「なあ千兵衛」
「ふむ、どうしたサスケ」
「なあ、この写真を見てくれよ」
俺は芍薬から送られた写真を、千兵衛に見せる。
「ふむ。これは芍薬と……誰だ?ウチの制服を来ているようだが……」
「中々可愛い顔してるだろ?」
「ふむ、そうだな。顔のバランスが整っている」
「だろ?」
「ああ……で、彼女は誰なんだ?サスケは知ってるのか?」
「ああ。よく知っている……彼女は宇治原宙。芍薬から地球について学んでいる宇宙人だ」
「…………は?」