〈14〉
「……らあっ!!」
芍薬は掛け声と共に、防御に使っていた腕を大きく広げる。
「──っ」
それが予想外だったのか、宇治原は芍薬の腕をモロにくらい、大きく弾き飛ばされる。
宇治原はよほど疲弊しているらしく、受け身を取らずに地面へと落ちた。
「……はあ…………はあ……ああああああああああ!!!!」
自分を鼓舞するために、叫びながら芍薬は走る。
死に物狂いで走る。
相手を、倒すために。
「…………っ」
そして宇治原が、片膝をついた体勢で視界を下から前へ変えた時──
「らああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「────っ!!」
芍薬に殴られる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「────っ!!」
二度も殴られる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「────っ!!」
また殴られる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「────っ!!」
再び殴られる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「────っ!!」
もう一度殴られる。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「────っ!!」
さらに殴られる。
……殴り過ぎでは?
「…………これで」
俺の想いが通じたのか、芍薬は殴るのを辞める。
そして宇治原の元へ、倒れるが如くさらに接近する。
お互いが、相手を殴れない距離まで。
……お前、一体何を?
「終わりだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ごちん、と。
芍薬は叫びながら、宇治原の頭へ自分の頭を思いきりぶつけた。
成る程。殴り倒すんじゃなくて、そういうパターンね?
想像の三倍くらい男らしかったわ。
「あ、ああ…………」
銀色の宇宙人は頭突きの衝撃を十分に吸収して、呻き声のような声をあげる。
そのまま宇治原は、しばらく倒れたままだと伝えるように、どさりと倒れた。
──さて、良いところでアレだが、話をさせてもらおうか。
「……勝敗は、着いたかい?」
俺は、わざと間抜けな質問をする。
この戦いを、終わらせるために。
「……ああ、私、負けたわ」
──宇治原は、ぽつりとそう呟いた。