〈13〉
「おっっっもしれええええええええええええええええええええええ!!!!」
「ぎゃはははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
もう、俺では説明出来ない。
気づいたら相手を殴ってて、気づいたら相手を蹴ってて、気づいたら相手に殴られてて、気づいたら相手に蹴られてて、気づいたら相手を傷つけてて、気づいたら傷ついてる。
二人の次元に、ついて行けない。
この場に居る唯一の第三者として、この戦いを正確に観察する必要があるのはわかっているが、今回ばかりは許してくれ。
携帯にスーパースローで撮影出来るアプリをインストールして撮影したが、それでもわからなかったんだ。
もう、無理っす。
「ぎゃははははははははははははははははははははぐっ──!?」
「っしゃああああああああああああああああああがっ──!?」
まあ、相打ちになった時に二人の動きが少し止まるので、断片的な情報なら語れる。
二人ともあちこちに青あざを作っている、ぐらいの情報だが。
あざの量は、どちらかというと宇治原の方が多いか?
宇治原と違って芍薬は服を着ているから、少なく見えるってだけかもしれないが。
……たった今気が付いたんだが、芍薬、制服じゃん。
アイツが制服だったから、宇治原が制服を着ていたことに疑問を持たなかったんだな。
仮にも女の子なんだからさ、面倒臭がらずに着替えろよ。
ていうか制服が台無しになったら明日どうすんだよ。
アレか?よく学校帰りにバトって制服がボロボロになるから、何着も制服を持っているのか?
……そういえば学校で、芍薬が千兵衛に制服云々の話をしてる現場を見た気がする。
たしか、広辞苑(俺の。高かった)をチョップで両断しながら『こんな感じにすぐ破けちまうからよー。頑丈な制服を何着か作ってくれよー』って千兵衛にお願いしてた。
……ドンマイ、千兵衛。
「ああああああああああーーーーッ!!!!!」
「───────っああ!!!!!」
──俺と交代してから、かれこれ一時間以上経っただろうか。
二人の動きが認識出来るようになった。
さて、状況を説明しよう。
「────ッ!!」
「……っ…………うっ……!」
芍薬はそこらじゅうに青アザを作っており、口元に赤い液体を流している。
宇治原も至る所が黒く変色しており、顔から笑顔が消えている。
互いに疲弊しているのは同じだ。
しかし、二人の状況には僅かな違いがある。
「…………ク……ソ……ッ!!」
銀色の四肢が、紅髮の反撃を許さない。
──つまり、芍薬が圧されているのだ。
やはり、宇宙人には勝てないか?
足手まといになるかもしれないが、ここは俺と二人で戦った方が良いか?
そう思い、俺は口を開く。
「おーい、助太刀す──」
「大丈夫!!今から限界越えるから!!」
彼女は、俺の言葉を遮るようにして言った。
自信たっぷりに。
……そうか。
「なら、大丈夫だな」
俺は、彼女を信用しよう。
だって、アイツは何度も俺にそう言い、勝ってきたのだから。