〈11〉
二人は自慢の一撃を、何度も何度もぶつけ合う。
バスン、ドスン、ドカン、と音が響く。
いや、ドカンって何だよ。
「……っ!」
二人は互角かと思ったが、どうやら違うらしい。
宇宙人──宇治原には、ブレードが付いている。
それが二人に差を生み出しているのだ。
宇治原は芍薬の攻撃部分のみを躱せば良いが、芍薬はブレードを余計に躱さなくてはならない。
「くそっ……邪魔くせえな……!」
「ぎゃ、は!」
宇治原が繰り出した右ストレートを、芍薬は体を反らして躱す。
マトリックスかよ。
「……!」
芍薬の判断は失敗だった。
宇治原はブレードで芍薬を斬ろうと、右腕を振り下ろす。
芍薬は体を反らしているので、急な移動が出来ない。
流石の芍薬でも、アレで斬られたらひとたまりもないだろう。
「だから……うぜえんだよソレ!」
芍薬はそう言って、上半身を右に捻じってパンチを繰り出し──
「っラア!!」
──宇治原のブレードを、叩き割った。
「……は?」
叩き割った?
素手で?
光線ソードでも斬れなかった物を?
「もう一回!」
芍薬は左手でパンチを繰り出す。
パンチは猛スピードで宇治原の左腕に向かい、左側のブレードを破壊した。
……はああああ!?
何なの!?何なのアイツ!?
どっちが宇宙人なの!?
「…………ッ!」
宇治原も流石に驚いたらしく、三歩ほど下がる。
「しゃらあ!!」
しかし芍薬は反った体を戻す勢いを利用し、一気に宇治原との距離を詰める。
そして少しだけジャンプして──
「芍薬式格闘術其の四!!トラック落とし!!」
宇治原の頭部に、踵を打ち付けた。
宇治原の頭部は一瞬で地面にめり込む。
──説明しよう、トラック落としとは、普通の踵落としである。
なんでトラック落としって名前かというと、実は俺も知らんのだ。
多分、踵落としでトラックをスクラップにしたんじゃね?
「かはは!どうだソラ、私の力を見くびらないほうが良いぜ?」
腰に手を当てて、宇治原に話しかける。
「ちなみに、私の格闘術は百八式まであるぜ」
「波動球かよ」
俺はすかさずつっこむ。
「かはは!冗談だよ。実際は一京二千八百五十八兆五百十九億六千七百六十三万三千八百六十七式まである」
「安心院さんもビックリじゃねえか」
「かはははは!流石にそこまで多かねえよ」
芍薬はそういって、笑いながら宇治原の後頭部をグリグリ踏む。
容赦ねえな。
「オラオラ、さっさと立たんか──」
言い切る前に、芍薬の体が横に吹き飛んだ。
吹き飛んだ衝撃を自分だけで受け止めきれなかったらしく、芍薬は塀を破壊して止まった。
あ、壊しちゃった。
「……っう」
視線をさっきの道路に戻すと、宇治原は痛そうな表情をしつつ、頭をさすりながら立ち上がっていた。
「今のは中々きいたぜ、牡丹」
宇治原は首をゴキゴキと鳴らしながら、トラック落としをくらった感想を述べる。
「そうか、そりゃ良かった」
そう言いながら、ポンポンと肩を払う芍薬。
「今ので中々なら、お前を本気で殴っても大丈夫ってことだろ?」
芍薬はそう言って、ニカリと笑った。
……え?貴方まだ本気じゃなかったの?