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発条少年
第二章【発条少年】
初めて女性の肌に触れた時、僕は思わず嘔吐した。
汚らわしくて、悍ましくて
何をされているのかもわからないまま
腹の上で跳ねるその人に何度もやめてくれとせがんだ。
けれど、その晩数ヶ月ぶりに朝になるまで眠れた僕は
一週間と経たずに彼女を頼った。
その人は色んなことを教えてくれた。
男の身体の使い方も女性の悦ばせ方も
触れるだけのキスから、獣じみたセックスまで
指先の這わせ方の逐一も、果ては耳元へ囁く言葉すら
そうして全てを叩き込み
彼女は突然、姿を消した。
ただ、眠りたいだけだった。
起きていると思考が休まらないから
何も考えなくていい夢の中に入りたかった。
その近道、人肌の温かさなど知らなければよかった。
知らずにいればこれからも
くるまる毛布ひとつで長い夜を耐えられたのに。
触れる体温
それ以外の何も感じられないまま
僕はひたすらさもしい夜を繰り返し
虚しさと絶望ばかりを募らせている。