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開花少女
第七章【開花少女】
生まれて初めて、キスをした。
狭く薄暗い部屋で隠れるように、口と口を重ね合わせた。
彼は美女の装いで
ロングヘアーにマスカラの睫毛
偽物の胸をつけたメイド服。
余韻に浸る間もなく、移った口紅を必死で拭ったファーストキス。
想像していたほどロマンティックではなかったけれど
ままならない私たちらしいと彼が笑えば
私はただ幸せだった。
そのキスは恋の中にあった。
ドアの隙間に見た姉の物とは違う。
私は、大好きな人とキスをした。
はじめての日に、三度も。
だけど、あれから一度も、彼は私にキスしない。




