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初恋少女
第一章【初恋少女】
私は子供でいたかった。
いつかドアの隙間から見た姉の顔が目に焼き付いて。
込み上げた嫌悪感が消えなくて。
だって私は知らなかった。
私が好きな小説の中に、そんな醜悪は書かれていない。
綺麗じゃない恋なんていらない。
見つめ合って胸がときめくような。
指先が触れて心が叫び出すような。
そんな、恋じゃなきゃしたくない。
彼はあまりに綺麗だった。
綺麗で、透明で、完璧だった。
だからきっと私は生まれて初めての恋をした。
そのキレイは誰より正しく理想のそれで。
あのドアの隙間なんかに、負けたりしないと思った。