表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

クリスマス・イズ・デッド/サンタクロース・ネヴァー・ダイ

作者: きー子

 聖夜は笑顔に満ちている。一家の暖かな談笑、仲睦まじく道行く恋人、酒気交りに闊歩する若者達。白雪と星々に彩られた空は理想的な天体制御の賜物。街角に並び立つ通信塔(バベル)は全国規模の仮想現実網(Virtual Reality Network)を形成する科学的叡智の結晶だが、今や商業主義にまみれたクリスマスツリーもかくや。いたって悪趣なもみの木は、平時からして"幸せになれるおくすり(クリスマスプレゼント)"をばら撒くことに余念がない。御仕着せのような幸福が溢れ、その影に弱者の嘆きは押し隠される。かくあるべき世界には、賑やかな笑い声が満ちているはずなのだから。かくあるべしと、彼らはにこやかに謳いあげる────メリー・クリスマス。

 だから少女は、中指を立てた。革靴の踵を鳴らし、何をはばかることもなく歩道を闊歩。あらゆる店舗はタグ付け(オーグメント)評価(レビュー)から逃れ得ず、無数に浮遊(ポップ)する多重矩形窓(レイヤー・ウィンドウ)が街並みを無作法に彩ってみせる。人の多くが組をつくる中、学生服(アメスク)姿で一人身の彼女をいぶかしむ目もあったが構いやしない。

 あるいは一人でなくとも少女の姿は人目を惹きつけただろう。ひどく冷え込む冬の時分に、臍もむき出しな丈の短いシャツを一枚。滑らかなまでの脚をさらけ出すスカートはやはり短く、膝上というよりは腰の下とでもいうべき丈。それでいて、色彩はやけに目立った白桃のチェック。扇情的とすらいっていい恰好を、ほんの十四、五にも満たないような幼い少女が見せつけている。鮮やかな金髪のショートは断じて染髪などではない自然さで、顔立ちも幼さを残した愛らしいもの。

 売女もかくやの衣装でありながらぱっちりとした碧眼はどこへともなく投げやりに。衆人を寄せ付けぬ華美な花めいた雰囲気に、不思議と似合った黒いコートを一枚羽織る。それはちいさな指の先をほとんど隠し、ふんわりと膨らんだ袖はまるで咲き誇る黒百合のよう。美しく着飾りながらも拡張現実(Augmented Reality)の産物をなにひとつまとっていないのは一種の異相と評されるもの。

 瞳を愛らしく飾る眉が、ちいさく歪む。人目には気取られぬほどのしかめっ面。視線を気にしたのではない。攻性プログラムの送信(ポスト)を感覚していたのだ。

 通信塔から定期的にポストされるそれは電子ドラッグ"幸福剤(ハッピー・アンプル)。年がら年中絶えずして送信される潜伏型のワームだが、この時期に限っては別だ。それらの潜伏期間は一月から十月にかけてであり、十一月から年の瀬にかけては急激に活性化する。電脳化身体接続────電脳化(ワイアード)された脳の一部にワームは巣食い、活発化するにあたって麻薬同然に莫大な幸福感を与えることで肉体的な欲望を強化し、人の消費行動を強固に植え付ける。

 少女──宮坂レヴィは、その支配下にない数少ない人間だった。通常、頭の中に電子端末を組み入れた──つまり大半の──電脳化人体(ワイアードヒューマン)は、とうの昔に頭の中を(ファック)されているだろう。

 耳たぶに着装されたちいさく白い兎耳のようなそれ、侵入対抗電子機器(Intrusion Countermeasure Electoronics)──通称"(アイス)"は脳内電脳網に対する違法な接続をことごとく遮断する。だがそれも通信塔の主──巨大複合企業体〈統和〉の接続(アクセス)には全く意味をなさない。彼らの干渉は違法アクセスでなく、強権をもって振るわれる合法的な接続であるからだ。レヴィはそれを知りながらも表情一つ変えず、少女の脳内電脳網ローカル・エリア・ネットワークに接続を試みる通信塔のポストを遮断しながら逆探知。伸ばされた接続(アクセス)の糸を逆手に取り、通信塔の記憶野を瞬間的な境界相当情報量(クズデータのやま)で圧し潰す。過負荷によって熱暴走を引き起こし破壊する原始的なやり口だが、セキュリティを抜けやすいという意味では効果的だった。管理権限を奪取して実行させる手間暇もない。

 空の彼方で通信塔のてっぺんがぼっとちいさな火花を上げるも、それに誰もが気づかない。世界は祝祭の歌に満ちている。徹底的に洗練された商業主義と性産業にまみれたそれは、祝祭だ。違いない。一晩いくらかと話しかけるスーツの中年に、ひょいとちいさく会釈していく。すれ違いざまに一言。

「今日はそういう気分じゃないの」

 かろく笑って雪を踏みしめ、コートのポケットからロリポップを取り出して咥える。言葉に答えるつもりはないという意思表明。今はひとりでいたかった。外界を全くに遮断して、平時よりずっと忙しく送りつけられる有害な送信を絶え間なく断ち切っては焼き払う。自家製の攻性防壁があげる成果は上々だった。反撃が自動化されているおかげで手間暇がない。歩きまわるだけでも居並ぶ通信塔を凍りづけにし、張り巡らされた仮想現実網の一角を切り崩していく。それは鳥瞰すればあまりにもつまらない些事──微々たる被害だ。レヴィ自身もまたそう思っている。取るに足らない反抗に過ぎないと。ただ少女は、そうせずにはいられないというだけだ。たったそれだけの理由で、そうしている。それも、ずいぶんと長いこと。

 だからそれは、少し意外なことだった。

 前兆は定期的に送りつけられてきた攻勢の停滞。それが一時の静寂を呼ぶ。それがどれだけ異常なことか! 人並みに満ち溢れた歓楽街で、ただひとりレヴィだけが眉をひそめた。がり、と噛み締めたあめ玉が真っ二つに砕けた。

 気にしないように脚を進める。向かう先は駅前だ。人が多く集まるそこは、必然として通信塔が密集していて然るべき。だというのに、レヴィの周りから少しずつ人影は消えていく。まるで彼女の周囲だけが切り取られたかのような空白が生まれている。幸福に満ちた歓談と笑い声が遠退いて、行き交う車のエンジン音ばかりが重く鈍く響く。対抗するようにこつこつと足音を立て、やがてレヴィは歩みを止めた。

 ぐるりと周囲を見渡す。周囲を満たした人影を見る。一片の先ぶれもなく生じた彼らを見て取る。

聖夜に幸いあれ(メリー・クリスマス)!』

 お嬢さん、と彼らはにこやかに微笑んだ。

 赤白の三角帽子。真っ赤な毛皮の外套は悪趣味なまでに鮮やか。たっぷりと白い髭をたくわえた面相は顔付きがほとんどうかがえず、人にあるべき個性というものを均質化させる。

 聖ニコラウス。あるいはサンタ・クロース。そう呼ばれる白髭のおじさん──怪人たちが、ざっと一〇〇はそこにいた。

 通常そのような数は街道を埋めつくすばかりだが、そうはならなかった。怪人は現実空間において三次元的に配されており、はるか上空よりレヴィを見下ろしているような姿もある。ともすればいくつかは上空に張り巡らされた拡張現実網(Augment Reality Network)へ投影された仮想現実映像に質感(テクスチャ)を貼り付けているだけなのかもしれない。ともかく威嚇的な光景であるということだけは間違いがあるまい。

「……うわあ。なに? ファックされちゃう?」

 汗顔はにわかに。軽口を吐けるのは、まだ余裕がある証拠だった。ほんの少しだけだが。

 それに向かって、怪人は口を開いた。口をそろえて言った。幾重にも重なった声はさながら悪魔の囁きめいている。

『いや、いや。クリスマス・プレゼントを届けにきたのだよ────悪い子に!』

 ちゃきり、と。

 一〇〇は違わず、ちいさな金属音を響かせてその手に黒光りする凶器を納めてみせる。携行拳銃──二一二五年現在においてなお絶対に所持が許可されることはない兵装であった。もっとも、立法・司法・行政は全て秘密裏に〈統和〉が握っているのだから裁きにかけるものはいないのだが。

 銃口は全て違わずレヴィへと定められ、ぴくりとも外れない。当然怪人の位置はそれぞれ異なる必然、拳銃の傾きや角度も絶妙に刻々と変化している。複数の電脳を接続共有しての高速試行、適切な値の算出、それが怪人それぞれにフィードバックされて実行させるまでにコンマ一秒の時間差(タイム・ラグ)も存在しない。

 物理脅威を眼にして戦慄を覚えるも、それでレヴィの身体が止まるわけではない。電脳化(ワイアード)された脳裏において感情抑制の機能が働き、仮想現実内でのそれめいて恐怖の感情がにわかに希薄化する。同時に視界から取り込んだ映像を脳内電脳網に転送、瞬時の解析によって得られる結果は一〇〇の銃口が生み出す弾道予測──そして全ての弾丸が通ることのない地点。レヴィはすぐさま駆動して、銃口が火を吹くよりも先に最小限の回避行動で逃れゆく。ぽひゅ、とともすれば間の抜けた銃声が幾重にも重なり、元いた場所を交点とする無数の弾丸が通り過ぎていく。処理速度で勝っていなければ、レヴィはあっという間に蜂の巣にされていただろう。相手は物理脅威であるといっても、これは電子戦の範疇であった。

 それにしても、弾着を見るに破壊規模は存外ちいさかった。果たして特殊な弾丸を使っているのか。拾い上げ、内部構造までも透過して見て取った情報を脳内電脳網に引っかけて解析すれば、答えは自ずと見つかった。

 ────神経毒。現実における物理実体として、活性化時と同様の効能をもたらす"幸福剤(ハッピー・アンプル)"。その粉末が、銃弾の弾頭に組み込まれていた。破壊力が低いわけである。レヴィはその悪辣さにかんばせをしかめると同時に理解する。〈統和〉が直々に、出張ってきたのだ。幸福剤に蝕まれていない脳髄の持ち主を探知するや否や──ことごとく聖夜を幸福に沈めるべく。

『メリー・クリスマス!』

 多重合成音声がレヴィの耳朶を打つ。そして銃声。一斉に放たれる無数の二発目は動き続けるレヴィを立て続けに襲った。移動地点を予測されているのか安全地帯は先程よりもはるかに減少している。可能性を潰されているのだ。

 レヴィはぐるりと上空を含めた二七〇度を見渡し、即時的に一〇〇の全実像を捉えた。否、実像であるかは定かでない。それを確認するための目視だ。

 脳内電脳網から実体走査(スキャニング)を速やかに実行(ラン)。全天に張り巡らされた拡張現実網に載せられた映像は、そうしなければ現実と見分けがつかないほどに精緻である。空を飾る星空も見せかけばかりの虚偽である可能性は高い。だが、それを喝破するには時間も脳髄の余白も足りなかった。

 実像と虚像を振り分ける。飛来する弾丸も幾つかは投影された動体映像に過ぎない。予測される弾道の軌跡から無害なものが除外され、レヴィの前に一気に安全地帯が広がった。迷わず飛び込む。

 まさにそこを狙うように、弾着。意図的につくりあげた安全地帯に飛び込むのを待ち構えていたかのよう。発砲音のたぐいはまるで聞こえず、ふわりと花のように開くレヴィの腕の袖を弾丸が掠めていった。幸いにしてそこは空っぽだ。

『ほ、ほ』

 周りの怪人たちが感心したような笑い声をあげた。声の主は彼らではないだろう。一〇〇────実像にして五〇の彼らは、端末に過ぎない。極度に均質化されていることからして明らかだった。

Shit(くそったれッ)────」

 悪態をつきながら続けざまに飛来する弾丸を転がるようにして回避。下着があらわになるのも上の空。超長距離からの狙撃であると予測して手動で懸念要素を入力。一気に安全地帯が再度危険地帯(レッド・ゾーン)に塗りつぶされる。舌打ちとともにレヴィは散華した右の袖からちいさく白い掌をむき出しにした。その手に収まるは黒鉄の鉄槌をはじき出すもの。

 強化実弾(マグナム)内包の懐古主義的自動拳銃(コルト・ガバメント)。袖の裏側に隠されたポケットから引き出すようにして腕を突き出し、照星(フロントサイト)を見る間もなく狙いをつけて引き金を絞る。

「────Fire(ぶっとべ)!!」

 銃火の咆哮! KABOOOM(どかん)!! 怪人(サンタ・クロース)の一人が爆発に煽られてまともに吹き飛ぶ! ざまをみろと瞳を細めるレヴィ。爆風に金色の髪が淡く揺らいだ。

 女の細腕だが、銃の反動を受け止めることは至極たやすい。生体機械義肢バイオ・サイバネティクスの賜物だ。擬似神経(サイバーニューロン)電脳化接続(ワイアードリンクス)を行い有為なアプリケーションを走らせれば、ほとんど狙いを付けずとも高精度の射撃を行うことは容易である。そこに肉体の是非は関係がない。銃の反動を受け止めるための技術があればそれでいい。

 しかし一匹殺しても怪人(サンタ・クロース)はいまだに山ほどいる。いっそ手近な建物に潜り込もうかと思ったが、うまくはない。囲まれれば死ぬ。殺されることはないだろうが、尊厳の死を迎えることは必定だ。先ほどまで確かにあったはずの群衆を巻き込むのがベストだったが、それだけは全力をもって阻止するに違いあるまい。なによりどうあっても援軍を呼ばれる。

 端末の一機を失おうとも全く構うことなく、実体の怪人は躊躇いなく引き金を引く。無数に降りそそぐ兇弾──幸福剤(ハッピー・アンプル)。トリガーハッピーもかくやの発砲数を迎えながら、レヴィは咄嗟に路傍の木陰に隠れる。彼らがやっているのは破壊活動でなく洗脳──いわば広報的活動であり、遮蔽物は実際に有効である。

 ちゅんちゅんと大量の弾丸が通り抜けては過ぎ去っていく。人心地などまるでつきやしない。ちいさな身体を影に押し込めるようにしながらレヴィは対策を練った。変態(アブノーマル)の脳天をふっ飛ばしたことも身体改造資金のために命を張ったこともならず者ハッカーとしのぎを削ったことも一度や二度では決してないが、〈統和〉と本格的にことを構えるなど全くもって経験がない。経験がないからといって許されるわけではないが、やり過ぎたかという後悔は今さら無いでもない。

 だが、やるだけだ。物心ついてから一人で生きてきて、一人で戦争をやる腹はそれなりに決まっている。反〈統和〉を標榜する地下に潜伏した秘密結社の接触はしばしばあったが、信用ならなかった。不信感しかない〈統和〉に比べればまだよいが、レヴィにすれば似たようなものだった。

 遮蔽から顔も見せずに腕だけを後ろ手に突き出し、撃った。予測された移動地点に点在していたらしい怪人が銃弾に倒れる。敵はまだまだいた。

 不意に襲い来る銃声が止んで、よもやリロードのタイミングを被らせるわけはないとレヴィがいぶかしむ。その時だった。

『悪い子だ。公開情報(アクセスフリー)にまで鍵をかけているとは!』

 ────接続(アクセス)を探知する暇さえなかった。無理はない。公開情報、つまり重要度の低い個人情報(プロファイル)(アイス)をすり抜ける必要などひとつもない。それは誰でも見られるし、誰もが当たり前のように晒している。人は他人にそれほど重大な関心を持たないことが明らかであるからだ。基本的に必要性がないので、接続を拒絶(ブロック)するのもまた不可能である。レヴィのそれはまごうことのない違法の鍵だ。

This(この、)...Fuck'in(どぐされ) Dick(ちんぽやろう)────」

 悪態もよそに、合成電子音声は朗々と響き渡る。開示されていてしかるべきものを解放するかのごとくに。怪人たちが謳い上げる。

 宮坂レヴィ────十五歳。

 九月十日生まれ────学歴無し。

 両親、すでに無し────家族、親類、共になし。

 それは一匹のみなし児の記録であり、また記録というべきものを真っ当に積み上げていないはぐれものの記述だ。レヴィは舌打ちしながらそれを聞いた。何より自分が知ったことだが、だからといって良い気分では決してない。むしろ最悪といってもいい。特に出自にいたっては羞恥心に近いものを覚えすらしよう。そこに巨大複合企業体に喧嘩を売るだけの所以が埋めこまれているのだから。

 そしてそれはこの御時世、ごくごくありふれた理由に過ぎなかった。

『おやお嬢さん、なにを恥じらうことがあろう?』

 いけしゃあしゃあと見透かしたような言葉。いくつもの目を通して多角的に観察すれば、それは大して難しいことではないだろう。人間の表情は、機械の眼から機微を秘め続けられるほどに鈍感ではないのだ。レヴィは今すぐ声の主の脳天に弾丸をぶち込んでやりたい気持ちをぐっと堪えた。それはつまり、怪人の群れに無謀な突撃を実行することを要求する自己の憤怒を抑制することだった。感情抑制機能が、よくやってくれていた。

『誇るべきとさえ言おう、聖夜の子クリスマス・チャイルドよ!』

 それは嘲笑のようだと、レヴィは醒めたように思った。



 現代の極東文化圏において、九月初頭に生まれる子どもはやけに多い。それらの新生児の少なくない数が、聖夜の子とそう呼ばれた。幸福剤がもたらす幸福感のままに契を結び、性交を果たし、孕んだ子を産み落とし、それは確実に少子高齢化の問題を緩やかに解決せしめた。そして、脳をむしばむ幸福剤は確実に新たな問題を生み出した。それはつまり幸福に満ちた婚姻に相応しからぬ緩やかな家族機能の崩壊であり、やがて完全な破綻をきたした結実として生まれるもの。それが少女のような、底辺を這いつくばる子どもたちだ。いや、少女などよほどマシだろう。自分で振るうことの出来る力がある。大半の児童には、それすらない。与えられることはない。勝ち取るか、あるいは死ぬだけだ。

 そしてその全ては、単なる事実に過ぎない。それ以上でも以下でもないと、彼は純粋にそう思っている。〈統和〉の下士官たる管理権限保持者(アドミニストレータ)は高層ビルの高みから怪人(サンタ・クロース)の義眼に接続(アクセス)して少女──宮坂レヴィを観察する。特に耳殻の辺りでぴょんぴょんと無造作に跳ねる、白い兎耳めいた侵入対抗電子機器をよく見つめる。何らかの自主的な改造が施されているようだが、それは問題視されるほどの段階(レベル)ではない。電子戦を挑むに差し支えない領域だろう。

 数多の怪人を有機的にリンクさせ、銃撃を仕掛ける。これだけで仕留められるならば楽な仕事だったが、少女も中々のさるものである。花のようにひどく短いスカートを翻しながら機敏に動きまわり、二手三手と先──未来を読んだように機動しながら着実に実体の数が減らされていく。彼自身の狙撃も決定打には至らなかった。アドミニストレータはゆえに、焦ることなく、さりとて早期に攻略を進めることにした。反乱分子を壊乱させる彼のようなエージェントは一人ではないから、支給される端末の数も限りがある。うまくやらねばならない。

 銃撃はあくまで囮として意識を向けさせたまま、宮坂レヴィの脳内電脳網ローカル・エリア・ネットワークへと侵入を開始。違法手段は必要ない。〈統和〉の名のもとに行われる接続(アクセス)は、合法であるからだ。強権に違法性はない。探知されることもなく入り口の(アイス)を破り、アドミニストレータはさらに奥へと潜行する。一般的な電脳化接続者(ワイアード・マン)であるならばこれだけで侵入は完了する。後は書き換えるも破壊するも、記憶の消去も自由自在。

 しかし現実に展開されたのは、レヴィの脳内電脳網でない────彼我の領域を決定的に隔て、仮想現実のごとくして非空間のイメージを展開する上層電脳網オーバーレイ・ネットワーク。最後の砦ともいうべき防衛線。それはレヴィが知覚してのものというより、あらかじめ組み込まれている防壁なのだろう。そこへ迷わず侵入したアドミニストレータの化身(アヴァター)に対して一秒と経たず、容赦なく迫り来る攻性防壁。触れればそれだけで意識を切断された挙句に脳裏を灼き尽くされるであろう黒紫色の(アイス)。しかし痩身のアヴァターは防壁をすり抜けるようにしてそれを避け、極彩色の非空間を潜行しながら上層電脳網の奥へ奥へと踏み込んでいく。

 上層電脳網オーバーレイ・ネットワークは人の心象風景なるものによく似ていた。端末を通したものでない、アドミニストレータ自身の電脳視覚野にそれは投影される。潜行するにつれて通り過ぎるかのごとく流れ行く矩形ホログラフィックと幾何学的オブジェクトの群れ。そして当人からも意識されてはいないだろうクズデータの山──泡沫の夢のような記憶のキャッシュデータが明滅しては消え失せる。切り取られた記憶のごとくかいま見えるものは、さして興味を引き寄せるようなものではない。

 血。銃口。男根。電脳世界。切断面を晒すか細い腕。リボルヴァーの銃口を自分に向かって押し付けるちいさな手。言い争う一対の男女。女児が泣き喚く音声データ。羽のように引きちぎられた着衣。散華した幼い女性器の踏み躙られた痕。弾痕を穿たれた破落戸の顔。爆風と銃声の吹き荒れる塹壕戦。

 無作為に情報を拾い上げる集積アプリケーション(クロウラー)を終了させてアドミニストレータはクズデータを感慨なく保存、されど物理現実での攻め手に反映させることは忘れなかった。

『恵まれぬ生に、祝福を! 幸福を!』

 わかったふうな口振り。四十八の怪人(サンタ・クロース)が引き金を絞る。景気良く放たれるプレゼントの雨あられを三次元機動によって少女は滑るように回避していく。スカートが翻るも構わず高層建築物の壁面に張り付くがごとく立ち、それを蹴りながら直角に落ちる。紐のように儚い黒と白レースのワンポイント。外観は生身となんら遜色ないが、精密な機械義足に違いはあるまい。

 潜行と並行して手術経歴を検索するも、該当する記録はなし。万民の個人情報が遍く時間単位で記録されている〈統和〉のビッグデータベースを参照してなお同じことだった。宮坂レヴィの公式に記録されている情報は、互いが殺し合った果てに両親をともに亡くした七歳時点から完全に途絶している。R.I.Pに認定されていないことがよほど不思議であったろう。十五歳というのはつまるところ、生年から順当に数えた結果おそらくそうであろうと判定されたに過ぎなかった。

『幸い、あれ』

 端末の射撃は威嚇に過ぎないが、さりとて無視も出来ないだろう。強いて動かし、追い込んだところを自ら狙う。それもまた囮に過ぎず、本命はやはり電脳網の攻略だった。アドミニストレータはSWS(Sniper Weapon System)を担ぎ上げ、そして撃った。狙いは悪くない。少女の突き出した腕をかすめていったが、咄嗟に外された。ニューロン加速の賜物か。しかしそれはまた、射撃に気を取られていることに他ならないだろう。そして"幸福剤(ハッピー・アンプル)"はまた、触れるだけでもその効き目をおよばさずにはいられない。

「────ッ、Ah()......?」

 金色の鈴蘭のようなちいさな頭が、くらりと揺れて一瞬うつむく。幸福感を催させるその初期症状とでもいうべき酩酊感が少女を襲っている、とアドミニストレータは怪人の眼を通して観測。一気に上層電脳網の深みへと潜り込む────花の蕾を想起させる形態の仮想セキュリティアプリケーションが蒼色非空間レーザーを投射するも、アドミニストレータはそれを紙一重で回避。自動走査なのだろう、少女はいまだこちらの攻勢に感づいた様子はない。疑いから自覚的に走査を起動しているのだとしても、引っかからなければ同じこと。

 かぶりを振った刹那、四方八方に銃弾がレヴィを襲う──あからさまに動きが緩んでいては追い詰めるも難しくはないと思われたが、ならず。彼女自身の意志を離れたように義体は駆動し、義腕が鎖されたシャッターをクッキーのようにめちゃくちゃにして転がり込む。

 肉体の限界──というより回避ミスが発生することを必然的な前提として、それをフォローするための命令(コマンド)を入力していたのだろう。そうでなければ今頃は脳髄を幸福にまみれさせていたはずだ。巧みだが、それはいわば苦肉の策に変わりはない。実際、視界の悪い閉所に潜り込むのは……場合によっては、悪くはないが……悪手だ。狙撃から逃れる意味では、全くうまみがないわけではないが。

 近隣の建築物は、全て支配下に置かれている。端末の目を通すまでもなくアドミニストレータの記憶層(ストレージ)に流れ込んでくるリアルタイムの監視カメラ映像。それはレヴィがどこにいようとも三百六十度全方位から彼女の姿を確認することが出来た。同時に全階層マップデータを取得し、続けざまに怪人たちを突入させる。地の利はこちら──否〈統和〉にあり。

 レヴィの行き先をアドミニストレータは逐次確認する。上階へと向かう彼女を馬鹿正直に追わせながら、幾らかは待機。管理者権限をもって時間外のエレベーター使用を許可させ、より上階からの挟撃を画策。戦力を分散させすぎるのは愚策というほかないため、ほとんど飽和といっていい頭数を一所に投入しての運用である。怪人たちを三つのグループにわけて命令(コマンド)を打ちこみながらアドミニストレータは決定的な事態の変革をはかった。つまり、電脳網の攻略だ。

 幾重にも張り巡らされる執拗な接続遮断機構シャッタード・プログラム──左右からスライドして閉じ合わされる電子の隔壁をアドミニストレータのアヴァターは滑りこむように抜けていく。咄嗟の判断で突出しなければ間に合わないほど遮断は性急で、かといって突出しすぎれば閉じ合わされていたものがゆっくりと開く隔壁──つまりはフェイクと正面衝突を喫して散る。正規の接続(アクセス)にも不自由しそうな念の入れようで、ほとんど偏執的とすら言ってよい。

 なによりも異常なのは、これは侵入対抗電子機器(I.C.E)の防壁を乗り越えた向こう側なのだという一事につきた。民間の手による違法な接続、ウィルスデータ、スパイウェアのたぐいは、本来その入り口で全て排除されているはずなのだ。家中の扉全てに鍵をかけておかなければ気が済まない人間が、いったいこの世にどれだけいるというのだろう? 実際、少女はそれをやっていた。あからさまに〈統和〉という巨大な存在を意識したかたちで。それが発見を早期にさせる組織的反抗ならばまだしも、完全に世界の裏側に潜んだ個人という在り方で。

『その身体は? 切り落としたのかね? 両親から頂いたその身体を? 悪い子だ!』

 怪人(サンタ・クロース)の合成電子音声が古ぼけたミームを垂れ流す。肉体を持たない端末に過ぎないそれらが口にする言葉にしては皮肉にすぎたか、少女は背後を一瞥さえせず吐き捨てるばかりだ。

「マインド・ファックだけは御免こうむるね────」

 つまるところ、肉体を義肢に置き換える程度はなんら問題ではないと言い切る。しかし彼女の脳みそはすでに電脳化(ワイアード)されていて、とうに生身ではありえない。精神の自由を謳い上げる金糸雀(カナリア)はどこに自我というものを求めるのか? 何ものにも属することさえなく。無論のこと、答えがあろうはずもなかった。

 レヴィは二階への階段を上り切ると即座に階層内(フロア)を見渡して全面的に走査。そしてコンマ一秒後、迷うことなく走りだす。向かう先を認めてアドミニストレータにもわずかな動揺が走った。階層の床端、厳重に電子錠でロックされた掌大のカバーが瞬く間に氷解(アイスブレーク)されて取り外される。むき出しにされるのはフロアメンテナンス用のLAN(Local Area Network)端子。レヴィもまた首裏のコネクタからLANケーブルを引きずり出せば迷うことなく直結──没入(ジャック・イン)

 変化は劇的だった。上層電脳網オーバーレイ・ネットワークの攻略に電脳リソースを大きく取られてしまっている。支配下に置いた高層建築物の管理権限を一部奪取され、当該階層の監視カメラ映像が瞬く間にして途絶する。決定的ではないが、痛くないわけではない。階層の構造なども全て把握されてしまったことだろう。状況は物理/電脳両面での早期制圧を必要としていた。

 まずは入り口から攻め込んだ怪人十六名の群体(グループ)αが二階層へ雪崩れ込む。彼らは扇めいて広がるように展開しながらレヴィへの包囲を狭めていく。

 それを見て取ったのか、少女はLANケーブルを引っこ抜きながら地面に引きずるようにして疾駆。上階に逃れるつもりであろう。だがすでにエレベーターから上階に送り込まれた群体βが彼女のもとに向かっているところだった。

 ほとんど飛び出すようにして幼い身体が階段を見上げた刹那、まさしく雨の上に上階からは弾丸の雨あられ。もたらす感覚の甘ったるさは飴玉にも等しいだろうが危険性は段違いだ。レヴィは咄嗟に飛び退き、弾丸の軌跡が床にいくつも埋め込まれていく。前も後ろも詰まっている彼女にもはや逃げ道はない。

『人は自己の肉体には、抗えぬのだよ』

 無防備な背中を階段から駆け下りたいくつもの銃口が狙う──斉射。

 その瞬間、三階へと続く階段を封鎖する分厚い防火扉が床の隙間(スリット)から瞬く間にせり上がった。それは数人にも及ぶ怪人(サンタ・クロース)を瞬く間に持ち上げ、天井に挟みこむかのようにして押し潰す。端末の躯体が圧迫されて弾け飛び、人工血流があたりに無作為に飛び散った。後方に控えていた怪人の射撃も全て扉に遮られる。少女にまでは届かない。一部とはいえ管理権限を奪取されたその代償ともいうべき惨事だった。

Stupid(ばぁか)!」

 べえ、と赤い舌先が悪戯げに伸びた。端末の眼を通してみているのも承知のことなのだろう。

 群体βは制圧された。同時にレヴィは群体αの最前列一機を撃ち抜きながら壁際へと一直線に退る。背後がすでに群体αに埋められているのだから合理的な判断といえたが、だからといって自ら壁際に詰まるのは────否。窓があった。銃弾をもたやすく弾く頑強さと柔軟性を誇るそれは、しかし電子錠を緩めれば呆気なく開かれる。この階層に限り管理権限を有するレヴィにはなんら難しいことではない。

 飛び降りるつもりだと判断したアドミニストレータはすぐさま待機させていた群体γを移動させるべく命令(コマンド)を発信。その時すでに、少女は窓から飛び出した。か細い脚の裏を窓の縁につけて接地し、そしてまた足元を蹴りながら垂直に飛ぶ。

 黒百合めいてふんわりと開いた左の袖から合成繊維フックロープ──義肢に仕込まれた特殊兵装か──が射出。ほんのわずかな上階の窓枠の取っ掛かりに引っかけられ、少女はそれをするすると上り、時に引っかけたところに身体を引き戻すよう。窓の位置は取得したマップから確かめていたのだろう。懸垂上昇(クライミング)──先の戦場の風景がリロードされるものの意に介さない。重量をかけて引きずり落とす一手に出るには遅すぎた。というよりも、少女のそれが早すぎた。訓練されたものの熟練した動作。

『降りなさい! 悪い子だ! やはり、悪しき親の子だ!』

「実体に縛られるのは、あんたらもでしょうよ」

 にわかに表情をしかめるも、道化のような合成電子音声を置き去りにレヴィは行く。肉体はないが、実体はある。まさにだ。紐帯された群体γは一斉に銃口を向け、宙ぶらりんのレヴィに狙いをつける。次々に銃火が放たれるも神経弾は少女を穿たない。まさに直撃を待つ刹那、ぽんと身体を中空に投げ出すようにしながら滞空時間の猶予のうちにレヴィはフックを再射出する。そのまま引っかかったところから身体が急速に高く吊り上げられ、派手に揺らぐも意に介さない。まるで恐怖心がないかのごとき振る舞い。

 否。恐怖心がないのではない。"肉体の死"に恐怖を覚えないのだ。これまでの少女の言動を統合すれば、それは容易に導き出される結論だった。

 群体α、群体γを共に置き去りに。残る群体βが瞬く間にエレベーターから最上階へと向かうが、少女の機動はそれよりもなお早いといって差し支えない。摩天楼の天上へと至らしめたその刹那、アドミニストレータはSWSの引き金を無造作に絞った。一筋の軌跡が空に描かれ、半身をかわした少女の髪先を弾丸が掠めていく。

「────そういうツラ、してたわけね」

 レヴィはアドミニストレータのほうに視線を向ける────否、彼を見た。見られて、いた。遥か一㎞の距離を介した向こう側から暗闇を貫く義眼の輝きがアドミニストレータを抜く。

 アドミニストレータは半ば人体であり、半ば義肢だ。実年齢は三〇半ばであり、無精髭を蓄えるも全体的にはこざっぱりとした痩身の男だった。ごくごくありふれた黒いスーツに身を包み、仕事のための機械義肢と化した右手をSWSにかける。生身の左腕はグリップに添えるだけ。生身と機械の部分は克明に分かたれていて、それは四肢を義体化しながら胴と頭は生身である少女にどこか似通っている。だが一点、違うことがある。

 アドミニストレータの義肢はいわば〈統和〉に奉ずる公の手であり、私としての自己を生身の肉に委ねた。そうすることで彼は自己というものの保存につとめた。

 少女は、そもそも公私の別がない。レヴィのとっての自己とは精神にあり、肉体にない。ゆえに少女は肉体の死を畏れない。それだけだが、決定的な差異。

 レヴィは一気に摩天楼の屋上を駆け抜ける。それは助走だと、誰の目にも停滞するつもりがないとわかる破滅的な速度で。硬質な足音が後から駆けつけた群体βを置き去りにする。『受け取り給えプレゼント・フォー・ユー!』その義理はないとばかり、レヴィはコートをスカートをさながら翼めいてはためかせながら滞空する。弾丸はただの一発さえ掠りもしない。地に縛り付けられることのない空中への遊離。肉体から解放されるかのごとき錯覚を刻むニューロン。数十mもの空を渡り、空を削る通信塔(バベル)を踏み躙りにたび跳躍。

 それはほとんど飛翔とすらいえまい。実空間における潜行(ダイヴ)にも等しい。レヴィがしかし刻々と確実に距離を縮める最中、アドミニストレータは常時並行していた電脳網の潜行──穿孔に全電脳リソースを傾ける。仮想現実網を模する上層電脳網オーバーレイ・ネットワークにおけるアドミニストレータの振る舞いはまた、少女のやる自殺行為と似たり寄ったりのもの。

 電子の虚海を潜り抜けた先、ついにアドミニストレータは水底に行き着く。それは地獄の門めいてそびえ立つ、暗く輝く電脳の防壁層。脳内電脳網を覆うかのごとく独自に築き上げられた上層電脳網において、〈統和〉の有する強権は意味をなさない。違法・合法問わずして、それは少女の許可なくば一切合切を許さないという透徹とした意思表示。『PASSWORD』。扉全面に浮かび上がる空欄の入力ウィンドウと青いレイヤーラインに縁取られた仮想キーボード。それはアドミニストレータの前に頑然として立ちはだかり、電子錠もあらゆるクラックも受け付けることなく跳ね返す。あらかじめ盗み取るような真似が出来れば話は別だろうが、生憎なことに即応の金庫破りである。見当がつくわけはない。総当りの試算を繰り返すかと鑑みながら手を止める──無策では試行の途中、あるいは一度目で入力のロックがかけられる可能性は極めて高いだろう。それはつまるところ、彼女が許したものなれば通ることが適うというわずかな猶予に生じ得たあまりにもちいさな隙に過ぎなかった。

 もっとも、その隙間がなければレヴィは電脳的に不能となってしまうが。

 現実の彼女を目視しながら、アドミニストレータは仮想キーボードに指先をつける。そして〈匿名希望(レギオン)〉を起動。アドミニストレータの人型をしていたアヴァターが不意にその輪郭をあやふやにし、色合いはまるでRGBをぐちゃぐちゃに混ぜられたような極彩色。これは対象の防壁やセキュリティを欺瞞するたぐいのアプリケーションであり、接続元やアヴァターの形態をおおむね変幻自在に偽り切る。つまるところ、ロックをかけられたのならば別の接続元を踏み台にして乗り換えればいい。それだけのこと。弾かれたさいにも万が一レヴィへ情報が届かぬよう、制御下にある通信塔(バベル)から指向性ジャミングを垂れ流しにする。地の利を握っているからこその力押しだった。

 打鍵が開始される──秒間五十六万七千の候補が試行され、同じ数だけの欺瞞ユーザーがロックをかけられるが意味はない。その時すでにアドミニストレータのアヴァターは別の形態へと変化をとげている。

 実空間の少女が屋上の地を蹴り、再び接地するまでおおよそ一秒。彼我の距離がみるみる縮まっていく。アドミニストレータは電脳を通さず半ば脊髄反射で引き金を絞る──はずれ。あまりにも速い。それはまさにニューロンの速度ではないかと錯覚される。現実の肉体に唾棄する彼女には相応しいかもしれなかった。

 だが、三秒後。

 暗号化文字列(パスワード)入力成功(ヒット)────接続(アクセス)承認。『Success』の文字が輝かしく浮かび上がり、重々しくそびえ立った厳しく黒光りする扉は開きもせず夏の雪のように掻き消える。電子の欠片が儚く散りゆき、後に残るのは向こう側(LAN)へと通ずる筒状の青白い輝き。電子要塞経路サイバーフロント・パス

 それを目の当たりにした瞬間と、まさにアドミニストレータが点在する摩天楼にレヴィがたどり着いたのは、全くの同時であった。

 こつん、と少女の革靴の踵がかろい音を立てる。それはもう威圧的でさえあった。宮坂レヴィはその手に収めたままのガバメントをゆっくりと持ち上げ、歩みよりながら黒鉄の銃口をアドミニストレータへと向ける。彼女は唇を釣り上げ、にぃ、と笑った。

honor to(はじめまして、) meet you(くそったれ)────」

 ご光栄ですとうそぶきながら、指先がたおやかに引き金へとかけられる。

「プレゼント。もらいにきたぁげたよ」

「オーケイ。お嬢さん」

 アドミニストレータは肉声でこたえた。ごくごくありふれた、中年の男の声。あいにく、咽頭は半々とはいかなかったのだ。機械化せずとも合成電子音声は扱えるため、わざわざ義体(サイバネ)に置き換えようとは思いもしない。

 アドミニストレータは無造作にSWSを掲げ、立ち上がった。銃口を向ける。無論のこと、すでに弾を放つ意味もない。勝敗はすでに決している。

 鍵は解かれた。パスワードは〈rain〉。それは少女の母親の名であった。

 見た目に似合わず、やることにそぐわず、感傷的なものだとアドミニストレータは笑った。そして、言った。

「でかいのをぶち込んで、やる」

 日時は十二月二十四日二十三時四十八分。極限といっていいほどに"幸福剤(ハッピー・アンプル)"は活性化している。基本的にそれは少しずつ電脳をむしばむワームだが、この期に及んでは一気にやろう。電脳の遍くを汚染し、おびただしく吹き上がる脳内麻薬は合法的に感染者を幸福感で満たして"だめに"する。さして難しいことではない。上層電脳網オーバーレイ・ネットワークのアヴァターが電子要塞経路サイバーフロント・パスに飛びこみ、宮代レヴィの脳内電脳網ローカルエリア・ネットワークへと没入(ジャック・イン)

 刹那。

 ばちん、と火花が弾け飛んだ。

Bang(ばぁん)!」

 レヴィはおどけて言った。引き金は絞られてさえいなかった。

 ぼっ、とアドミニストレータの電脳内で火花が弾ける。それは生身を残した脳を灼熱する。髄液が凝固するような地獄の苦しみだった。

 仮想空間上を感覚する視覚野が突如として途絶。脳内でけたたましく警告音が鳴り響く。エラー発生(BEEP,BEEP)────通信途絶────信号遮断────セキュリティプログラムの作動を探知────攻性防壁"(アイス)"。

 それは、アドミニストレータの電脳が一瞬にして破壊しつくされた瞬間であった。



 無防備に電子要塞経路サイバーフロント・パスへ飛び込んだアヴァター目掛け、レヴィは引き金を静かに絞る。"自家製の攻性防壁"が作用せしめるその一瞬。

 すなわち、全ては今ここしか無い一瞬を狙い打つためのそれは呼び水。侵入対抗電子機器(I.C.E)の防壁を破ったと確信しているからこそ、ただの一度だけ見逃される騙し打ち。上層電脳網オーバーレイ・ネットワーク脳内電脳網ローカルエリア・ネットワークの狭間で断層のごとく立ちはだかる絶対の攻性防壁"氷獄(ギンヌンガガップ)"。蒼白い獣の顎めいた氷壁は侵入者のアヴァターをすり潰し、電脳網の裂け目に引きずり込みながら強制的な時間切れ(タイム・アウト)を引き起こしていく。アヴァターに食らわせた負荷は瞬く間にして彼の本体──すなわち電脳そのものにフィードバック。

 まさに彼は、名も知らぬ彼は紫電と火花を散らしながら頭を抱えこんで崩折れていた。穴という穴から人工血液が滲みだす。否、半分は人工のそれでない生身の血流も混じっていた。

「ダブル・トラップか────」

 それはさながら扉越しの銃撃。鍵のかかった門戸を打ち破った向こう側から機関銃の弾倉の中身をまるごと叩き込まれるような仕儀。あまりに乱暴だが、効果はいわずもがな劇的だった。

 致命傷を負いながら、アドミニストレータはどこか落ち着いた声で口にする。電脳化(ワイアード)された人間が電脳を破壊されてなお口がきけるのを訝しむも、レヴィはすぐに理解した。電脳化(ワイアード)されているのは一部に過ぎないのだろう。つまりは、原義的な意味合いにおけるサイバネティクスオルガン────自動制御肢生命体(サイボーグ)。ゆえにいまだ半分は生きている。そして半分は死んでいた。

 その表情にあるのは端的にいって驚愕。事態を理解しているにも関わらず理解し得ないという面差し。電脳内において最凶の切り札とでもいうべきものを持ちながらなお──だからこそ、彼女の無謀な振る舞いはあまりに奇怪だった。通信塔(バベル)を足蹴に空を渡るような真似も必要とあらば納得しようが、無意味にやっていたというのなら命知らずにも程がある。"死にたがり"といってもいい。

 無論のこと、決死のダイブはレヴィが拡張現実に投影したちゃちな映像──なんてものではなかった。少女のか細い肩には雪がかぶさっているし、金色の髪もほのかに艶めいて濡れている。温度が下がった人工皮膚を調整すべく、頬が薄っすら熱に赤らんでいる。大立ち回りを演じたのは仮想の摸倣子などでは断じて無い、宮坂レヴィそのひとだった。

「死が──恐ろしくはないのか」

Why(べつに)?」

 肩をすくめて疑問符を。当然、とでもいうように。レヴィは軽い調子で銃口をかかげ、黒光りするそれをごりっとアドミニストレータの額に押し付けた。その硬い感触が気に入らなくて、拳銃をゆっくりと下へ降ろしていく。そしてさしたる間をおかず、胸の臓腑にぴたりと狙いを定めた。銃口はもはやゆらぎもしない。

「身体が死ぬのは、問題じゃあない」

 あっけらかんとしていうのははからずしも、アドミニストレータが考えていたとおりのもの。想像通り、というわけだ。事実レヴィのしなやかな肢体の大半は義肢に過ぎず、どこまでが彼女自身ものといえるかなど全くもって定かではない。ダブル・トラップ。ただそれだけならば、アドミニストレータがまんまと攻性防壁に引っかかる望みは薄かったろう。しかし肉体というものの執着が極端に薄いレヴィの奇行は彼の読みを鈍らせ、惑わせ、霧の中に秘めやかに押し隠す。捨て身の機動を、見えたそのままに理解させる。だからこその帰結が、アドミニストレータの眼前に訪れようとしていた。

 だからここから先の問答は、まるで無意味なものに過ぎない。アドミニストレータの全時記憶層リアルタイム・ストレージはとっくにシステムダウンしている。誰に伝わることも、記録されることもない言葉の行き交い。

「さえずるな金糸雀。身体が死ねば、脳も死ぬ。自明だ」

 金糸雀(カナリア)。皮肉なあだ名を頂いたものと、レヴィはちいさく肩をすくめる。その幼気なかんばせはほのかに笑っていた。

「死なない。いいや、脳は死んでも、再現する限り私という体系(パターン)は死なない」

「なにを──なにを、いっている?」

「電気信号だか、電子(ディジタル)信号だか、AIだか、ともかく脳が死んでも同じように出来たものにすげ替えられるなら私は連続する(いきつづける)

「空論だな。お前という意識がどこにあると思っている?」

Not(そんなものはない)────例えば私が死に際を悟って、ホームの人工義体(つくりもの)に電脳のデータを伝送したら……それが私のパターンを模したものなら、それが、私」

 少なくとも肉体にそれはない、とレヴィは断言する。そうでなければ、四肢を切り落としたりするような真似をするわけがなかった。

 重要なのは、思考。神経(ニューロン)。ある条件下においてなされた入力(インプット)にもとづき決まった出力(アウトプット)を返す可再現性(パターン)。それらを織りなす電脳──厳密にいえば、その中身。それを魂だのなんだのというのならばなんとでもいえばいいとレヴィは思う。つまるところ、神経のはたらき──それがレヴィ(わたし)だった。

「ゆえに、私は"幸福剤(あれ)"を端倪し得ない。あれは思考(わたし)を塗りつぶす。あれは神経(わたし)をむちゃくちゃにする。Fuck you(あんなのは) asshole(くそったれだ)──」

 決断的に断言する。それが無為にも等しく〈統和〉にただひとり歯向かう所以。否、すでに無為ではありえなかった。さして位は高くもないが、少女の前にはひとりの管理権限保有者(アドミニストレータ)が膝を着いているのだから。

 男は悄然として押し黙る。ちいさく肩を震わせ、そしていった。

「化け物め」

「心外ね。あの端末と似たようなものなのに」

 端末。一〇〇を数える怪人(サンタ・クロース)の群体。彼らでは電子の戦争にはついてこれられなかったが、彼女の語り口と彼らの存在は確かによく似ていた。彼らの同一性は明らかだった。性能も、外見も、なにもかも。強いて異論を唱えるならば、彼らには体系と呼べるような独立した思考を持たず、与えられた命令を体系としてある程度の自律的な行動を可能とする程度のものなのだが……。当然人権などあるはずもない。

 しかしレヴィはそんな存在を祝福するかのごとく、かろやかに謳い上げるのだ。黒鉄の実銃を手に。

Christmas(聖夜) is() dead(死せど),()Santa Claus(サンタは) never die(死せず)──洒落がきいてらーね」

 男はだくだくと血を流しながら苦笑した。その肩にしんしんと雪が降り積もる。クリスマスという環境下において施された欺瞞に過ぎないそれを、レヴィはそんなに悪くは思っていなかったのである。物騒な武器を下ろせばばいいと思っているし、プレゼントでも配ればいいとも思っている。そう、まともなやつをだ。

「さしづめ、お前もサンタというわけだ」

「プレゼントなら、くれてやらあ」

 安全装置(セーフティー)を外す。黒光りする銃口を向けられてなお、アドミニストレータは微動だにしない。出来ないのだろう。電脳が崩壊しては擬似神経がまともに立ちいかず、身体などもはや何の役にも立ちはしない。だから男が口にする声は、つまるところ地縛霊の呻き声のようなもの。電子の言霊に付き合うような真似は、もうおしまいだ。ゆっくりと、引き金を絞るように人差し指を曲げていく。

「──言いたいことは?」

 アドミニストレータは顔をあげ、ゆっくりゆっくりと口を動かした。言葉もないというより、発声が許されていないというかのよう。口許の動きを読み取ると、それは日本人男性のごくありふれた名前であると容易に知れた。〈統和〉という巨大な怪物(リヴァイアサン)に身を置く関係上、個人の人間性というものは真っ先に排除して然るべきものなのだろう。死の間際であるからこそ踏み切れる逸脱行為(イリーガル)だった。

 冬の寒さが身にしみる。肌を切るように風が通り過ぎて行く。周囲の金属反応が移動を止めたことから、怪人(サンタ・クロース)休眠状態(スリープ)に遷移したのだろうと判断。それは警戒を絶やすことには繋がらないが、彼が降伏を示す証拠には十分だった。

 静寂の冬に、動くものはない。激しさが増した雪風を薄着の身体で受け止めながら、刹那────

『We wish you a Merry Christmas!』

『We wish you a Merry Christmas!』

『We wish you a Merry Christmas!』

 それは聖夜讃歌の三重唱和。それが三度。数十、あるいは一〇〇もの声をぴたりと重ね合わされたかのよう。さながら葬送曲のごとくして、アドミニストレータがそっと目を閉じた最中に響き渡る。

 声は通信塔(バベル)没入(ジャック・イン)したのであろう備え付けのスピーカーから。聞き覚えのある合成電子音声。三つにわかたれた群体──怪人(サンタ・クロース)達が声を揃えて歌い上げる祝祭の賛美歌。歌だ。歌だとレヴィは思った。楽曲データを流せばすむというのに、まるで似つかわしくない合成電子音声が呪文のように歌詞をなぞっているのだから。

 降伏を示した主──管理者へと、彼らはあるべき"自律的な行動"を一斉にとったのだろう。驚嘆すべきはその自立性、自律性。休眠中であっても共有されている電脳網は緻密に周囲環境の情報を収集し、刻々と変化する状況に素早い対応を行ってみせたのだ。

 アドミニストレータが呆気にとられ、そして笑ったように見えた。

 レヴィの指先は、緩まなかった。

「Wish you a Merry Christmas──」

 and(そして、) never again(さよなら。).

 銃声が重なり、男の心臓を弾丸がぶち抜いた。レヴィの認識においてとうに死んでいた男は、肉体的な死を迎えてぐったりと崩折れる。

 返り血がぶちまけられ、レヴィはまともにそれを引っ被った。黒かったコートはまるで赤外套の様相。レヴィはそっと黒鉛を吹き、そっと筒先に唇をささげた。

 火薬のにおいがした。



 そこからのレヴィの行動は早かった。倒れこんだアドミニストレータの屍を一瞥するや否や、耳殻のふちに空けられた端子接合部(ソケット)を見つけてLAN(Local Area Network)ケーブルと接続する。俗にいうLAN直結。死姦(ネクロフィリア)の趣味はないが、必要とあらばやるだけだった。

 レヴィは瞬く間にしてアドミニストレータの脳内電脳網へと潜行。可視化された電脳内の仮想現実は端的にいってめちゃくちゃだ。目ぼしいデータがあるわけはない。もはや接続元の踏み台としても使えないだろう。しかし不意打ちを食って接続遮断(サイン・アウト)を強いられたせいだろう、彼の有していた管理権限はそっくりそのまま残っていた。レヴィはそれをそっくりそのまま皮を被るように頂いていく。

 アドミニストレータの反応途絶に際して一時的な停止(シャットダウン)に陥った通信塔(バベル)だが、それらは十秒と経たないうちに自動的に復旧を開始する。喧しいクリスマス・ソングを垂れ流しにしようとするスピーカーに待ったをかけながらレヴィはこの一帯の通信塔(バベル)を全て掌握する。管理権限が行き届く範囲はごくごく一部だが、それでも駅前の街並みに静けさを取り戻すには十分なくらいだった。それほどにいくつも立ち並ぶ通信塔(バベル)の力が莫大であることを意味してもいよう。

 レヴィは袖の中に銃を収める。扇のように広がってふわりと揺らぐ袖はさながら黒百合──その有り様は、先の刻とまるで変わってもいない。階段伝いにゆっくりと建物を下り、地上に出たところで拡張現実を全て落とす。通りにいくつも浮かんでいた半透明レイヤーウィンドウがまとめて全て見えなくなる。無くなったのではない──元よりそんなものはなかったのだ。

 さすがに異変は周囲へと伝播して、絶えていた人通りが少しずつ立ち戻るにつれて騒ぎも大きくなっていく。産業主義にまみれた街並みからクリスマス・ソングが消え、広告が消え、そしてやがて文明の灯が消えた。途絶した電力はすぐに予備電力へと切り替わるだろうが、消えたという事実への衝撃は望外に大きい。ほんの一瞬だけ、都市(トキノミヤコ)の通りは月と星と雪と風の支配下にあった。

 家族連れが不安げに身を寄せ合い、恋人達が秘かに身を抱いた。若者達は困惑であったり、かえってはしゃいでいたり、呆けていたりと様々だった。静寂の冬など、めったにあるものではなかった。頭の中を蝕む(ワーム)などどこかに消えてしまったような静謐があった。日時が二十五日を迎えてなお、そのままだった。

 レヴィは暗闇を縫うように人通りを抜け、ひそかに聖夜の闇に陰っていく。管理者権限を存分に行使して九〇にも及ぶ怪人(サンタ・クロース)を己が勢力下(クラスタ)に置き、ばれぬように散開させながらそれぞれにホームへと帰り着くべく。近隣の地区から増援が派遣されてしまわぬうちに。

 ほんの一時"幸福剤(ハッピー・アンプル)"から逃れ得た聖夜(クリスマス)は、しかし聖夜(クリスマス)以外のなにものでもない。恋人達が、家族達が、各々がそれぞれに共に過ごすことを約束された夜だった。少女は行き交う人々のかんばせを一瞥しながらそう思う。

「これで、いいのに」

 しみじみとして、つぶやいた。あんなものが無くとも、人は幸福たれる。このように。

 侵略されるいわれはない。孤独に過ごさねばならない人がいるわけがない。ただ、一人で過ごしたい人がいたっていい。それだけのこと。

 いこっか、とレヴィは電脳網の内側でつぶやいた。勢力下(クラスタ)のサンタ・クロースたちが一斉に疑問符(クエスチョン)を投げかけてくる。

 レヴィはいたって端的に答える。

 ────聖夜を取り戻しに。



 二一二五年、十二月二十五日。

 秘密裏に極東文化圏を支配下に置いていた電子ドラッグ"幸福剤(ハッピー・アンプル)"は全国的に駆逐され、この世界から姿を消した。

 余人は誰一人として知ることは無いが、それは〈統和〉内部の極秘事項にあたる最大級の汚点──"冬寂(ウィンター・ミュート)"として記録されることとなる。

 事件の首謀者とされる個人名(パーソナルタグ)"宮坂レヴィ"は完全に消息を絶っており、その後の行方はようとして知れない。

 また時を同じくして全天仮想現実網(Global Virtual Reality Network)上で、ひどく扇情的な姿をした極めて高度な人工生命体(Artificial Life)の噂が囁かれるようになったが────

 世界中のあらゆる巨大企業複合体の全情報力をもってしてもその正体は掴めず、調査は全く暗礁に乗り上げることとなる。


 人類の位階(ステージ)が一段階高みに昇ったという事実を、彼らはいまだ知る由もない。

 兎耳の電子の妖精はただ黒百合を揺らし、笑って見つめながら待っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本当に好き勝手にやったなあ、と思いましたが、ルビの振り方に思い切りがないという日和った感じがあったので、残念ながら満点は上げられません。 本当はもう少し振りたかったんだろう……?
2014/12/24 10:48 退会済み
管理
[良い点] これこそ本物のサイバー・パンクだ。間違いない。ありがとう、楽しかった。 [一言]  急に冬寂(ウィンター・ミュート)なんて持ち出してくるもんだから、思わず吹き出してしまったじゃないかw
[良い点] 厨二心をくすぐるルビの数々 [一言] いやはや、楽しかった
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ