Star Lover
登場人物
青空一郎……中学3年。天文部部長。星空が好き。恋物語よりも今はただ、星空を見ている方が好き。
黒神星……中学3年。生徒会長。青空一郎の事が好き。学園のアイドル的な存在だが、本人が気付かない内に人気者になったとか。
僕の名前は青空一郎。とある中学に普通に通う一般的な中学3年生の天文部部長である。星が好きな理由は、安直だが名前が『青空』だからなんとなく星空が好きになってしまって、それが高じて星空が好きとなってしまって、結果的に今は天文部の部長になったのである。
僕は今、中学の屋上にて望遠鏡を片手に星を眺めていた。
望遠鏡を覗くと広がるのは、秋の夜空。
9月、10月は夏の暑さから急に冷たくなってしまうのだが、その分夜の凄さがまた引き立つから好きだ。白鳥座のデネブ、こと座のベガ、わし座のアルタイルを結んだ夏の大三角形も良いが、秋の夜空もまた捨てがたい。ペガスス座とアンドロメダ座の4つの星を結んでできる大きな四角形を『秋の大四辺形』。カシオペヤ座や牡羊座と言ったのも分かりやすくて良いし、さらに星座に込められた物語を紐解くとさらに面白い物になる。
「本当に星が好きなのね、一郎君は。出来れば届かない星よりも、こっちの星に手を伸ばして欲しいわ」
そう言って、望遠鏡を向こう側から彼女が覗きこんでくる。目の前に現れた彼女の吸い込まれそうな黒い瞳から目を放して、僕は彼女を見る。
この中学一番の女生徒と呼び声の高い3年の生徒会長である黒神星。一日に10数枚のラブレターが届いた事があると言う、頭脳明晰にして容姿端麗、おまけにスポーツ万能と言う完璧美少女の興味は、どうやら星にしか興味がない僕にあるようだ。
「星空は確かに綺麗だけれども、一生経っても凡人には手が届かない存在よ。それにあの光だって何千、何万年とかけて地球に届いているんだから、元の星があるかすら分からない。そんな星を追い求めるよりかは、私と言う星を追い求めた方がずっと良いんじゃないの?」
大人びた笑みを浮かべる彼女。どうして僕が彼女にここまで気に入られているかは分からない。けれども、僕は彼女との恋物語よりも星空の夢物語の方が好きだった。
「そこにロマンがあるんじゃないか。何千年と離れた光をこうやって僕達が観測する事によって初めて形となる。それはある意味、芸術に近い行為だよ。それに既にないと言うのならば、あの星達の輝きは一層幻想的に見えるけどね」
「……私の方が綺麗で、勿論感触も良いと言うのに」
そう言いながら、谷間を寄せて胸を強調する彼女。
「北極星と周りの星々とかけまして、僕と黒神星の関係と説く」
「その心は?」
「どちらも永遠に近付かないでしょう」
そうやって、謎かけを披露した僕に対してくすりと、これまた年相応の笑みを持って笑う彼女。
「あぁ、そう。上手いわね。じゃあ、私もやらせてもらうわ。
この夜空とかけまして、あなたに対する私の想いと説く」
「その心は?」
僕の質問に対して彼女はこう答えた。
「――――――どちらも月が綺麗ですね」
最後の謎かけは「I love you」の直訳は「私はあなたを愛している」ですが、この言葉を夏目漱石は「月が綺麗ですね」と訳したんですよね。
それとかけて、夜空の空に浮かぶ月が綺麗であると言う事と、自分の彼に対する想いが「私はあなたを愛している」と言う物である事をかけてみたんですけれども、分かりにくいですかね?