代わりに
あるところに、呉服屋の男がいた。
呉服屋の男が困っていると、偶然鍛冶屋の男が通りかかる。
「ああ、鍛冶屋の旦那。すまねえが、ちょいと頼まれてくれないか」
「これは呉服屋の旦那。どうしたんだい?」
「今忙しくて手が離せなくてな。俺の代わりに、こいつを町はずれのご隠居まで届けてほしいんだ」
「そういうことなら俺に任せな」
鍛冶屋の男は一つ返事で応えると、荷物を町はずれのご隠居に届けてやった。
帰ってきた鍛冶屋の男に、呉服屋の男が礼を言う。
「助かったよ。今度何か困っていたら遠慮なく言ってくれ。代わりに俺が何でもしてやる」
別の日、鍛冶屋の男が困っていると、呉服屋の男が通りかかった。
「ああ、ちょうどいいところに。呉服屋の旦那、ちょいと頼まれてくれるかい」
「おお、鍛冶屋の旦那。いつぞやは済まなかったな。どうしたんだい?」
「今火を扱ってて手が離せなくてな。代わりに頼みたいんだ」
「任せな。何でも言ってくれ」
呉服屋の男が意気揚々と応ると、鍛冶屋の男が言った。
「ありがてえ、実は今尿意をもよおしててな。俺の代わりに小便に行ってくれ」