☆第一章☆
私の名前は櫻 舞。中学一年生です。
お兄ちゃんに、恋をしております。
決して、周りに恋できるような人がいなかったとか、そういうんじゃないんですよ。ただ、純粋に、お兄ちゃんを好きになっただけです。
かなりついでですけど、私たちの通う学校は、芸能科でもないのにオーディションがあって、結構芸能人クラスのかっこいい人とかいるんですよ。
もっとも、私はぜんぜんかわいくもないですし、お兄ちゃんだって、その中に混ざってしまえば輝きを失ってしまいます。
さて、私は今、クラブ活動が終わり、下校途中なわけですが。
非常に憂鬱です。
私は女子なら入る人数が異常なくらい少ない柔道部に所属しています。そこの男の子に告白されました。
部内恋愛は禁止、バレたら顧問になにをされるかわかりません。
それなのに・・・しかも、こんな私を・・・。
「舞、どうした?」
話しかけてきたのは、幼馴染で彼氏のふりをしてもらっている陸斗。
「別に、なにもないです」
うつむいて赤面しているのをかくした私に、陸斗は笑ってから真剣な表情に変わりました。
「お前が俺に敬語になるときは、なんでもないときじゃない。」
「そんなことありません。私は基本敬語です。」
「話したくないならいい。大体見当はついてるからな。どうせまたコクられでもしたんだろ。」
陸斗はどこか、すねていました。
「よく・・・わかりましたね。」
「やっぱりか、ほんとお前はモテるよな。」
「わかんないんです理由が。どうして私なんかを・・・」
世の中の人は、これをリア充などというのでしょうか。そうなのでしょうか。でも、私にとっては、まったく充実なんかしてませんし、むしろ疲れるくらいなんです。
自分を好きになってくれる人がいても、私の本命はお兄ちゃんで、それは決定事項で、そのたびに胸が痛いのです。想いにこたえることなんて、できないんですから。
「お前さ、嫌なの?好きって言われんの。」
「嫌じゃないです。でも、戸惑うじゃないですか。しかも今回は部員なんですよ。全13人の男子部員のうち、もうすでに半分以上に・・・その・・・好き・・・だと言われました。戸惑うんです、やっぱり。いつまでも、慣れるものじゃないんだと思います。」
悲しげに言う私に、陸斗はため息をつきました。
それきり、黙りました。
でも、私の側からは、離れませんでした。
普通の人なら、私がもし普通なら、陸斗に恋をしていたのでしょうか。
でも、私はやはり、お兄ちゃんに恋をしているので。
お兄ちゃんが、大好きなので。
彼氏のふりをしてくれている陸斗は。
私のゆういつ信頼できる人。
支えてくれる人。
ありがとうございます。
心の中で、照れ笑いを浮かべながら、毎日毎日、つぶやきます。
読んでくださった方、ありがとうございました。