セレの迷宮探検記、の前日譚
『骨しか見ない令嬢、理想の骨に出会う』(n6984mn)
の後日談になります。
完結まで書く時間がないので、導入部だけ短編投稿。
前作を読んでいないと意味がわからないのでご注意ください。
年明け以降、連載でちゃんと書く予定……
一週間くらい出かけていたガルドが帰ってきた。
と思ったら、一緒に西の王に会ってほしいって。
断る理由もないので、二人で王の居城に行く。
久しぶりに見ても、西の王は普通の骨。
「わざわざすまない。来てくれてありがとう」
「いいえー、とんでもないー」
魔族は感覚が違うのか、王様にしては腰が低い。
でも、魔力感知が苦手なわたしたち人間でもわかるほど、強い力。
だから、威厳はちゃんと感じる。
「セレさんには、ガルドたちと一緒に、フーファの迷宮に行ってほしいんだ」
フーファの迷宮というのは、フーファという魔族の縄張りにある迷宮らしい。
地名の概念が薄いから、便宜上つけたようだ。
西大陸は魔素が濃い場所が多いせいか、迷宮もたくさんあるとはガルドに聞いた。
「構いませんけど、なにをすればいいんですかー?」
西の王もガルドも、落ちついた様子だし、わたしが非戦闘員なのは知っている。
その上で頼んでくるのだから、相応の理由があるのだろう。
ガルドが一緒なら安全は確保されるし、行くのは平気。
「東大陸との取引に使えそうな品があるか、見てもらいたい」
なるほど。それならわたしが適任だ。
──東西の道を使い、行き来がはじまってしばらくたつ。
西としては東からほしいものはたくさんあるが、出せるものが少ない。
王のもとにいる魔族たちが働いて、というのが将来的な目標だけど、まだまだ難しい。
ルタ地域の迷宮でのモグラ魔族を見ても明らかだ。
「迷宮品なら、枯渇の心配が少ないからな」
ガルドの言葉にうなずく。
採掘資源は、なくなってしまう可能性がある。
それに、今から色々つくろうとしている西大陸にも必要な素材だ。
でも、迷宮内のものなら、時間経過で復活する。
資源としては使えなくても、宝石やらが出てくれば、かなりいい取引ができるだろう。
ただし、鑑定できる存在がいない。
ガルドにくっついているモグラ魔族の一団から、綺麗な石をもらったことがある。
その中のひとつふたつにあれ? と思って、実家に送って見てもらったら、宝石の原石だった。
ちなみにわたしはそっちではなく、ただの石のほうが気にいっている。
自然にできているのに、見た目が椎骨っぽくて面白いからだ。
「わかりました、喜んでお手伝いしますー」
「ありがとう」
とんとん拍子に話は進み、十日後に現地集合となった。
流石にガルド一人だとということで、あと二名ほど加わるらしい。
即席の攻略班というわけだ。
「ただいまー」
「お帰りなさい、セレさん」
住んでいる集落にもどると、アメリさんが出迎えてくれた。
ちょうど、洗濯物を豚系魔族と一緒にとりこんでいるところだったらしい。
アメリさん夫婦のおかげで、家事ができないわたしでも、ガルドと二人で生活できている。
「十日後くらいに、二人で出かけるので、留守をお願いしますー」
忘れないうちに言っておこうと声をかける。
旅支度も手伝ってもらわないとだし、留守の間、空気の入れ換えも頼みたい。
……あ、標本は見えないよう、布をかけておこう。
「お二人で? ご旅行ですね?」
旅行。
そうか、普通はそう考えるのか。
「いいえー。ちょっと迷宮までー」
「迷宮!?」
驚いたらしく、声が弾んだ。
手に持っていた洗濯物を、豚系魔族が背に乗せている籠に急いでしまう。
それから、わたしのほうに近づいた。
「危険ですよね? 大丈夫なんですか?」
視界を変えると、心配しているようだ。
「ガルドも一緒だから、問題ないですよー」
「ああ、向かう迷宮の魔物は大して強くないから、セレが怪我をすることはない」
きっぱりとガルドが断言したら、上がっていたアメリさんの肩の骨が落ちる。
戦闘に関しては本職のガルドが反対してないのだから、わざわざ確認は不要と思ったんだけど。
普通は気にするべきだったのかな。
「まだ日はあるので、明日以降にでも、荷造り手伝ってくださいー」
今からアメリさん夫婦は夕食をつくってくれる。
だから、わたしの都合を頼むわけにはいかない。急ぐものじゃないし。
わかりました! と勢いよくうなずいてくれたので、安心する。
「戦うところって、近くで見られるの?」
自宅でアメリさんのごはんを食べながら、問いかける。
からん、と軽い骨の音。
「あそこの迷宮は一度に出る数も少ないし、殲滅すると数日は沸かないから、少し後ろからならかまわねぇよ」
「じゃあ、骨が観察できるね」
どんな魔物がいるんだろう、楽しみだ。
動く魔物の骨が見られるなら、その分、頑張って素材探しもしなくちゃ。
──それになにより。
「ガルドの戦う姿を見るの、楽しみ」
練習試合じゃない、本気の戦い。
きっと、とても綺麗な骨の動きなんだろう。
あらかじめ近づいていい距離を確認して、ぎりぎりで見させてもらおう。
わくわくしていると、ガルドの骨がぎしっと鳴った。
一応、新婚です




