第4話 頑張りまーす
「あ、ああ、わが息子の言う通りじゃ……! 少しの犠牲でたくさんの者を救えるのなら聖女ナナセも本望であろう!」
そう言った。言ったな?
「……」
魔王ちゃんと目が合う。背が高くてものすごい美形の魔王ちゃんがニィといい笑顔を向けてくれた。私の後ろでバタバタとご婦人が倒れる音がするが、死んだんじゃなくて魔王スマイル? にやられたんだと思う。魔王ちゃんかっこいいからね、レイの方が素敵だけど。
「それでいいな? ナナセよ」
魔王ちゃんが確認する。いいんじゃないかな……。
「いいみたい。魔王ちゃん」
はあ、ため息をつくしかない。
「ではもう一度封印されよう。さて、私の退屈を紛らわせてくれよ? お前たち」
魔王ちゃんの号令で、闇の魔物が生贄を捉える。私は、封印の準備を始めた。
「あ!」
「な!」
「なんで!」
「えっ」
「なぜじゃ!」
「5人でよいぞ、ナナセ。さあ 閉じよ」
「ありがとうね、魔王ちゃん。今度はゆっくり眠れるように優しくするから!」
「ハハハ、そうだな」
キン、キン、キン、高く澄んだ音がする。私の封印が展開し始めたたのだ。それにしても量が多すぎる。四角にはならないなあ……鈴木さんいくつ放置してたんだろう。
「は、離せ! なぜ私が!」
魔獣にくわえられ、ウィル王太子が魔王の足元に引き寄せられる。
「私は嫌よ! いや!ナナセさんにしなさい! ナナセさんに!」
鈴木さんが鬼みたいな形相で見ているけれど、どうしようもないわ。
「なぜ! なぜ! わしなのじゃ!」
おデブな教皇
「離せ! ワシは王なのだ!」
王様も
「わたくしは無関係ですわ!!」
王妃も。これで5人。魔王ちゃんが選んだ5人だ。
「ナナセが結界を作るのに、ナナセを連れて行ったら結界が作れぬではないか? おかしな者どもだ」
だよねー。なんで鈴木さんは私が魔王ちゃんの生贄になると思ったんだろう。不思議だ。
「閉じるよ、魔王ちゃん」
「ああ、生まれ変わったら私も次は聖女にでもしてもらうか?」
「強そうな聖女だね!」
仲が良いからかな? 魔王ちゃん、意外といい奴なんだよね。残虐趣味がなかったら……だけど。なれても悪役令嬢だと思うけどね!
「誰か悪役令嬢だ」
おっと! 思考が読まれた! でも魔王ちゃんは笑って結界の中にいてくれた。あまりに瘴気や魔物の量が多かったので、巨大な六角柱になってしまった。
キィィィン!
甲高くて澄んだきれいな音がして、封印結界は完成した。
「げ」
黒い六角柱の中ににやにや笑う魔王ちゃんと、一緒に閉じ込められた5人が見える。うわ、趣味悪いオブジェが王の間にできちゃった!
声は聞こえないけれど、中でバタバタと手足を動かして出ようとしているみたい。教皇と鈴木さんがうっすら違う色が見えるから、頑張って中の魔物や瘴気を浄化してるんだと思う。……全然減ってないけど。
「ふう……」
ひとまず息をつくけれど
「ナナセ様! お疲れの所申し訳ないのですがお助け下さいっ神殿が! 大量に保管してあった封印がすべて壊れて瘴気が街を襲っております」
「だよねぇ……」
「ナナセ様! ナナセ様が作ってくださった王城の結界も消え、街の城壁の結界も消え! 瘴気が流れ込んでおります!」
「だよねえ……」
がっくり項垂れる私に、レイが私の手を握ってくれる。
「やるか! ナナセ。我が婚約者殿!」
この励ましているようで無茶ぶりしてくる笑顔が、困ったことに私は好きなんだよね。
「あら? 私は婚約破棄もされたのでは?」
ん? と不思議そうな顔をしたレイセアは
「ナナセ、知らないのか? 婚約破棄は一人じゃ出来なんだぞ?」
あれ?
「聖女もクビになったんじゃ?」
「ナナセ様は聖女様でございますよ? 私が保証いたします」
神様に祈ってくれた神官さんがニコニコ笑っている。あら? この人徳が上がったね? 神官から一気に……うん、次期教皇はこの人だわ。ま、神様に祈りが通じたんだからそれくらい当たり前か。
「しょうがないなーなんとかしますか!」
私はレイセアの手を取った。
「まずは王城の結界を頼むね、ナナセ」
「ええ、まかせてよ」
私は、笑顔で力を集める。
さあ、この世界のために聖女ナナセ、頑張りまーす!
終




