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01-04.隠し要素

「ふむふむ。"げぇむ"とな。それが歴史書のような役割を果たしておるのじゃな」


 あれ? 魔王様? ゲームの概念を知らないの? あれだけ色々知っているのに? この城には電気だって通っているのに? そもそもゲームってデジタルゲームに限った単語じゃないわよ? そんな事ある? 何故か一般常識だって完璧なのよ? もしかして意図的に削られていた? 私やらかした? 伝えちゃいけない知識だった?



「余計ナ事言ウナ」


 え?



「なんじゃと?」


「ナンデモアリマセン」


「吐け」


「ナニモアリマセン」


「水に沈めるぞ」


「亡キ前魔王サマノ言イツケデス」


「母上じゃと? どういう事じゃ」


「話セマセン」


「……真なのじゃな?」


「誓ッテ」


「ふむ……」


 傍若無人な魔王様も、流石に亡き母の遺言と聞かされては詰めきれないのかしら。



「にっ♪」


 まあ素敵な笑顔。


 魔王様は勢いよく立ち上がって駆け出した。



「待ッテクダサイ」


「待つかバカ者!」


 また一体、メイドゴーレムが蒸発した。



「ユズキ! ボサっとするでない!」


 え? 私も行くの?



「「「オ考エ直シヲ!」」」


「ええい! 邪魔じゃ!!」


 ボーリングのピンのように吹き飛ばされるゴーレム達。



「「「「「御母上ノ遺言デス!!」」」」」


「しつこいぞ!!」


 どんだけいるのさ。



「「「「「「「死者ノ尊厳ヲ何ト心得ルデス」」」」」」」


「だからどうしたぁ!!」


 なにこれ。



「「「「「「「「「御母上ガ泣クデス!」」」」」」」」」


「あの母上が泣くものかぁ!!」


 メイドゴーレム達がウジャウジャと集っている。部屋の一つを守るように立ち塞がっている。



「「「「「「「「「「「ドウカ!!」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「ドウカ!!」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「ドウカ!!」」」」」」」」」」」

「「「「「「「「「「「ゴ再考ヲ!」」」」」」」」」」」


「邪ぁー魔じゃぁ!!!!!」


 メイドゴーレム達は纏めて消し飛ばされた。


 この魔王様いくらなんでも強すぎない? あのメイドゴーレム達だって一体一体がとんでもなく強いのよ? なにせラスダンに登場する魔物達だもの。本来なら勇者パーティーだって苦戦する凶悪な耐久性を誇る強敵だ。単純に硬くて痛いのだ。それが複数で寄って集ってボコボコにしてくる。なんなら中ボス達より厄介だとネタにされていたくらいだ。


 彼女らに行く手を阻まれて泣く泣く撤退した勇者達も数知れず。なんならフルボッコにされてそのまま敗北した者達も決して少なくはあるまい。



 それがどうした事だろう。まるで紙切れのように貫かれ、焼き尽くされていく。魔王様が強いったって流石にそこまでじゃない筈だ。


 少なくともゲーム上の数値は一撃で倒せるものではなかった。魔王様が通常攻撃で出せるダメージからゴーレムの耐久値を引いた値は、ゴーレムの体力値よりも低いのだ。システム上絶対に一撃では倒せない。筈だった。例外を除けば。



 まさか魔王様、通常攻撃感覚で必殺技を放ってる? あれもエフェクトはビームだった。けれどもっとデカいやつだ。画面全部を埋め尽くす程に派手なやつだ。それを制御しているの? 威力を下げて普段使い用に落とし込んでる?


 あり得る……。魔力エムピー消費が激しいのはあくまで必殺技として放つからだ。謁見の間を覆い尽くす程の極太ビームは連射出来ずとも、指先から放つだけなら大した消費ではあるまい。なんなら極太版だって一戦闘中に数発放ってくるのだ。あの細さなら消費なんて有って無いようなものだろう。



 なんてインチキだ。致命的なバグだ。このゲームの開発者達は魔王を賢く作りすぎてしまったのだ。こんなの勝てる筈がない。道理でチュートリアルが突破出来なかったわけだ。


 私が運動音痴だからなんて問題ではなかった。そもそも光線を避けられる人間なんて存在しないだろう。的確に急所を撃ち抜く使い放題の必殺技とかどうしろってんだ。


 原作のレトロゲームならチャージの為に一ターンの猶予があった。その隙に仲間の僧侶が結界を張ってダメージを軽減してくれた。


 けれどこの魔王様がそんな甘い攻撃をする筈がない。勇者たちが万全の状態で挑んだとしても勝負にすらならなかったかもしれない。


 もしかしたら魔王様だけではないのかも。ゴーレム達だってあんな数で集まられたらどうにもならない。勇者の仲間達が一緒じゃなかったのは既に倒されていたからなのかもしれない。


 助っ人師匠もゴーレム達に捕まって引きずり出されてしまったのかもしれない。本来ならギリギリまで姿を隠していた筈だ。ソロで魔王に近づくなんて土台無理な話だったのだ。


 当然それは勇者も同じこと。プレイヤーが操ろうと関係は無い。ゲームとして破綻している。そもそも魔王様の力はビームだけじゃない。当然他にも技はあるし、レベルドレインだって隠し持っている。例に漏れず第二、第三形態だって。


 こんなの人間たちが勝てる筈がない。この世界の人類はお終いだ。どうしてこんなゲームを作った。それともまさか、今私がやっていることこそ正しい攻略法なのかしら?


 リメイク版はギャルゲーだった? アレンジったって限度があるだろう。ゲームジャンルすら偽るのはサプライズで済む話じゃない。炎上間違いなしだ。けどあり得る。そう考えれば数々の違和感にだって説明が付く。きっと魔が差したのだ。あまりにも可愛い魔王様を作ってしまった結果、開発者達の熱意が暴走してしまったのだ。間違いあるまい。きっとこの部屋が何よりの証拠だ。



「なんじゃこれは」


 亡き前魔王様の部屋は私のものともよく似ていた。パソコンと数々のレトロゲーム機。山と積まれた数え切れない程のゲームソフト。権利関係はどうなっているのだろう。どう考えても違法だろう。パッケージがそのままだ。例え中身が空だとしてもダメなやつだ。



「御母上ガ生前嗜マレテイタモノデスジャ」


 何故か老婆風のゴーレムメイドが近づいてきた。



「説明しろ、ばあや」


「コレガ"ゲエム"デスジャ」


「何故我に黙っていた」


「親心デスジャ。姫様ニハ立派ナ魔王様ニナッテ頂キタカッタノデスジャ」


 なにその追加設定。絶対開発者の趣味でしょ。お母様関係ないでしょ。



「母上……」


 え? 今の感動する所だった? なんで魔王様涙ぐんでるの?



「ユズキ。我に"げぇむ"のやり方を教えるのじゃ」


 え? ゲームの中でゲームするの? 所謂ミニゲーム要素ってこと? これ動くのかしら? もし全部本物なら私としてはお宝の山なんだけど? もうこれだけでクソゲーって言葉を撤回しても……いやいや。ダメでしょ普通に。何をどう考えても違法な要素だし。善良な市民としては海賊版に手を染めるなんて恥ずべき行為だ。どう考えてもこれら全ての権利関係をクリアしている筈は無い。見た所とっくに存在しないメーカーのゲームだって数多く存在している。これは違法な隠し要素だ。事実関係を確認した上で当局に通報すべきだ。その前にゲーム世界から出られないんだけれども。



「どうしたユズキ」


「……死者の部屋を漁るなんて出来ないわ。例え魔王様の命であってもよ」


「お前達人間は魔物の亡骸を武具に変え、その武具を以って魔物を討つ、この世の何より残酷な存在であろうが」


「……そうね。否定はしないわ。魔王様が討たれていれば間違いなく勇者はこの部屋だって踏み荒らしていたでしょう」


「お主は違うと言うのか?」


「……いいえ。私だってきっと同じ事をしたと思うわ」


「ならば気にすることはあるまい」


「それでもよ。人間は矛盾した生き物なの。近しい人の尊厳を何より優先するものなのよ」


「近しい? じゃと?」


「私は魔王様の側近だもの。魔王様のお母様の事だって尊重したいと思うわ。そしてこれは私だけじゃないでしょう? きっとあの子達だって同じ気持ちなのよ」


「……まったく。どいつもこいつも我の言う事なんぞ聞きゃあせん」


 魔王様は歩き出した。部屋の外へと。



「おい。何をボサッとしておる。お主にはまだまだ聞きたい事があるのじゃ」


「はい。魔王様」

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