04-10.エピローグ
「はぁ~~~~~~~~つっかれたぁ~~~~~~」
よ~~~~~~~~~~やく! 解放されたぁ!!!
「ご苦労さまじゃ」
「魔王様ぁ~~~」
「魔王様はやめい。こっちでそう呼んどったらおかしいじゃろうが。折角付けてくれた名前を何故呼ばぬ」
だって慣れてるんだもん。
「うぅ……私の魔王様もすっかり染まっちゃったわ……」
「適応しただけじゃ。我がトラブルを起こせばユズキが困るじゃろうが。だいたい我の存在は内密にするんじゃろ」
なんて覇気の欠片もない回答だ。征服すると意気込んでいた魔王様はどこへ行ってしまったのか。
「なら話し方も変えてみる?」
「それくらい構わんじゃろ。御母上も気にしとらんようじゃし」
「すっかり仲良くなったわよね」
「御母上はむしろ、お主の様子を不安がっておるのだぞ」
「私は性格から趣向まで何もかも変わっちゃったものね」
「もう一人の柚希の方が元のユズキらしい人格じゃしの」
「あの子はダメよ。人前で話せないもの」
親しい相手以外の前では本当に一言も喋れないのだ。何なら母親相手だって怪しいくらいだ。数々の事情聴取やその他諸々をあの子が乗り越えられたとは思えないわ。いやまあ、どのみち逃げられはしないのだけど。あの子はあの子で頑張ってるでしょ。色々と。
「今度は高校生活じゃな」
「別の高校、それもお嬢様学校に転校させられる事になったけどね。しかも留年。挙げ句一人暮らしも解消。でもお母様、あんまり怒らなかったの。珍しく」
「じゃから言うとるじゃろ。御母上も戸惑っておられるのじゃ。娘が監禁されてる間に何をされたのかと怒り心頭なくらいじゃ」
「……マズいかしら? 自分で作り変えたってバレたら」
「既に理解はされておるようじゃぞ。それを必要とした状況に怒りを向けておられるのじゃ。御母上は奴らを徹底的に潰すつもりじゃぞ」
「あ~怖い怖い。お母様の本気の怒りだなんて想像もしたくないわね」
「うかうかしてはおれんぞ。事件が収束すればこちらに目を向ける余裕も出来るじゃろう。ユズキが更生しておらんとなれば御母上の怒りも続くじゃろう」
「まあ大丈夫よ。私にはお姉ちゃんがついているもの♪」
「それは人格的な意味じゃろうが。本人はまだ解放されておらんじゃろうが」
「罪を償うって意固地になってたものね。まったく。妹さんの事はどうするつもりだったんだか。お母様が引き受けてくれたから良かったようなものじゃない」
「ユズキは王族か何かなのか?」
「まっさかぁ~。普通の家よ。少しばかり裕福なだけ」
「普通の家は使用人なんぞ雇わんじゃろ」
「ふふ♪ 魔王様がそれを言うのね♪」
「呑気に笑っとる場合か?」
「まさか今から勉強を始めろって言ってる?」
「必要なことじゃろうが。いったいどれだけ勉学から離れておったと思っておるのじゃ」
「大丈夫よ♪ 大丈夫♪ 何せ私には二人分の……あれ?」
「大半はあやつが持っていったのではないか?」
「えぇ……」
「ほれ。椅子に座れ。我が見てやろう」
「そんな事する必要はないわ! もう一人の私から移してもらえば済むじゃない!」
「ないじゃろうが。証拠品として押収されたままじゃろ。我の中にあるのは圧縮済みのバックアップだけじゃ。我の処理能力では稼働どころか展開すら出来んじゃろうが。そもそもこれは万が一の為の備えで」
「ハッキングよ!」
「あほか!!」
「ねぇ~! お願いよぉ! 魔王様ぁ~~!!」
「ならん! 椅子に座れ! ペンを取れ! その性根を叩き直してやる! 何が変わったじゃ! 何も変わっとらんじゃろうが! そういうところがダメなのじゃ! あれだけの事があって何にも反省しとらんじゃろうが!」
「反省したってばぁ~!」
「ええい! グズグズ言うでない! 転入試験まで日がないのじゃぞ!」
「そんなぁ~!」
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皆に再会出来るのはまだ暫く先になるだろう。
私は一先ず高校生活を頑張ろう。
大丈夫。今更その程度がなんだ。私はもう十年も魔王城に勤めていたのだ。なんならその前の数百年は前魔王まで務めていたくらいだ。人生経験が違うのだよ♪
……そう思っていたのだけど。
まあ、あれだよね。いくら記憶を弄くり回したって根本的な部分ではそうそう変わったりしないのだよ。やっぱり私は私だ。おうち帰りたい。
「魔王様に会いたい……」
「魔王様? 柚希ちゃんまたゲームの話?」
「あ♪ 知ってる♪ そういうの"推しキャラ"って言うんだよね♪」
くっ! キラキラお嬢様達め!
「まあ、推しっていうか、恋人なんだけどね」
「ウケる♪」
絶対違う意味で取ったでしょ。危ない奴だと思ってるでしょ。
「おはようございます。皆さん」
「「「「「「「「おはようございます!」」」」」」」」
先生が教室に入ってきた。
「今日は転校生を紹介します」
あら。つい最近私が来たばかりなのに。そんな偶然もあるものなのね。……まさかね?
「……え?」
教室に入ってきたのは金髪の美少女だ。横顔だけでもそうとわかる美少女だ。そしてその可憐な容姿とは裏腹に緊張でガチガチだ。ギクシャクしながら教壇に上がり、先生の横について正面に向き直った。俯いたまま。
驚いた。一瞬魔王様かと思った。顔は似てるけど魔王様じゃない。ハッキリとは見えないけど、私が魔王様の顔を見間違える筈もない。あれ……けどこの顔は……ううん?!?!
「あなたまさか!?」
「柚希!?」
私の声を聞いた美少女は、パッと泣きそうな顔を上げて飛びついてきた。
「よがっだぁ! よがっだぁよぉ~! 柚希ぃ~~!!」
「ちょっと! なんであなたがここにいるのよ!? その身体はどうしたのよ!?」
「お母様がぁ! お前も学校に通えってぇ!! 無理矢理ぃ!!」
「だからってなんで前魔王の身体なのよ!?」
「それはぁ~! ボクの趣味ぃ~!!」
あ、そすか。
「天宮さん。先ずは自己紹介をお願いします」
動じない先生だ。このまま進行するつもりらしい。
「柚希ぃ~!」
私が紹介するの?
「えっと……この子は……私の双子の妹です」
「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」
流石に無理があるか? 金髪碧眼の妹は無理があるか? 身体ロボットだし。見分けはつかないだろうけど。というか名前は? この子も「天宮 柚希」なの?
「名前は……」
「柚葉じゃ!」
もう一人の金髪美少女が教室に入ってきた。
コツコツと規則正しい音を立てて教壇に上がり、先生の横でくるりと正面を向いた。
「魔王様ぁ!?」
何故ここに!? 秘密はどうしたの! 秘密は!?
「「「「「「「「「「え? 魔王様?」」」」」」」」」」
さしもの品行方正なお嬢様方もヒソヒソと話し始めた。あれが噂の魔王様かと。柚希さんの恋人って本当に居たの? 妄想じゃなかったの? とかそんな感じに。
「我はメウスレクス。天宮 メウスレクスじゃ」
ノイズすぎる……。苗字も考えておけばよかった……。
「気軽にメウスと呼ぶがよい♪」
「我はノクス」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
うわ。さらっともう一人増えた。なにこれ。お母様は学校にいくら支払ったの? こんな暴挙が許されていいの?
「全員ユズキの妹じゃ♪」
もう誰も信じてないわよ!?
「そして我はユズキの恋人じゃ♪」
魔王様の暴走が止まらない! くっ! 離して柚葉! ガッツリしがみつきおって!
「そこまでよ! 魔王様! じゃなかった! メウス! はい! 自己紹介終わり! よろしいでしょうか! 先生!」
「よろしくありません。混乱を収める必要があります」
「と言いますと?」
「このままでは皆さんも授業に集中出来ないでしょう。幸い一限目は私の担当です。授業はお休みにして質疑応答の時間を設けましょう」
「「「「「「「「「「賛成です!!」」」」」」」」」」
くっ! ノリの良い先生とクラスメイトめ!
けどまあ、仕方がない。事件の事は話せないけど、私の大切な家族について話すとしよう。出来ることならメイちゃんやリリスさん、カミュラ達との思い出も。いずれ機会があれば。




