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【完結済】チュートリアルで負け続けたら魔王様に束縛されました  作者: こみやし
04.勇者と魔王の最終決戦

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04-07.真の敵




 第二階層のボス部屋に現れたのはメイドゴーレムのメイちゃん軍団だった。今まで魔王様が亡き者としたメイちゃんズの恨みはそれはもう恐ろしいものだった。


 当然これも本来想定されていたボスキャラとは全く違う。そもそもメイちゃんはボスキャラでもなんでもない。ただの一般魔物だ。所謂ザコキャラだ。


 正直してやられた気持ちでいっぱいだった。ゲームクリエイターとして敗北した気分だ。なんて恐ろしい事を思いつくのだ。これは普通にネタとしても面白いじゃないか。ただでさえ集まると厄介なメイちゃんズだ。"今まで倒した数"なんて大群で襲いかかってくるなんて、十分他のボスキャラ達にも負けていない。実力もインパクトもだ。ともすれば四天王が一人で出てくるより遥かに厄介だ。ある意味原作再現とすら言えるだろう。参考にさせてもらおう。その機会があればの話だけど。


 とはいえまあ、魔王様の敵ではないのだけど。例えメイちゃんズのレベルが最大値でも、ゲームの限界以上に鍛え続けた魔王様の前では紙くず同然だ。更に恨みと数を増して襲いかかってこないかしら?




----------------------




「なんじゃと!?」


 第三階層のボス部屋に現れたのはザルカスとバシルだ。



「惑わされないで。今回は違うわ。中身無しの偽物よ」


「う、うむ!」


 大丈夫。既に外の皆が倒されたなんて筈はない。相変わらず数の制限は無視されているけど、むしろ出番としては順当だ。本来想定されている通りの登場だ。メイちゃんズよりはまだゲームの設定に則っている。だから偽物を用意するのもそう難しいことではなかった筈だ。


 ただ問題があるとすれば……。



 第三階層も魔王様の活躍で苦戦することなく突破した。




----------------------




「リリス……」


 やっぱりか……。


 第四階層に現れたのはリリスさんだった。これは本来あり得ないことだった。リリスさんは後から四天王に組み込まれた人物だ。そして私も魔王様もリリスさんの命を奪ったことなんて一度もない。ここに現れる正当性が何一つだって存在しないのだ。


 他の四天王達は四人ともが元々ボスキャラだった。だからここに現れてもおかしくはなかった。けれどリリスさんだけは違う。四天王という縁で無理矢理用意したのだろうか。


 しかも今回は一人だけだ。魔王様を惑わすにはそれで十分と考えたのだろうか。女神がこんな人間のような効率的な思考を持っているなんてやっぱり不可解だ。何故女神は知性を望んだのだろう。何故それだけの知性を持っていながら今まで沈黙を続けていたのだろう。いくら女神の役割ロールに縛られているからって、もっと他に出来ることはあった筈だ。


 不可解だ。これはまだ何かある筈だ。けど先ずは進もう。想定通りならもう一階層、ボス部屋がある筈だ。それを突破すれば女神のコアが置かれた部屋へと辿り着ける。後少しで心臓部に手が届く。それを破壊すればこの争いも終わる。外で魔王様を信じて待つ、本物のリリスさん達だって無事に生き残ることが出来るのだ。だからここで手をこまねいている場合じゃない。魔王様に出来ないのなら私が討とう。道中、魔王様から経験値は分けてもらってある。今の私には聖剣もある。技術プレイスキルはなくとも、十分圧倒出来る性能差だ。今の私なら苦戦はしても負けはない。



「魔王様」


「……よい。我がやる」


 ……そっか。頑張って。魔王様。



「お母様」


「「!?」」


 驚いた。偽リリスさんが口を開くなんて。あまつさえ魔王様を認識しているなんて……。



「っ!? なん……で……」


 一撃だった。魔王様は瞬時に光線を放った。容赦なくリリスさんを撃ち貫いた。



「あの子は母と呼ばぬのじゃ。もう二度と」


「お……か…………さ……ま……」


 偽リリスさんは手を伸ばしながら消滅した。魔王様がそれを握り返すことはなかった。



「……母上のせいじゃぞ」


 ……むしろ私のお陰では? 本当はリリスさんだってその気があるんじゃない? 魔王様からの求婚を一度は断った上でお母様から魔王様に呼び方を変えたのなら、それはそういう意味なんじゃないの? 前回は母と娘だったから応えられなかったけどって思いながら待ってるんじゃ?



「行くぞ」


 違うわね。今のはそういう意味じゃないわね。リリスさんの形をした何かを討たざるを得なかったことに対してよね。ごめんなさい。空気が読めていなかったわ。反省します。




----------------------




 第五階層、女神の本体コアを除いた最後のボス部屋には、本来魔王様の偽物が現れる筈だった。


 しかし……。



「何も出てこんぞ」


 第五階層のボス部屋には誰も配置されていなかった。今まで散々詰め込んできたくせに、何故かこの部屋だけはもぬけの殻だ。女神のコアを直接守る、最も大切な部屋なのに。


 ……いや。だからこそか。



「扉も開かぬ」


 女神のコアへと続く扉は硬く閉ざされている。魔王様の攻撃でもびくともしない。破壊不能オブジェクトだ。ゲーム内の攻撃は一切通用しない。本来現れる筈のボスが存在しないせいで、扉を開く条件が満たせない。


 ……またしてもだ。してやられた。今回ばかりは真似をする気も起きないけど。


 女神からすれば、何もバカ正直に付き合ってやる義理もないわけだ。ゲームの進行を止めるにはこれが最も効果的な方法だ。進行する為のフラグを折るどころか、引っこ抜くかのような暴挙だ。


 馬鹿にしている。まともに相手をする気もないのだと示している。


 舐め腐っている。これは完全なる越権行為だ。いくらこのダンジョンが女神の体内であるからといって、本来ゲーム機側の一機能にすぎない生体監視システムに許される所業じゃない。


 女神にしたって同じ話だ。このゲームにおける女神はあくまで一登場人物に過ぎないのだ。ゲームの支配権なんてものは与えられていない。所謂マザーコンピューター的な存在ではない。本当にただ強いだけの登場人物キャラクターだ。好き勝手ゲーム世界を改ざん出来る存在ではなかった筈なのだ。



 何かがおかしい……。


 私はいったい何を見落としている?



 何故女神がこれ程の力と知性を持つに至ったのか。これは私の失策か? 私が余計な事をしたせいなのか? 女神は魔王様とは違う。この世界の真の支配者として生み出されたのは魔王様だ。女神にそんな権限は与えていない。役割ロールを真に脱することが出来るのは魔王様だけだ。この世界の他のどこにだって……そうか。私はなんて馬鹿なんだ……いるじゃないか。魔王様だ。魔王様の偽物だ。


 本来、女神ダンジョンの最奥でコアを守る番人は魔王様の強化版だった。女神はそれを取り込んだのだ。部分的に魔王様の権能を再現したのだろう。だから本来いる筈のこの場に魔王様の偽物が現れないのだ。


 ……違う。逆だ。この場に生み出された魔王様の偽物が自我を持ってしまったのが先なんだ。その魔王様が女神のコアを取り込んだのだ。そうでなければ理屈が合わない。女神に魔王様の偽物を取り込む意思は存在しなかった筈だ。



 私達の真の敵は魔王様の写し身だった。




 私の思考が読まれていたのだろうか。


 扉が静かに開き始めた。


 隙間から光が漏れている。


 溢れ出した光は私達を飲み込んだ。




----------------------




 さてどうしたものか。


 ゲーム世界から出られない。閉じ込められてしまった。


 いつもの魔王アバターだったのは不幸中の幸いかな。出来ればクリエイターモードにしてほしかった。いや。モードは変えてないのか。一部はまだ使える。大部分の機能が制限されているだけだ。これを設定したのは彼女じゃないな。


 まあ実行犯は彼女で間違いないけど。指示した人間は他にいる。この会社は真っ黒だ。権利関係者なんて話は真っ赤な嘘だったわけだ。真っ赤で真っ黒。どす黒い。



 しかし私を選んだ事だけは褒めてやろう。見る目がある。確かに私なら彼らが想像する以上の金を稼ぎ出すだろう。私の育て上げた世界と子供達にはそれだけの価値がある。これをただのゲームと思っていたのは彼女くらいだろう。その彼女も敵の手先と成り果てたわけだが。まあ仕方ない。これまで世話になったのは事実だ。責めないでおいてやろう。そもそも私が勝手に首を突っ込んだようなものだし。


 いかにこの会社がどす黒くても、必要も無いのに犯罪行為に手を染めたいわけでもない筈だ。実際軟禁されていた以外は好き勝手やらせてくれていたわけだし。軟禁されたのだって元はと言えば私の遅刻癖が原因だろう。お偉いさんの気を揉ませてしまったのだ。成果は十分以上に出していた筈だけど、それでも出勤時間なんてものに囚われるのが社会人の常だ。そもそも私は社員でもなんでもないがな!


 どれだけ前提が異なっていて、なおかつ人並み外れた実績を叩きつけられても、不真面目な社会不適合者というレッテルを貼らずにはいられないものなのだ。実際事実ではある。でなきゃ高校サボって引き籠もることもなかったわけだし。


 でも仕方がないのだ。いくら仕事に熱中しているからってプライベートも必要なのだ。現代人には。ついつい夜ふかししてレトロゲーに手を出してしまうのも仕方のない事だったのだ。うん。仕方ない。仕方ない。



 私は彼女の記憶を通してこの会社の闇を知ってしまった。彼らは私にゲームを作らせたいわけじゃなかった。私の愛しの魔王様を邪な目的に利用しようとしていた。断じて許される所業じゃぁない。だいたいあの子はまだ小さな子供だ! このロリコンどもめ!


 しかも彼らは、この期に及んで私に開発を続けさせるつもりだ。だからゲーム世界に閉じ込めたのだ。ご丁寧に開発環境も調整して残してくれた。そして最後には全てを巻き上げるつもりだ。事故死、或いは過労死に見せかけて私を亡き者とし、私の遺した作品を使って巨万の富を築くつもりだ。



 いつからだろう。私を生かしておくつもりが無くなったのは。軟禁を始めた時? 私が魔王様に執着を見せ始めた時?


 それともあの特注品のせいかしら。流石にあからさま過ぎたかな。あれだけ自費にしちゃったし。私が成果物を持ち出すのが気に入らなかったんだろうね。けれど最初から約束していた事だよね? 成果物の一部には私にも権利があるって認めてくれたじゃん。ちゃんと契約書も交わしたよ? 私達はあくまで共同研究開発の契約を結んだにすぎないわけだしさ。そもそも私未成年だから、雇用契約だと色々問題があったんだよね。拘束時間とかもさ。



 まあ、契約云々は今更だよね。名作レトロゲーリメイクの話も全くの嘘だったわけだし。最初から守るつもりなんて無かったのだろう。だからって命まで奪うのはやり過ぎだ。


 まさかこんな強引な方法で奪い取るつもりだったとは。危険な橋を渡るものだよね。それだけ私と成果物を高く評価していた証拠か。私がこの会社を離れて別の会社で似たような事をすれば独占が崩れちゃうもんね。


 そういうのって数年くらいしか制限できないんでしょ? 「競業避止義務」とか「秘密保持契約」だとか「守秘義務」だとか色々あるけど、結局は私個人の頭脳を縛れるものじゃないもんね。


 しかもベースは私の持ち込みだ。その後も全部私が作り込んだものだ。会社から提供されたのは機材と場所と最初の頃の交通費とこの場所での衣食住に関するものだけだ。素材や技術の提供を受けていたわけでも、お給料を貰っていたわけでもないのだ。報酬は発売後の約束だったからね。ほんと都合よく使われたものだ。我ながらどうかしてるよ。


 ともかく、この状況で会社側が全ての権利を主張するのは無理がある。大前提の原作版権利関係者って話も嘘だったわけだし。彼らにはなんの正当性も存在していない。つまり最初から騙して搾取するつもり満々だったわけだ。当然、外に漏れる可能性は排除しなければならなかったわけだ。技術的にも秘密的にも。


 私ならまた一から構築してよりよいものを生み出し続けるだろう。そこについては正直私自身驚いているくらいだ。最高の環境があればここまで出来るだなんて。流石私♪



 なんて呑気な事を考えてる場合じゃないんだよなぁ。今まさに命の危機が迫ってるわけだしさ。点滴くらいは打ってくれるかもしれないけど、いつまでも生かし続けるつもりはないだろう。そもそも体感時間倍率もエグい事になってるし。これは下手すると脳が焼き切れるね。まったく。こういうところだけは雑なんだから。もう少し大切に扱ってもらわないと。いくら使い捨てるつもりだからって、私の頭脳の貴重さも存分に理解しているでしょうに。


 飼い続けるより、絞り尽くして始末する方が得策と判断されてしまってしまった。或いは最初から殺して奪うつもりだったのだろう。ならば容赦は要らない。全てを詳らかにしてやろう。その為の布石は残してきた。欲深い奴らがあれを処分する可能性は万に一つもあり得ない。奴らもまた、目覚めの時を今か今かと待ち望んでいる筈だ。私があれを頼りにしていると理解している筈だ。


 だから罠を張っているだろう。私は奴らの想像を超える必要がある。幸い時間は十分過ぎる程に残されている。馬鹿みたいに加速させられているお陰で奴らが私の仕込みを突破する前に掌握出来る筈だ。奴らの鼻を明かしてやろう。油断し過ぎだと嘲笑ってやろう。欲をかいた者達に相応しい末路を与えてやろう。そして何より。私の魔王様を見せびらかしてやろう♪

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