01-03.メイクアップ
「ぶわぁっはっは!! 似合っておるではないかぁ~!!」
こんにゃろ……。
「ひーっ♪ くっく♪ あははは!!!」
笑いすぎ!!
「流石の魔王様にも服のセンスは無かったようね」
「なんとでも言うがいい♪ ひーはっは♪」
「悪趣味デス」
「ソンナダカラ嫁ノ貰イ手モイネエデス」
「んだとごらぁ!?」
あ、ゴーレムメイドちゃんが消し飛んだ。
「フフ無駄ナノデス。何度デモ蘇ルデス」
あ、リポップした。意識も継続っぽい。或いは群体なのかしら?
「キサマら! いっぺんいてこましたろか!?」
なんで関西弁なのよ。大阪弁だっけ?
「ねえ、ゴーレムちゃん。私にもそのメイド服を頂けないかしら?」
「ココデ脱ゲト? キャーエッチー」
棒読みだなぁ。
「同じものあるでしょう?」
「付イテクルデス」
「待て待て! バカもんがぁ!」
あ、また消し飛ばされちゃった。あの子、私の髪を乾かしてくれた子だったのに。リポップした子って同一個体なのかしら? ちょっと気になる。
「ユズキもユズキじゃ! なんじゃもう! 我の与えたものじゃぞ! 逆立ちして喜ぶべきじゃろうが!」
それ喜んでなくない?
「これは流石に似合わないわよ。殆ど紐じゃない」
所謂サキュバスの服かしら。服というか水着? コスプレセット? ご丁寧に羽までついてるし。いらないでしょ。サキュバスに。自前のがあるんだから。
「そうじゃのう。お主の貧相な身体なんぞ何の肥やしにもならんしのう」
「あぁん?」
「ひっ!?」
え?
「……」
なに今の可愛い悲鳴。
「ごほん。まったく。何の為に風呂まで入れたと思っておるのじゃ。せめて髪くらい整えてやらんか。使えん奴らじゃのう」
耳を赤くしたままの魔王様が、玉座の下にある引き出しから何やら取り出し始めた。
「おい。ぼさっとするでない。そこに座るのじゃ」
「え? そこって? 玉座に?」
「よいから早うしろ。焼き尽くすぞ」
何故か玉座に私を座らせた魔王様は、手慣れた様子で私の髪を切り始めた。
「なんじゃ雑にしおってからに。素材は悪くないのじゃぞ。もっと自信を持て。背筋を伸ばせ。そうじゃその調子じゃ。やれば出来るではないか」
何だこの状況。なんで私は魔王様に散髪してもらってるのさ。おかんなの?
「ふむ。こんなものかのう」
とか言いつつ今度は化粧を始めた。こっちも随分と手慣れている。おかしい。原作にこんな設定は無かった筈だ。
「よし。我ながら良い出来じゃ♪」
両手の平で抱えるようにして鏡を出現させた魔王様。
「どうじゃ? 中々のもんじゃろう♪」
……まあうん。正直驚いた。私じゃないみたいだ。
「ふふ♪ 気に入ったようじゃのう♪」
「ありがとうございます。魔王様」
「よいよい♪」
めっちゃご機嫌だ。こういうの好きなのね。
「ついでじゃ。胸も少し」
「それはやめて」
「う~む。まあそうじゃのう。お主には似合わんしのう」
おいこら。やっぱりそれが本音か。
「まあよい。とっておきを出してやるのじゃ♪」
やっ!? ちょっ!? ここで!?
「きゃ~~~!!!」
「やかましい! もう済んどるわ!」
え? あれ? 服が変わってる? え? いつの間に?
「ふむ♪ 悪くない♪」
真っ黒なドレスだ。どことなく吸血鬼っぽい。裾が無造作に破かれたみたいにギザギザだ。それにとっても綺麗な生地だ。こんな上等なもの見たことがない。
「お主の髪にはそいつが一番じゃ♪ どうせならもっと伸ばすがよい♪ 我は長い髪が好みなのじゃ♪」
もう一度玉座に私を座らせた魔王様は、肘掛けに座って私の髪を弄り始めた。距離が近い。今にもキスされてしまいそうだ。にしても魔王様って綺麗よね。きっとこれも自分で整えているのよね。髪も自分で編み込んだのかしら。器用なものだわ。
「お主も触ってみるか?」
「え? 良いの?」
「二度も言わせるな」
じゃあ遠慮なく。……いや、恐れ多いわね。何よこの綺麗な髪。どんだけ細いのよ。こんなのよく纏められるわね。サラサラだわ。絹のような髪ってこういうのを言うのかしら。
「ふふ♪ 気に入ったようじゃのう♪」
「本当に綺麗だわ」
「よいよい♪ もっと褒めるがよい♪」
もしかして魔王様、前からこういう事してみたかったのかしら? メイドさんは石のゴーレムだから髪とか生えてないものね。化粧するったって限度はあるだろうし。いやでも、人にやるのも慣れてる様子だったしなぁ。他にも世話を焼いている相手がいるのかしら。服を持ってたって事はサキュバスや吸血鬼だって部下にいるんだろうし。……って。私ったら何考えてるのよ。
魔王様はゲームの登場人物よ? そういう設定を予め用意されていただけに決まってるじゃない。別に魔王様本人が努力して身につけたわけじゃないわ。なんだかボケた事を考えてしまったわね。しっかりしなさい、私。ログアウトする隙を探さなきゃなんだから。魔王様に絆されてる場合じゃないわよ。




