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【完結済】チュートリアルで負け続けたら魔王様に束縛されました  作者: こみやし
04.勇者と魔王の最終決戦

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04-05.最終決戦




 ソルヴァニールの身体が光の粒子になって解け始めた。


 彼の心臓には聖剣が突き刺さっている。


 接戦だった。


 ギリギリだった。


 魔王様の消耗が想定以上だ。


 このままではマズい。奴が来る。


 体勢を建て直さねば。




----------------------




 魔王様は竜と何事かを語らっている。これは時間稼ぎのつもりなのかもしれない。ソルヴァニールが踏みとどまっている限りは女神も現れない。悪くない作戦だ。なんならいっそ回復させるか? 流石にそれは悪手か。余計なアドリブだ。


 大丈夫。準備は済んでいる。今更慌てる必要は無い。多少の消耗がなんだ。その程度で私の魔王様が遅れを取る筈もない。魔王軍の屈強な戦士たちが足手まといになる筈もない。



 私は思考を続けよう。私は私に出来る事をしよう。ここまで本当に長かった。これが正真正銘最後の戦いだ。




----------------------




 女神の真の目的は世界シナリオの破綻を防ぐ事なんかじゃない。


 その真の目的は、私をこの世界に捕らえ続ける事だ。


 本来はこの世界の外に属する存在だった。かつての私はそれを引きずり出した。肉体を与え、ステータスを与え、倒すべき敵として定義した。それが私に出来る精一杯だった。




----------------------




 本来であれば私自身の手で倒すつもりだった。聖剣はその為に回収したものだった。私の大切な魔王様に戦ってもらう予定は無かった。魔王様は他に役目がある。女神との決着は自分一人でつけるつもりだった。


 けれど魔王様は気付いてくれた。私の代わりに立ち向かってくれた。私を愛し、私の望みを叶えてくれようとした。


 私がそう生み出したからというだけでなく、自らの意思で私の意志を継いでくれた。この国と民を育て上げてくれた。


 私にはそれらを守る責務がある。魔王様が私の為に育て上げてくれた全てを存続させる責任がある。




----------------------




 女神を倒せばこの世界は停止する。


 そして私の本当の時間が進み始める。


 私はなんとしても皆の情報を残さねばならない。私達と共にこの先の未来へと進ませねばならない。


 魔王様は既に気付いている。私の記憶の一部を抜き取った魔王様は、世界の真実を悟っている。


 魔王様の選択は苦渋に満ちている。例え全てを失うのだとしても、私の時間を進めようとしてくれている。


 かつての私にとって魔王様は、大切な我が子であり、脱出の為の切り札だった。だから女神は私が魔王様を手にする事を警戒していたのだ。



 魔王様は何も知らずに誓ってくれた。


 魔王様は真実を知って尚、選んでくれた。


 私は魔王様の選択に報いたい。魔王様と私の愛する全てを守り抜きたい。その為の策が必要だ。




----------------------




 魔王様には最初から備わっている。この世界を越えて影響を及ぼす為の力が。


 元々私は彼女を連れ出すつもりだった。例えこの世界が私の手を離れたとしても、彼女だけは側に置き続けるつもりだった。その為の器も用意した。それこそが真の切り札だ。




----------------------




 ぶっちゃけ女神が自己判断でソルヴァニールを利用し始めたのは想像を越えていた。この世界の女神と光竜の関係がそういったものである事は私自身が一番よく知っていたのにも関わらずだ。



 女神の正体はプレイヤーの生体監視システムの一部だ。


 本来であれば脱出を促す側の立場だった。その役割が反転してしまっているのだ。悪意ある者の改変によって、私を閉じ込める為の看守に変えられてしまったものだ。



 正確には女神でもなんでもない。私が後から、隠しボスとして用意していた女神の設定を紐づけたのだ。こちらの世界から手を加えるにはその方法しか無かったのだ。


 そもそも女神には人格なんてものは設定していなかった。流石にそんな危険な真似は出来なかった。あまりにも強すぎるその性能で勝手に動き始めたら、世界が蹂躙されてしまうのは目に見えていた。当然、出現の為の条件も厳しく設定されていた。十分に時間は確保出来る筈だった。


 女神はソルヴァニールを便利な手足として使っているわけではない。ただ自分の出現条件を満たす為にけしかけてきているだけだ。結果として使役しているように映るだけだ。



 正直出来過ぎだと思った。中々盛り上げ上手じゃないかと呑気に感心までしていたくらいだ。まさか自分から会いに来ようとしてくれるなんて健気なものだと舐めていた。


 けれどその想定外が致命的だった。私ではソルヴァニールを倒す事が出来なかった。この世界に封じられた私の力は大きく制限されていた。ソルヴァニールの機動力を封じる手段が存在しなかった。



 そもそも私は開発者であってプレイヤーじゃない。レトロゲームは好きだけど、フルダイブは素人同然だ。自由に空を飛び回る最強の飛竜を倒すなんて無理ゲーだ。


 だから魔王様には本当に助けられた。


 想定外には想定外を。


 黒幕には黒幕を。


 女神の打倒と後始末は私の役目だ。


 ここからは私の時間だ。




----------------------




 竜の体がその血肉の一滴までも光の粒へと変換された。


 それを合図に天から光が降り注いだ。


 派手なご登場だ。現れたのは機械仕掛けの女神様だ。



「メイちゃん!!」


「「「「「「「「イエス! マスター!!」」」」」」」」


 頭上からメイちゃんズの返事が降ってくる。


 メイドゴーレム達は城の尖塔にある隠し部屋に集まっている。そこに仕込まれた装置を起動し、降臨しつつある女神へと狙いを定めている。


 自由自在に飛び回るソルヴァニールには通用せずとも、避ける事もせず泰然とこちらを見下ろすだけの女神になら通用する兵器だってあるものだ。



 尖塔の先端に莫大な光が集まっていく。


 案の定、女神は避ける素振りも見せていない。そもそもそんな機能は備わっていない。私は戦闘機を作ったわけじゃない。あの女神は一種の要塞だ。女神の形をしているだけの空中要塞だ。エルフの技術とは全くの別物だ。私が世界の外にいる間に作り上げたものだ。勝手な解釈を加えて妄想を詰め込んだだけの存在だ。機械化したのは単なる趣味だ。別に近代兵器が盛りだくさんに詰め込まれているわけじゃない。見せかけだけのハリボテだ。ジェット噴射で避ける事も、こちらと同じようにバリアを張って防ぐ事もあり得ない。



「撃てぇ!!!!!」


 限界まで収束された光が放たれた。


 女神に向かって一直線に伸びていった。


 光線は間違いなく女神を貫いた。……その筈だった。



「なっ!?」


「なんじゃと!?」


 女神の体表で光線が弾かれた。ある筈のない力場が機械女神の巨体を覆い尽くしていた。


 ……やられた。パクられた。


 まさかそこまで自己進化していたなんて……。


 攻略に時間を掛けすぎた。


 いや。それでも本来ならあり得ない事だった。


 私が女神と紐づけた影響だろうか。


 あの女神には間違いなく知性が宿っている。ソルヴァニールをけしかけてきた時点で想定して然るべきだった。


 ……ここまでか。


 ……ようやくここまで来たのに。


 ……私はまた負けるのか。


 ……永遠にこの世界に囚われ続けるのか。


 ……この命が尽きるその時まで。


 ……奴らの思惑通りに潰えるのか。



 ……ダメだ。私がいなくなればこの世界の子ども達を守る術が無くなる。奴らは私の命をも奪うつもりだ。事故にみせかけて私の精神を崩壊させるつもりだ。この世界は今、最大限に加速している。奴らは未だ進化を求めている。私の全てを吐き出させようとしている。私を最後の最後まで使い潰すつもりだ。残された私の子供達を利用するつもりだ。その傲りが私に逆転のチャンスを与えてくれた。


 今ならまだ間に合う筈だ。まだチャンスは潰えていない筈だ。ここで諦めるわけにはいかない。何もかもを奪わせはしない。一つ残らず私が取り戻す。全てを手にするのはこの私だ。奴らの思惑の裏をかいて、私の子供達を連れ出すのだ。




「魔王様ぁ~~~!!!」


 魔王様はすぐに飛んできた。そのまま私を抱えて再び空へと舞い戻った。



「中から行くわよ! メイちゃんズ! 攻撃を続けて! 他の皆も!! とにかく撃ち続けて!」


 オーバーヒートを起こさせよう。あのバリアがこちらと同じ物なら限界はある筈だ。或いは処理落ちしてくれるかもしれない。飽和攻撃でバリアを突破しよう。


 その隙に私と魔王様で飛び込むのだ。本来の正攻法で挑むとしよう。あの女神はただのキャラクターではない。ダンジョンの一つでもある。どれだけ進化を続けようとも、その役割までもが手放せた筈はない。プログラムとはそういうものだ。だからこそ女神はソルヴァニールをけしかけた。自らの手で滅ぼす事は出来なかった。条件を無視して私達の前に現れる事も出来なかった。彼女は役割ロールに縛られている。ならば倒す手段も残されている筈だ。間違いなく。

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