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【完結済】チュートリアルで負け続けたら魔王様に束縛されました  作者: こみやし
04.勇者と魔王の最終決戦

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04-01.迷走

 やばい……何も見つからん……。



 魔王様は信じて待ってくれている。今尚時間を稼ぎ続けてくれている。


 私達は顔を合わせるわけにはいかない。魔王様が私のパーティーメンバーに加わればソルヴァニールが現れる。世界システムの破綻を防ぐ為に私を殺してやり直しを強要してくる。


 女神はいずれ気付くだろう。或いは既に気付いているのかもしれない。何度やり直しても勇者と魔王が敵対する事はあり得ない。この世界がシナリオ通りに進行する道は閉ざされてしまった。既に軌道修正は不可能だ。




 この世界の女神が無機質に決まり事を繰り返すだけの装置に過ぎないのだとしても、この問題は看過できない筈だ。何かしら直接的な対策に乗り出すだろう。


 実際ソルヴァニールが敗れた際には自ら現れて魔王様を排そうとした。その後に私を殺すつもりだったのか、或いは魔王様の代わりでも生み出すつもりだったのかはわからない。



 最悪セーブデータの削除を実行するかもしれない。そうなれば全てがお終いだ。魔王様だけでなく私の記憶だって引き継がれはしないだろう。私達は再び敵同士に逆戻りだ。


 それ以外の対策だって仕込んでくるかもしれない。二度と私達が過去を思い出す事はないのかもしれない。



 けど絶対にそんな事はさせない。


 私達はこの世界で生きていくと決めたのだ。私達の恋路を邪魔する女神とトカゲにはご退場頂こう。



 自分が異邦人だからと遠慮する必要は無い。


 私達こそが正義シナリオを乱す悪だなどと縮こまる必要は無い。


 私は私の為に横暴な女神を討ち滅ぼそう。


 これは生存競争だ。私と魔王様が生き延びる為に必要な事だ。私達だけじゃない。リリスさんやメイちゃん達にだって生きる権利はある筈だ。魔族がただ人間達に討ち滅ぼされるだけの存在やられやくであるなんて許される筈もない。私は決して認めない。



 故に反乱だ。虐げられるだけの魔族が女神に対して行う反逆だ。私達は決して諦めない。システムに組み込まれることを良しとはしない。どれだけ絶望的な力の差があろうと必ず女神を打ち倒そう。その喉元に刃を突き付けよう。


 それが私達の覚悟だ。


 だから見つけ出さなければならない。女神に打ち勝つ方法を。それが私の役目だ。魔王様が託してくれたお役目だ。




 ……けれど。


 ……いったいどうしたら。


 そもそも女神がエネミーとして扱われた事なんぞ一度もない。当然ステータスは設定されていないし、そもそもゲーム上のキャラデータなんて存在してすらいないだろう。


 あるのはテキストだけだ。天から声を掛けて勇者に力を与えるだけだ。


 ゲーム世界に女神の弱点なんかを語る登場人物も居なかったはずだ。そもそも語らせる意味もないし。別に女神が前線に立って魔王に敗北したなんて歴史もないし。


 女神はシナリオの都合で存在するキャラでしかない。所謂ご都合的な存在だ。非力な人間達が魔王を倒す為の舞台装置こじつけに過ぎない。



 しかしこの世界には実際に女神が存在している。ゲームが先なのかこの世界が先なのかはわからないけど。


 いや。後者はあり得ないか。このゲームは魔王様が生まれる前から存在していたのだ。前魔王様がプレイしていた痕跡が残されているのはその証拠だろう。前魔王様はここから魔王様の名前を付けたのだ。



 案外女神が余所の世界のゲームを気に入って、自分の世界で再現でもしてみたのかもしれない。本当はただの一ファン以上の関係なんて無いのかもしれない。


 前魔王様だって向こうの世界の品々を所有していたのだ。これがエルフの再現である筈がない。ならば女神が持っていたとしてもおかしくはない。


 当然エルフ達だってそうだ。彼らが築き上げた科学文明は全て前魔王か女神の入れ知恵だったのだろう。




 ただそうなると、そもそも女神はゲームの登場人物とは全く関係のない存在という事になってしまう。このレトロゲーの中を調べても意味は無いのかもしれない。


 ……いいや。それもないか。魔王様はこのゲームの中にヒントを見出そうとしていた。ならば意味はある筈だ。何かしらの共通点はある筈だ。




 女神はシナリオの再現に固執している。今のところ私を勇者から外すつもりがないらしい。それに魔王と勇者が仲間になるまでは何が起ころうと干渉してくる事はない。それは人間社会が完全に破壊し尽くされようともだ。


 魔王様は警戒していたようだけど、女神は勇者わたしの状況を詳しく知っているわけではないのかもしれない。少なくとも見聞きした事が全て伝わるわけでもないのだと思う。でなければとっくにやり直していた筈だ。何故かチュートリアルの最初の地点ではなく、そこを抜けたところにセーブ地点が固定されてしまっているのだから。その時点で私と魔王様が敵対するルートだけは無くなってしまったのだから。



 もしかしたら女神は、システムメニューに表示された情報だけを認識しているのかもしれない。


 或いは女神自身も世界の遡行に巻き込まれていたのかもしれない。世界の外の存在は私だけだ。私だけが特別に記憶を保持しているだけなのかもしれない。


 女神だって魔王様達と同じくこの世界の住人だ。記憶が失われていたとしてもおかしくはない。或いは以前の魔王様と同じように一部の記憶しか引き継げていないのかもしれない。



 そもそもこの世界の女神にだって人格なんてものは存在していないのかもしれない。ただ機械的に職務を遂行しているだけなのかもしれない。だから何度でも同じことを繰り返してしまうのかもしれない。



 この世界は完全な詰みに陥る直前なのかもしれない。


 魔王様が私を見た瞬間にパーティーメンバーに加わってしまうようになれば、私達は一歩も動けずにただ生と死を繰り返すようになってしまうのかもしれない。



 これを解消するにはそれこそセーブデータの削除しか……。


 そっか……。


 魔王様が探していたものがなんであるのかようやくわかった。


 魔王様はきっとゲームのシステムそのものに干渉する方法を探していたんだ。ゲームの中からデータを書き換える方法だ。或いは何かしらの処理を直接実行させようとしていたのだろう。




 着眼点は良い。確かにそれは唯一の攻略方法だ。たとえキャラクターデータとして存在しなくとも、女神の存在を完全に抹消する事だって不可能じゃない。



 けれど一つ、重大な見落としがある。この世界は原作版ではなく、リメイク版の再現世界という事だ。何故ならシステムメニューがリメイク版のものであるからだ。原作版に「ログアウト」なんてボタンは存在していないのだ。


 もちろんゲームと関係のないただ真似ただけの異世界って可能性も消えてはいないけど、何かしらゲームシステムとの関連性も存在してはいる筈だ。システム丸ごとコピペしている可能性だってなくもない。少なくともシステムメニュー回りはそのままだ。ログアウトボタンが見た目だけ再現されているのもその為だろう。



 だから原作版であるレトロゲーをいくら調べたって意味がない。リメイクにあたってデータを流用したわけじゃない。完全に一から作り上げたものなのだ。


 そもそも技術基盤が全く違う。同じバグの再現なんて意図して仕込まれない限りありえない。しかもそれはただ挙動を似せただけだ。バグの仕組みそのものは全くの別物だ。なんならバグですらない。再現版はただの仕様だ。バグを模倣しただけの機能ファンサービスだ。あったところで応用なんて出来はしない。



 ……考えろ。魔王様がこんな事に気付かない筈はない。魔王様にとって私の記憶が馴染みのないものであったにせよ、三日もかければその程度の考えに思い至らない筈もない。


 それでも何かある筈だ。このレトロゲーには間違いなくヒントが隠されている筈なのだ。それはいったい……。




 ……。


 …………。


 ………………。



 ……前魔王ってなんだ?


 そもそも何者だ? どうしてそんな人物が存在したの?


 間違いなく原作版にそんな人物は存在しない。


 リメイク版の追加キャラか? いったい何の為に?



 リリスさんはまだわかる。エルフたちもいい。彼らには背景が存在している。役割がある。この世界が単なるゲームの再現だけではない証拠だ。だから前魔王様の存在だっておかしくはない。そう思っていた。


 けれど、それならだ。


 前魔王様だってシナリオに組み込まれていないとおかしいだろう。けれど彼女はなんの役割も果たしていない。魔王様を生み出してからはすぐに玉座を退いて魔王様に委ねてしまった。亡くなった経緯だって判明していない。魔王様は知っているのだろうけど、それを明かしてくれた事はない。



 もし仮にこの世界が女神の再現したものであったとして。


 それはいったいいつからなのだろう。


 前魔王様も今の魔王様と同じように勇者を迎え撃っていたのだろうか。


 それとも前魔王様はこの世界がゲーム世界と重なる前から存在していたのだろうか。


 女神から直接知識を与えられて協力でもしていたのだろうか。この部屋にあるゲームはその報酬か何かなのだろうか。エルフ達もグルなのだろうか。最初から魔王様を勇者に殺させる為だけに生み出したのだろうか。



 わからない。前魔王様の存在だけが不自然だ。


 ゲームを再現するなら魔王様の前の世代から始める必要なんてない筈だ。


 だからきっと前魔王様はゲームと無関係の人物であった筈なのだ。



 女神の為にこの国を育てあげたのだろうか。或いは前魔王様こそがこの世界を作り上げたのだろうか。女神も前魔王様が作り上げた偽物なのだろうか。実は今も生きてどこかで見ているのだろうか。




「メイちゃん。前魔王様の事を教えて」


 メイドゴーレム達は知識を共有している。群体のような存在だ。前魔王様が生きていた頃の事だって何か知っている筈だ。



「……前魔王サマハ」


 少し言い淀んでいる。言いづらいのか、それとも記憶を辿っているのだろうか。



「メイチャン呼ンダ」


 え?



「私と同じって事?」


「ソウダ」


「前魔王様はどこへ行ったの?」


「亡クナッタ」


「どうやって?」


「……ワカラナイ」


「わからない? けど亡くなった事はわかるの?」


「……ソウダ」


「ならご遺体は埋葬されたのよね? 死因がわからなかったって意味よね?」


「……後者ハソウダ。アル日突然動カナクナッタ」


「動かなく?」


「魔王サマ、魂無クナッタ、言ッテタ」


 魂が無くなった? どういう事?


「ケド魂戻ッテキタ」


 え?


「ユズキガソウダ。オカエリナサイマセ。元魔王サマ」


 ……何を言ってるの?


「……その根拠は?」


「名前ダ。我ラ生ミ出シタノ前魔王サマ。名ヲ呼バレタ時二再ビ繋ガッタ。魂ガ繋ガッタ。ダカラワカル。ユズキハ前魔王サマダ」


「……」


 私が前魔王? この部屋の主で魔王様の母親?


 そんな筈……けど……。



「……教えて。前魔王の事を」


「ハイ、マスター」

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