03-07.協力関係
「……なあ、ユズキ」
「……なによ、魔王」
「……手を組もう」
「……わかっているの? 私の目的はあなたを消して私の魔王様を取り戻す事なのよ?」
「……一つ手がないわけではない」
「やっぱり嘘つきね。さっきは不可能だって言ったのに」
「すまんな。具体的な方法も今はまだ告げられぬ」
「それで信じろって?」
「うむ」
「無茶苦茶よ」
「しかし他に手もあるまい?」
「だからってあなたなんかに」
「我の望みはお前だ。ユズキ」
「ちょっと。人の話遮らないでよ」
「お主さえ側に居てくれるのなら、どんな願いでも叶えてみせよう」
「少しは聞きなさいよ。このマザコン魔王」
「……愛している。本当に愛しておるのじゃ。ユズキ」
「キスしてくれたら信じてあげる」
「……それは出来ん」
「あんたのトラウマなんか知らないわよ」
「……」
「何よ? 何か言いたい事があるなら言いなさいよ」
「……事が済むまでじゃ。もう少しだけ我慢しておくれ。それさえ済めば我の事は好きにせよ。唇でもどこでもユズキの好きに使うといい」
「何よそれ」
「たとえお主の愛する者が取り戻せずとも、この身には価値がある筈じゃ」
「勘違いしないで。お人形遊びがしたいわけじゃないわ」
「心配は要らぬ。我はお主を愛しておるのじゃ」
「あなたそればっかりね。ゴリ押ししか知らないわけ?」
「すまんな……」
「ちょっと。泣くことないじゃない。なんでこのタイミングなのよ」
「なあ……やっぱり信じてもらえぬか……我がお主の魔王じゃ……そう扱ってはもらえぬか……今だけでも……」
「だから言ってるじゃない。そう言い張るならキスの一つでもしてみせなさいよ」
「ならぬのじゃ……」
「……意味がわからないわ。そんなに母と娘の関係が大切ならリリスさんのところにでも行って慰めてもらえばいいじゃない」
「……そうではない」
「秘密秘密ってそればっかりね」
「信じておくれ」
「ならせめて目的を話しなさいよ。あなたはこれから何をするつもりなの? ソルヴァニールに拘る理由はなんなのよ」
「討ち滅ぼす。全てを」
「全て? あのトカゲだけじゃなくて?」
「……そうじゃ」
「女神を倒すの?」
「……」
「何を恐れているの? その体たらくで本当に勝てるつもりなの?」
「我は勝つ。そうせねばならんのじゃ」
「……私の助けが必要なのね?」
「そうじゃ。我一人では戦い抜けぬのじゃ」
「けれど私には話せないと?」
「そうじゃ」
「私が勇者だから?」
「そうじゃ」
「それがキスしてくれない本当の理由?」
「……そうじゃ」
「今の間は何よ」
「なあ、頼む。暫しの間でよい。我を信じておくれ。決して後悔はさせぬ。必ず全てを取り戻す。ユズキを幸せにしてみせる。我は他ならぬお主の為に全てを捧げる。母上ではなくユズキの為にじゃ。そう誓う」
「なんであなたがそこまで縋るのよ。あなた私の事なんてなんとも思ってないんでしょう?」
「そんなわけがあるか。記憶は継いでおるのじゃ」
「それだって私視点の情報じゃない」
「だとしてもじゃ。あれから我はお主の事だけを考え続けておったのじゃ。新たに芽生えるものが無い筈もなかろう」
「あなたを代わりに愛したりなんてしないわよ?」
「……わかっておる」
「また泣いているのね。あなたは私の知る魔王様とはまるで別人ね」
「お主のせいじゃ」
「勝手に記憶を覗いたのはそっちでしょ」
「そういう意味ではない。お主だからこそ我の心をかき乱すのじゃ」
「……抱きしめなさい」
魔王は躊躇する事なく飛びついてきた。
「……っ」
「まだ泣くのね」
「ユズキぃ……」
「はいはい。お母さんの代わりでもなんでもしてやるわよ。私の魔王様を取り戻すのに必要だってんならやってやろうじゃない」
「違うのじゃぁ……我は……本当はぁ……」
「……本当は何よ? 最後まで言いなさいよ」
「出来ぬのじゃぁ……ユズキのわからずやぁ……」
魔王は見た目相応の子供のように泣き続けた。
私は小さな魔王を撫で続けた。




