表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

01-02.詰みポイント更新

「え!? うそ!? 終わってない!? まさか!?」


「ふむ。なるほどのう。今度は覚えておるようじゃな」


「な~ぁにしてくれてんのよぉ!?!?!」


「やかましい!」


 ちょっ!? またぁ!?




----------------------




「お願いします。もう撃たないでください」


「この我は一度も貴様を撃ってなどおらんじゃろうが」


 ちくせう。自覚あるくせに。



「システムメニューを開かせてください」


「ダメじゃ。お主、それで逃げるつもりであろう」


 どうやらログアウトのタイミングが悪かったらしく、セーブ地点はあの瞬間に更新されたようだ。幸い即死ビームが当たっている最中ではなかったものの、魔王は私の行動を正確に覚えているらしい。お陰でメニュー画面を開く度に即死ビームが飛んでくるようになってしまった。これじゃあ単に詰みポイントが更新されただけだ。ちくしょう。



「私は帰りたいの。私が帰った後は勇者とよろしくやってもらって構わないから」


「我は勇者なんぞよりお主に興味があるのじゃ」


「……貴女そっちの趣味なの?」


「なんじゃそっちの趣味って」


 違うっぽい。



「いえ。その興味を解消したら解放してくださるかしら?」


「そうじゃのう。我の興味が失われるまでは側に置いてやろう。まあ、その時は始末するがな。我の手で」


「それじゃあダメなのよ。貴女だって何度も繰り返す事になるのよ?」


「その時はまた楽しめるのじゃな♪」


 そうだった。魔王はこの瞬間に引き戻されるんだった。多少の記憶は引き継げるようだけど、私に興味を抱いた時点に戻るのは間違いない。まさに無限ループ。さっきのループみたいに極短期間なら嫌気も差すだろうけど、ここから長い時間を過ごした後ではどうなるかもわからない。なんなら今度はループに気付く事すら無いのかもしれない。



 というか魔王様理解力が凄まじいわね。どうしてそういう所ばかり力を入れてしまうのか、このゲームの開発会社は。


 よく見ると魔王様のディテールにはやたらと力が入っている気もする。なにこの美少女。魔王ってこんなんだっけ?



「おい。不躾に覗き込むでない。焼き尽くすぞ」


「あら。魔王様は他者から見られるのなんて慣れっこでしょう? この美しい容姿に注目が集まらない筈はないわ」


「う、うむ。そうじゃな。我は美しい。うむ。わかっておるではないか。お主、中々見どころがあるではないか」


 あかん。気に入られてしまった。それじゃダメだ。完全に失望されない範囲で興味を失わせなければならない。メニュー画面を開いてログアウトボタンを押すにはそれしかない。私から目を離すように誘導しなくちゃだ。


 大丈夫。さっきよりは簡単だ。時間は十分にある。三十秒に一度即死ビームが飛んでくるわけじゃない。魔王様にだって睡眠は必要な筈だ。必ず隙はある。まだ慌てる時じゃない。



 ……本当にあるか? これゲームだよ? 魔王の寝込みを襲うシーンなんて無かったよ? そもそも生理現象とは無縁なのでは? だいたい魔王様は人間ですらないんだし。



「また何ぞ考えておるのじゃな。そんな事より我の問に答えるのじゃ。焼き尽くすぞ」


「……なんだったかしら?」


「まったく。仕方のないやつじゃのう」


 あら優しい。即死ビームが飛んでくるかと思って恐る恐る聞いてみたのだけど。



「お主は何故我の名を知っておる。その名は人間どころか魔族にすら知られておらぬのじゃ」


 ああ。そっか。そうよね。確か魔王の名前って取説に書いてあっただけの設定だものね。作中で魔王の名を語る者は誰もいなかったものね。当の魔王本人でさえ名乗りはしなかった筈だ。



「私のいた世界では貴女って有名人なの」


「なんじゃと?」


「多くの人々が貴女の名を知っているわ」


 今は特にね。リメイク発売に一部界隈が盛り上がっていたもの。何を隠そう私もその一人だ。ネットの同志達と語り合ったものだ。早く語りたい。このクソゲーについて。それはそれで盛り上がる事間違いなしだ。



「……お主は未来から来たのか?」


「さあ? どうかしらね」


 ここは適当にはぐらかしておこう。真実を語っても信じてはくれないだろうし。なんなら即死ビームが飛んでくるだろうさ。自分が人間に作られた仮想の存在だなんて聞かされれば当然だ。



「……まあよい。ともかく人間であるお主が我を敬う理由もそこにあるのじゃな」


 言う程敬ってたかしら?



「ええ。貴女は偉大な魔王様だもの。こうしてお会いできて光栄よ」


 正直これは半分本音だ。魔王ノクスクレムは私のお気に入りでもある。不幸なすれ違いさえなければ素直にキャーキャー言っていた事だろう。本当に残念だ。



「ふむふむ♪ よいぞよいぞ♪ そこまで申すのであれば我の側に仕える栄誉を授けようぞ♪」


「遠慮するわ」


「なんじゃと!?」


「その栄誉は身に余るもの。私には務まらないわ」


「たわけ。このような場面でくだらぬ遠慮なんぞするもんではない。それとも何か? 我が目を節穴と愚弄するつもりか?」


「……失礼致しました。魔王様」


「うむ。それでよい」


 仕方ない。もう暫く話を合わせるしかない。



「そうと決まれば相応しい装いを用意せねばなるまいな♪」


 え? ちょっと?



「連れて行け」


「御意」


 二体のメイドゴーレムに羽交い締めにされ、そのまま謁見の間を連れ出されてしまった。



 早速のチャンスだ。


『先に言っておくが今も見ておるぞ。余計な事は考えるな』


 ……マジかよ。



「着替えを覗かれるおつもりですか、陛下」


『何の問題がある。お主は我に忠誠を誓ったのだ。その身全てを我に捧げるくらいの気概は持つがよい』


 やっぱりそういう……。まさか夜の相手を求められたりとか……。いや、流石に無いか。このゲーム全年齢対象だし。



「ハイ、バンザイ」


 手慣れてるわね、このゴーレムメイド達……って、え? あれ? 私裸になってる? どういう事? 全年齢対象のゲームってそういうの規制掛かるんじゃないの? 自分の裸だって普通は見えないものでしょう? 服が脱げなかったり謎の光が被さったりするものじゃないの?


 魔王様が生み出した特別なアバターだからかしら? もしかしてこれもバグ? 本来なら勇者アバターから変わる事ってあり得ないものね。想定されていない挙動なのかも。



 まったく。つくづく作りの粗いゲームだ。そのくせこのメイドゴーレム達や用意された衣装なんかはよくよく作り込まれている。なんで女性用下着なんてものまであるのさ。そのアイテム必要ないでしょ。まさか勇者に装備する気かしら?



 ……いや、おかしい。私は何故今、ゴーレムメイド達に風呂に入れられているのかしら。いくら最新のフルダイブゲームだからってそんな自由度がある筈はない。これが生活を主軸としたゲームならともかく、あくまで魔王討伐を目的としたロールプレイングゲームだ。どう考えても容量の無駄だ。他の杜撰さを見る限り、開発チームにそれだけの余裕があったとは思えない。だからこそって可能性も無いではないけれど。


 ただ風呂に入るだけならともかく、触れられている感触がリアル過ぎる。雫の一滴一滴までもが繊細に描写され過ぎている。ありえない。妙な拘りだけでは説明がつかない。



「流シマス。目ヲ瞑リナサイ」


 痛っ……。シャンプーが目に染みた……。


 いったいいつからだ……。


 いつから私は痛みを感じていた?


 ……おかしい。痛みなんて感じる筈がない。少なくとも最初は感じていなかった。今はどうだ? 私は魔王の攻撃で痛みを感じていたのか? ……わからない。即死しているせいだろうか。痛みの許容量の問題だろうか。些細な痛みであれば没入感の為に必要と判断されたのだろうか。



「なんでドライヤーなのよ」


「ナニカ?」


「……なんでもないわ」


 考えすぎか。仮にここが別の世界だって言うなら、メイドゴーレムがドライヤーなんて持っている筈がないものね。それもコンセントに繋がったやつだ。どうやら魔王城には電気が通っているらしい。思い返してみるとシャワーヘッドなんかもよく知るものと変わらなかった。世界間ぶち壊しだ。このシュールさはゲームならではと考えて間違いあるまい。


 たぶんこれも横着の所為なのだろう。きっと他のゲームエンジンやオブジェクトを流用したのだ。そうに違いない。



「本当にこれ着るの?」


「着ロ。魔王サマノ命令ダ」


 ……ちくしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ