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【完結済】チュートリアルで負け続けたら魔王様に束縛されました  作者: こみやし
02.勇者と魔王の世界征服

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02-05.平行線

「……」


 魔王様が静かだ。留守にしている間に溜まった仕事を黙々と片付けている。……少し誂いすぎたかしら?



「……おい」


「次はこちらです」


「……違う」


「ごめんなさい。こっちを優先するべきだったわね」


「そうではない」


「少し休憩する? それならお茶を淹れてくるわね」


「ユズキ」


 腕を掴まれた。



「わかったわ。いつものね」


 魔王様の代わりに私が椅子に座り、魔王様を横抱きにして膝に乗せた。



「……」


 また無言だ。肩に寄りかかって視線を落としている。



「いったいどうしたのよ。調子狂うわね」


「……ユズキのせいじゃ」


「ごめんなさい。謝るから仲直りしましょう」


「……また適当な事を口にしおって」


「なら教えてくれるかしら? 何が一番気に触ったの?」


「そんな事すらわからぬところじゃ!!」


「……そうね。これでは魔王様の愛人失格よね」


「なにが愛人じゃ! 我がいつそんな事を言った!!」


「なら魔王様は私を愛しているの?」


「当然じゃ!」


「私そんな事一言も言われてないわよ?」


「バカな! そんな筈! ……言ってなかったか?」


「ええ。ただ襲われただけよ。一方的に」


「あれはユズキが誘ってきたのじゃろうが!」


「いくらなんでもチョロすぎない?」


「信じられぬのか?」


「ええ。もちろん。だって私達は出会ったばかりだもの。それに私は魔王様に見初められるような人間じゃないわ」


「人間としてどうかなんぞ我には関係なかろう」


「魔族にとっては魅力があるのかしら?」


「……いや。無いな。お主を気に入るのなんざ、我とリリスとゴーレム達くらいじゃろ」


 今のところ直接会って話した全員から好かれているわね。人間やエルフは別として。魔族って皆チョロいのかしら? それとも魔王様が他を近づけないようにしてる?



「……いかんぞ」


「なにがよ」


「お主は我のものじゃ」


「ただの所有物なのかしら?」


「……本当に言わんとわからんのか」


「いいえ。言われてもわからないわ」


「なんじゃそれは。やはり我の言葉を信じておらんのではないか」


「そうよ? だって当然でしょ? 私達はまだ出会ったばかりなんだもの。積み重ねが全く足りていないわ」


「この頭でっかちめ。これだから人間は好かんのじゃ。大した寿命も無いくせに過程にばかり拘りおる」


「ほら。魔王様が私を好きになるなんてあり得ないわ」


「しかし我は知っておる。結局人間も結果をこそ何より重視するのじゃと。どれだけ良き隣人であり続けようと、ある日突然に手の平を返すのじゃ。たった一つ掛け違えただけで過程の全てを無かった事にするのじゃ。実に愚かな種族よのう」


「話が逸れているわよ」


「いいや。そうではない。ユズキ。お主はただの人間とは違うのじゃ」


「霊体だから? それとも外の世界から来たから?」


「違う。お主個人の資質じゃ。我はそこに惚れ込んだ。そう言っておるのじゃ」


「なら魔族の誰かでも構わない筈でしょう? 人間には無い素質だとしても、魔族なら誰もが当たり前に持っているのでしょう?」


「おい。これ以上捻くれた事を口にするでない。我は惚れたと言ったのじゃ。返すべき言葉が違うじゃろうが」


「わからないわ。魔王様こそ捻くれすぎよ。いい? そういう時人間は"一目惚れした"と言うの。あれこれ理由を付けているけど、結局は最初に目にした時から気になっていたって事でしょう? そうでなければこんな短期間で誰かを好きになれる筈がないわ」


「自惚れるでない。お主なんぞに誰が一目で惚れるものか」


「あくまでも過程を踏んだと? 魔王様としては私の内心の全てを見通して好きなったと?」


「全てを好きになんぞなれるものか。お主の嫌いなところだってごまんとあるわ」


「なら妥協しているの? 私が手の出しやすい弱者だからごっこ遊びに付き合わせようとしているのかしら?」


「お主、ほんといい加減にせえよ? お主は結局逃げたいだけなのじゃろう? あれこれと理由をつけて誤魔化そうとしておるのじゃろう? 我は決して認めぬぞ。お主が首を縦に振るまでこの話は続くのじゃ。覚悟するがいい」


「結局選択肢は一つなの?」


「当然じゃろうが。我の求愛を何故お主程度が阻めると思うのじゃ」


「私も魔王様のそういうところが大嫌いよ」


「くっ……ま、まあ。多少はな。お主にもあるじゃろう。うむ。わ、我は寛大故、もちろん許容するとも。うむ」


「滅茶苦茶動揺してるじゃない」


「たわけ! それこそ惚れた弱みというものじゃろうが!」


「そうやってすぐに怒鳴るところも嫌いよ」


「この! くっ……」


 あら。我慢するのね。



「……愛人は嫌じゃ」


「世間体の問題?」


「これ以上我を怒らせるな」


「魔王様でも私は殺せないわ」


「いずれその呪縛は解いてやる」


「私を殺すために?」


「んなわけなかろうが!」


「私も結局は結果に縛られるのよ」


「バカ者め。お主なんぞが全てにおいて完璧だなどとは思っておらんわ」


「つまり何? 私が魔王様を魔王様として受け入れたから好きになったの?」


「違う。お主が我をノクスクレムとして扱うからじゃ」


「あれ以来一度も呼んでないじゃない」


「呼べ。許す。お主にだけは我を名で呼ぶ権利がある」


「伴侶になるつもりはないわ」


「やはり理解しておるではないか。お主のそういうところが嫌いなのじゃ。しかし拒絶は認めんぞ。決してな」


「寛大さとは正反対よね」


「おい。流石にそれはライン越えじゃろうが」


「そうね、ごめんなさい」


 名前は大切なものだ。それを揶揄するなんて許される事じゃないわよね。



「ノクス。私はそう呼びましょう」


「結局呼ぶのじゃな」


「魔王様が命じたんじゃない」


「それを言い訳にはさせんぞ?」


「ならやっぱり魔王様と呼び続けるわ」


「我を翻弄して遊んでおるのか?」


「流石にないわよ。魔王様が本気なのは伝わってるもの」


「それでも信じられぬと?」


「そうよ。魔王様も知っているでしょう? 私は素直じゃないの。そうそう意見を変えるつもりは無いわ」


「本当はただ逃げ出したいだけなのじゃろう? 世界さえ渡れば我に用は無いとでも言いたいのじゃろう?」


「そうよ。私にとって魔王様はその為に必要な存在なの。それ以上でもそれ以下でもないわ。正直本気になられても困るのよ」


「我は言ったはずじゃ。お主の誓いを必ず叶えてみせると。お主は誓ったであろう。我と一生を共にすると」


「……それじゃあ私の方が先にプロポーズした事になるのかしら?」


「そうじゃぞ。じゃから言っておろう。決して拒否は認めぬと」


「……いえ、待って。やっぱりそこまでは言ってないわ」


「往生際が悪いぞ」


「そもそもあれは苦し紛れの命乞いだったのよ? 魔王様だってデマカセだって切り捨てたじゃない」


「じゃからこうしてもう一度認めさせようとしておるのじゃろうが」


「魔王様も酔狂ね。私なんかのどこがいいのかしら」


「よし。もう一度頭からじゃな。よいぞ付き合ってやる。とことんやりあおうではないか」


「そろそろ仕事に戻らないと」


「心配は要らぬ。今日は切り上げじゃ。我を舐めるなよ。先程必要なものは全て終わらせておる。人払いもじゃ。決して逃げられると思うな」


「……しつこ過ぎよ。何度詰め寄られたって頷くつもりはないわ」


「我の何が気に入らん? 致命的な箇所を述べよ。前向きに善処しよう」


「私程度の為に変わろうとする魔王様なんて見たくないわ」


「完全な支配が望みじゃと? お主マゾヒストか?」


「どうしてそうなるのよ。私と魔王様じゃ致命的に噛み合わないって言っているのよ」


「そんな筈はなかろう。お主の思い込みじゃ」


「思い込んでいるのは魔王様の方でしょ」


「いいや。ユズキの方じゃ。自分には価値が無いと本気で思っておるのじゃろ。ふてぶてしいくせにどうしてそこだけ自信が無いのじゃ。お主の精神構造はとんと理解できんな」


「なんでそんな相手に求婚してるのよ」


「だからこそ興味深いのじゃろうが」


「ならいつか私を捨てるの? 全てを理解したら興味を失うの?」


「結果に失望して他者を見限るのは人間の思考じゃ」


「魔王様だってすぐに短気を起こすじゃない」


「……そうじゃな。我も人間に似た感性を持っておるのじゃろうな」


「つまり同族嫌悪ってこと?」


「そうじゃ。じゃからお主に惚れたのじゃ」


「私だって同じよ」


「いいや。お主は乗り越えてみせた」


「それでも一度はぶつけたじゃない」


「たったそれだけの事じゃ。問題はその後なのじゃ。お主は自ら立ち直ってみせた。決断し、再び歩み始めた。我は全て見ておったぞ。食事が喉を通らずとも、どれだけ吐き戻そうとも、お主の心が本当の意味で折れる事はなかったのじゃ。同胞を滅ぼす覚悟がどのようなものであるのか、この我に想像出来ん筈がないじゃろう」


「……魔王様だってきっと同じ事をしていたわ」


「そうじゃな♪ つまり我に並び立てるのはお主だけという事じゃ♪ この我が保証してやる♪ 光栄に思え♪」


 ……過大評価だ。魔王様は私に甘すぎる。私はただ自分の都合で選んだだけだ。私一人が帰る為だけに人間の社会を破壊し尽くしたのだ。そんな醜いものに魔王様が惚れていい筈はない。



「やっぱり無理よ。私は認められないわ。そんな理由なら尚の事よ。私の魔王様はもっと高尚な存在なの。矮小な小娘なんかに心を惑わされないで。一時の相手なら喜んで務めさせて頂くから」


「くどい。拒否は認めん。我の決定に異を唱えるのは例えユズキであっても許しはせん」


「私達っていつも平行線ね」


「それでも力を合わせてやってきたではないか」


「私は魔王様の役に立てていたのかしら?」


「もちろんだとも。でなければ仕事なんぞ任せん。本音を言えば常に触れ合っていたいのじゃ。書類とペンなんぞ持たせるくらいなら椅子役を任せたいくらいじゃ」


「今みたいに?」


「そうじゃ」


「顔は見えなくてもいいの?」


「角度もこれじゃ。安心せい。片手でも完全に仕事をこなしてみせるぞ」


「流石の魔王様でも無茶よ」


「我を疑うでない」


「無茶言わないで」


「我が今まで言葉を違えた事があったか?」


「……無いけど」


「ならば信じろ」


「信じているからこそ認められない事だってあるのよ」


「頑固者め」


「魔王様こそ」


「ノクスじゃ。そう呼べ、ユズキ」


「……嫌」


「次に嫌だと口にしたら塞いでしまうぞ」


「強引ね」


「我のものになれ」


「考えておくわ」


「お主のう……」

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