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2024.08.14

その日、桑田は実に6年ぶりに喜びをかみしめた。奇抜な発想力を持った新人漫画家として期待されデビューを果たし、半年で打ち切りになったあの日から6年。ようやく連載が決まったのだ。担当編集から吉報を受けた桑田はすぐさまスマートフォンを開き、なにかを急いで打ち始めたが途中でなにかを感じ取ったかのように、ぴたっと、打つのを止めて、何事もなかったかのようにすぐ担当編集との打ち合わせに戻った。

大学卒業後、漫画家になると意気込んで、出版社に持ち込みをした日から桑田は優遇された存在だった。6年も連載がなかったのにも関わらず、担当編集が離れることはなく、常にネームから見せることができていた。それほどまでにデビュー当時の桑田の作品は一風変わっていて、それでいて斬新なものだった。それが当時の読者層には合わなかったとのことらしい。それ以来、優遇はされているものの連載までは認めてもらえず、売れてる漫画家のアシスタントや面白いと言われた読み切り作品を年に1.2本載せてもらうことで貧しいながらも生計を立てていた。

そんな生活から抜け出せる兆しが今日再び訪れたのだ。担当編集からの電話で目を覚まし、憂鬱な気持ちで神保町駅に到着しそこから脇目も触れずただ真っ直ぐ出版社まで歩いた往路とは異なり、復路では出版社から神保町駅に向かう途中、桑田は誰とも待ち合わせなどしていないのにも関わらず、あたりをキョロキョロ、誰かを探しているように見渡しながら帰った。家の近くのスーパーで今まで我慢していたお酒を飲もうと思い立ち、実に3年ぶりに缶ビールを手に取った。桑田は決して浮かれているわけではない。これからが本当の戦いだと言うことをこの6年で忘れたわけでもない。ただ、連載が決まった日はビールを飲む。それは決まっていたのだ。3年ぶりのビールの苦さはあの頃と変わらず、桑田の記憶は6年前初めて連載を勝ち取った日に遡っていた。

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