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6.

本日、第2魔術団内で一般職での護衛任務参加について正式発表があった。

 想像はしていたが、やはり一般職――特に若手たちからの批判は凄まじかった。

 一般職が魔術師や騎士と直接関わる機会は、そう多くない。人気職である魔術師や騎士と少しでも距離を縮めたい、という女性はたくさんいる。


「なんで今回の参加が、新人のイリーナさんなの?」

 まるで“にっこり”という文字が見えるかのような、美しくも強烈な圧を感じながら話しかけてきたのは、第2魔術団で美人と有名なアンナさん。

 正直なところ、陰でこそこそ噂されるよりも、こうして直接聞いてもらえたほうがずっとありがたいのだ。心の中でアンナさんを拝み倒す。ありがたや、ありがたや。


「私が独身で、しかも皆さんより年上だから、ですよ」

 なるべく感情を抑え、聞き耳を立てている人々に聞こえるように返答する。

「独身のみなさんは、私よりもずっと若いですし。今回の任務は『同行のみ』とはいえ、もしものときには身体や顔に傷が残る可能性もあると説明を受けました。

 それに、若くて綺麗な方々が護衛に同行すると……騎士団の皆さんが集中できないのでは、と、騎士団長が心配していたそうです。

 家庭のある方に何日もかかる任務をお願いするわけにもいかず――そんな理由で、私に声がかかった、というわけです」

 困ったように、少し悲しげに首をかしげてみせると、アンナさんはふうん、と納得したような返事をして、自席へ戻っていった。


 団長、さすがです! ――心の中で拍手喝采。

 私が攻撃の対象になることは、団長たちにとっては想定内。だからこそ、あらかじめ知恵を授けてくださった。上司は本当に驚くほど良い人で、「年齢や結婚の話はハラスメントではないか」と私の代わりに進言してくれる。けれど私は、「これだけで済むのなら」と、その提案を受け入れた。


 名付けて――「あなた方は大切な人材なので行かせられないのよ、作戦」

 私も含め、人間は「必要とされている」「大切にされている」と感じると、案外納得してしまう生き物だ。それを完全に掌握しているのが、第2の魔術団長。あの人、本当に怖い。敵に回したくない。


 そして――その話を聞いていた騎士団長が笑って一言。

「綺麗どころがいると、騎士団が集中できないって言っておけ」

 ……これがまた、強いカードだった。


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