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13.

イリーナは、上司とともに団長室の扉の前に立っていた。

 最近何かとお世話になっている上司のアランがドアをノックする。

「失礼します」

 アランが先に一歩を踏み出し、丁寧に一礼する。イリーナもすぐにそれに倣い、深く頭を下げて室内へと足を進めた。

 部屋の奥、魔術団長と第2騎士副団長のパスカルがソファに座っていた。パスカルが立ち上がると、毅然とした瞳がまっすぐにイリーナを捉える。


「イリーナ、先日の任務……本当に感謝している。もし、あなたがいなければ――お嬢様が無事でいられた保証はなかった」

 彼の声は穏やかだったが、言葉の奥に確かな感謝と敬意が宿っていた。

 思いがけない言葉に、イリーナの胸はぎゅっと締めつけられる。

 「こちらこそ……ありがとうございました。皆さんに……あのときは、みっともないところをお見せしてしまい申し訳ありません」


 その言葉は、パスカルによってすぐに力強く打ち消された。

 「そんなこと、誰も思っていない」

 真っ直ぐに投げかけられる視線。そこには一切の曖昧さがなかった。

 「むしろ、指名されたのが貴女で本当によかったと、心から思っている」


 胸の奥がじんわりと熱を帯びていくのを感じた。それは誇らしさ。照れくささ。嬉しさ。それらがぐるぐると渦を巻いて、くすぐったいような感情になってこみ上げてくる。

 イリーナは、ほんの少し目を伏せた。言葉にならない何かを押しとどめるように、胸の前で手を組みながら――自分は、ちゃんと役に立てたのだと噛みしめる。



「――まあ、それぐらいにして」

 副団長の声が割って入る。

「本題に入ろう。君たちが提案してくれたあのお守りについてだ。私の認識では、あくまで”盾”(シールド)の効果のみである。パスカル副団長から、攻撃が弾かれたように見えたと報告があったが?」

 イリーナは一瞬、返答に詰まる。まさか、そんな詳細まで問われるとは考えていなかった。

「それと、あれはどれぐらいの衝撃に、何回まで耐えられるのか。連続使用には制限があるのか?」


 上司であるアランが説明役を買って出てくれる。やや前に出て、落ち着いた声で説明をはじめた。 

「……先に団長たちにはご説明した通り、もとは“盾”(シールド)の魔法陣を応用したものです」

 アランは丁寧な口調で説明を続ける。

「したがって、本来なら攻撃を“弾く”ような効果はないはずです。おそらく、弾かれたように見えたのは――魔術団長がお守りに込められた魔力の影響かと。かなり強力でしたので」


 パスカルが頷きながら、さらに問いかける。

 「盾魔法は物理攻撃のみに反応する、つまり毒や呪詛といった“悪意”そのものには作用しない……そういう理解であっていますか?」

 アランが答えかけたとき、パスカルは続けて問いを重ねた。

 「それと……万が一、お守りが敵に奪われた場合。敵がそのまま使用できますか?」

 アランとイリーナは同時にハッとして目を見交わす。

「……そこまでは、考えていませんでした。申し訳ありません」

 先に頭を下げたのはアランだった。反射的に深く頭を垂れ、その声は微かに震えている。

 すかさずイリーナも頭を下げる。彼の声には悔しさが混ざっていた。


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