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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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キャンプ飯のおまけ ニジマスの燻製


 目を覚まし、寝袋を脱いでテントから出る。

山の中故にあたりが少々霧がかっている。

「…っくし」

 まだ夏のように暑い季節で、朝の山はそんな季節とは思えない涼しさに思わずくしゃみが出る。とはいえ、羽織るものなど持たぬ俺はそのままテントから出て焚き火があったところへ向かう。

 焚き火の方を見ると、まだ小さな炭が残っておりそこからじんわりと暖かさを感じた。火はとうに消えたはずなのにまだ熱を持っているとは、木とは不思議なものだ。


「おっ、良い感じに出来たんじゃない?」


 焚き火の上に吊るされた物を見る。

 寝る前に残していた薪を焚べて、下処理を済ませ塩を擦り込んでから煙を浴びせていたニジマスがいい感じの焼き色に仕上がっていた。

炭の熱でじっくり水分だけを飛ばし塩気と旨味を凝縮させ、煙による燻しでスモーキーに仕上がったニジマスの燻製だ。このために1匹食べずに残していたのだ。


 おかずは出来ているなら次は主食だ。

昨日のパンの残りをダッチオーブンに入れて、まだ少し残っている炭を再点火させて温める。

残った炭は分解できないが、燃やして灰になれば自然に還せるので丁度いいリサイクルだ。ケチ臭いと言われればその通りだけどね。

話を戻そう。底にクッキングシートを敷いた状態で10分温めてからパンを取り出して、炙ってトーストっぽく仕上げる。


…完成だ。

今朝の献立は燻製とトースト。

ベーコンとパンが合うのだし、同じ燻製のこれも合うはず。コップにお茶を注いでいざ実食だ。

 まずはトーストから。表面を炙ったおかげで外はサクッと香ばしく、中はもちっと食感の温かいパン。

一晩置いてこのもっちり感…米粉も使ってないんだから、我ながら大した出来だ。

2日目の塩バターパンも結構いける。トーストにしたことでサクッと感が出て、中から染み込んだバターがジュワッと溢れてくる。ベーカリーで買う塩パンに負けない仕上がりになっている。


 続いてニジマスの燻製だ。

普通の燻製は煙がよく浴びられる位置において数日放置する必要があるが、今回はほぼ即席で作ったため煙よりも加熱を優先した。その結果…

「あんまり香りがしないな、これ。」

 一応燻製特有の香りはあるものの、鼻に抜けるようなスモーキーな香りはあまり感じられず、燻製というよりは干物やジャーキーみたいな仕上がりになっていた。

 しかし、これはこれで結構イケる。昨夜の塩焼きとは違う弾力のある食感に噛めば噛むほど凝縮した旨味が出てくる。塩を擦り込んだおかげで味付けも丁度いい。ベーコンほどではないが燻製の香りもあってパンにも合う。

それからお茶にも合う。香りの主張が弱い分、茶の香りを邪魔しない。

 燻製の後にお茶を飲むとどうしても燻製の香りに負けてしまうことが殆どだ。そう考えると、このニジマスの香りは主張があるもののお茶の主張を邪魔しない、お茶に対して謙虚さを持っているのだろう。

おかげで全てが調和した優雅な朝食(ひととき)になった。


「……うまっ」



キャンプ飯編はこれで終わり。

ふわふわの白身が味わえる塩焼きとはまた違った味わいが楽しめるニジマスの燻製。キャンプでのみ食べられる御馳走でございます。

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