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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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大自然に囲まれて食べるキャンプ飯 前

 雲が殆どないほどに快晴な真夏の昼。

 富士山が見えるとあるキャンプ場にて、キャンプ場のロビーで借りた竹製の釣り竿とダッチオーブンを抱えながら、テントを張るのにぴったりな場所を探す。

なるべく平らなところを探して、見つけ次第テントを広げて杭を打つ。


「よし、我ながら良い出来なんじゃないか?」


 少々手こずったが、無事にテントを張ることに成功した。山の天気は変わりやすいと聞くのでテントの設営は第一優先であり、これが出来なければキャンプは始まらない。


 テントを張ったら、次は火おこしだ。

 ロビーで買った着火剤と薪を使い、火を起こす。空気の道を確保できるように薪を組み、その中に着火剤を仕込んで火をつける。空気の通り道をしっかり確保していれば、後は放置していれば火おこしは終わる。


パチパチッ…


 いい感じに燃えてきた。夏の焚き火は調理だけでなく、虫を寄せ付けない効果も期待できるからこの時期の蚊の対策にも火おこしは必須だ。


 さあ、火も確保できたことだし、キャンプ飯の準備を始めよう。

 今夜の献立の予定は、焼きたてパンとニジマスの塩焼き。ニジマスは釣って、捌いて、焼くだけで出来るから、ここは一番時間が掛かるパン作りから始めよう。


 ボウルに強力粉、砂糖、塩、ドライイーストを入れてよく混ぜる。混ぜている間に牛乳と卵を混ぜて人肌程度に温めておく。人肌なので焚き火の時はサッと温めるだけでいいのが楽なようで難しいポイントだ。

 プロのキャンパーがどうやるかは分からないが、俺のやり方はこうだ。

 まず焚べた火に当たらない程度に、少量の水を入れたヤカンを近づける。この時手を火傷しないように注意する。

ヤカンがギリギリ触れる程度の熱さになったら火から離す。熱過ぎるお風呂くらいの温度、数値にして大体50℃過ぎぐらいが目安だ。出来たお湯はカップに移して、空になった熱いヤカンの中に牛乳と卵を混ぜた液を入れ、ヤカンの熱を冷ましつつ液を温める。こうすることで人肌くらいの温度の液が出来上がる。人肌より高くなった時はしばらく放置することで温度を調整する。

…と、かなり脳筋なやり方だが、これが俺の温め方だ。

 粉類が混ざったら、温めた液を注いでよく混ぜる。混ぜる際に生地が手にくっつくから、医師が使うような薄いゴム手袋を着けてから混ぜる。

 ある程度混ざってきたら、常温に戻したバターを投入。ほんのり溶けやすくなったバターを生地に馴染ませるようにこねていく。伸ばしては畳み、グルテンの膜を生み出していく。

 団子のようにつるんとしたツヤのある生地が出来上がったら、ラップを軽ーく掛けて発酵させる。一次発酵だ。


「さて、次は…」


 発酵中にもやることはある。

そう、釣りだ。主食のパンが焼けても、メインのマスが釣れなければキャンプ飯は完成しない。

 早速、借りた竿の針に餌を付ける。

餌に使うのは、香りが強く塩気があって美味いおじさんの味方「あたりめ」。これで大きなニジマスが当たることを願い、湖に糸を垂らした。

これであとは時々竿を揺らしながら当たるのを待つだけだ。


……


………


…………


─────暇だ。


 あたりめを餌にバンバン釣り上げる予定だったのだが、ニジマスはおろか他の魚すら釣れない。山の中、湖では決して御対面出来ないイカの匂いに警戒をしているのか、それともこのエリアに魚が居ないのか、理由は定かではないが釣れるどころか当たりも来ないのは確かだ。

当然だが、ニジマスが釣れなければ捌いたり調理することも出来ない。

 他の行動をしようにも、テントは張り終えた、火もおこして熾火になるのを待っている、パンは発酵中で、竿は依然反応無し。

現状やることがないのだ。

散策に行こうにも竿を見張る必要があるから離れるわけにいかない。


「暇だし、残りのあたりめでも食べるか。」


 俺は家から持ってきた折りたたみの椅子を広げて座り、スーパーで買ったお茶をコップに注いで、それを片手にあたりめを齧る。

 目の前にはてっぺんまで見える富士山と広大な湖、そして大自然。空気は美味しいし、景色は最高だ。

 すうっと深く息を吸えば、大自然の香りを一杯含んだ空気と今咥えている海の香りを発するあたりめが混ざり合い、山と海をいっぺんに味わえるような贅沢さを感じられる。それを肴にお茶を啜る。

この魚を待つ何気ない時間でもこうやって自然を楽しめる。これだから山でのキャンプはたまらないんだ。


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