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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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盆踊りと一本漬け


ドン、ドン、ドコドン、ドコドン、ドン…


スピーカーから流れる音頭に合わせて太鼓の音が響く。甚兵衛や浴衣姿の人達が集まり、音頭に合わせて輪になり踊る。


今日、俺は近所の小学校で行われる夏祭りにやって来ていた。決して大規模なものではない、こぢんまりとした祭りだが、幼稚園児の頃から行っていた思い出のある夏祭りだ。

校庭の中央に踊り場にはスピーカーと和太鼓、そしてそれを囲うように輪になる浴衣姿の人達が盆踊りを踊っていた。

そしてその輪の外には輪投げ,ヨーヨー釣り,フランクフルト,焼きそば,胡瓜の一本漬け,かき氷…と、神社で行われるような大規模な祭りではない分、数は少ないが出店や屋台があった。

飲み物は校門を出てすぐの自販機で買って、それを飲みながら祭りを楽しむ。

これが毎年恒例の夏祭りだ。


そんな夏祭りで俺が毎年必ず食べているものがある。それは、胡瓜の一本漬けだ。

祭りといえばチョコバナナを想像する人もいるだろうが、俺にとっては一本漬けだ。


「100円ね。はい、ありがとうね」


早速俺は一本漬けを買う。

チョコバナナで使うような串に刺さった胡瓜の一本漬け。

小学校で行われる祭りでは近所のおばちゃん達が出店を出してくれるので、他の店とは違う美味しい一本漬けが食べられる。塩と昆布が利いた心に染みる「おばあちゃんの味」だ。

それを受け取り、盆踊りの光景が見られるところに行ってから一口齧る。


パキッ、カリカリッと小気味の良い音を奏でる。この盆踊りの中でなら胡瓜も楽器になり得るかもしれない高く美味しい音だ。

そして噛めば噛むほど溢れる水分と塩気と昆布の旨みが利いた瑞々しい胡瓜は、この暑さで身体が欲していたものにぴったり合っていたようでいつもより美味しく感じられる。

体がこれを求めていたかのように食べ始めたら止まらないのも、おばちゃん特製の胡瓜の一本漬けの素晴らしいところだ。

パリパリと奏でられる音を口の中で楽しみながら食べ終えると、聞き馴染みのある歌がスピーカーから流れてくる。


ダンシングヒーローだ。

幼稚園児の頃に曲がかっこよくて必死になって覚え、今やオハコの踊りだ。

体に音楽が流れるくらいに馴染んだ曲、ここで踊らないわけにはいかない。俺は体に染み込んだ胡瓜と曲を流しながら、あの輪の中に混ざっていく。

たまにはこういう時間も良いかもしれない。

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