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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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深夜の新じゃが祭り

梅雨が始まり、日が落ちてもじめっと嫌な湿気と暑さが蔓延る真夜中。

親父やいびきをかき、お袋はその隣でスヤスヤと眠るこの時間。

俺はこの時を待ち望んでいた。


この日の帰り道、ふと立ち寄った八百屋で売られていたじゃがいも、もとい新じゃが様を見つけた。いや目と芽が合ったとでも言うべきだろうか。

袋に入れられた新じゃが様を見た俺は欲に抗えず一袋買い、鞄に仕舞って帰宅した。


鞄に入った袋の中から新じゃが様を2つ取り出し、リビングへと向かう。

この時足音には気をつける必要がある。忍び足ではなく、なるべく普通に、あたかも冷蔵庫にある麦茶を飲みに行くかのような自然な歩みを心掛けることだ。

リビングに入ったらドアを閉じて、音を塞ぐ障壁にする。こうすることで多少は発した音の漏れをガードできる。


ここからいよいよ調理開始だ。

まずは持ってきた新じゃが様を水で優しく洗う。この時、ゴシゴシと洗ってはいけない。新じゃが様のお肌はデリケートなため、優しく撫でるように泥を落とす程度に洗うのだ。

洗い終わったら、包丁で十字に切り込みを入れ、ラップの衣で優しく包んでレンジで5分じっくりと温める。

この時の注意として5分ぴったりで温めると温め時間が終わった時にピーッと音が鳴ってしまうので、わざと20秒ほど多めにダイヤルを回して観察する。


残り20秒くらいになったら、レンジを開けて新じゃが様を取り出す。この時、証拠隠滅のためにレンジの取り消しボタンを押すのを忘れないことが重要だ。

温めが終わったら、新じゃが様をアルミホイルの衣に着替えさせ、トースターで更に15分ほどじっくり焼く。この時は2,30秒多くダイヤルを回す必要はない。

トースターのベルの音ほど響く目覚ましを消す方法なんて改造する以外方法はないのだから。そこで気付かれるかどうかは、運次第だ。



チンッ──────


15分が経過し、トースターの鐘が鳴る。

すぐさま扉を開けて素早く新じゃが様を小皿へとお迎えする。お迎え時間を間違えると新じゃが様のお肌が黒くなってしまうからな。


お迎えが終わったらいよいよ御対面の時間だ。

アルミホイルを開き、新じゃが様の御尊顔を拝見する。開けた瞬間ほわんと新じゃが様の香りが漂う。

俺はすぐさまカット済みのバターを1つ開け、切り込みの上に乗せる。熱でバターが溶け、表面と切れ込みに流れていく。


「「「ゴクッ…」」」


バターと新じゃが様の芳しい香りに思わず生唾を飲み込む。これは期待できそうだ。


…ん?……待てよ…?

今、俺とは別に生唾を飲み込む音が聞こえたような…しかも俺のすぐ後ろに…

俺はゆっくりと振り返る。するとそこには…



にっこりと笑みを浮かべた親父とお袋の顔があった。


「美味しそうな物を食べてるね。あとは寝るだけの夜に今度は何を食べようとしているのかしら?」


「えっと…その……」


お袋が醸し出すオーラを前に言い淀んでしまう。

食べ物の恨みは恐ろしいと言うが、我が家はそれが顕著に現れる。

我が家の家訓に「家でのグルメは共有財産」という言葉があるほどに美食の独占は許されないのだ。

こうなったら俺に残された行動は1つしかない。それは……



チンッ──────


トースターが再び鐘を鳴らす。

扉を開けると、そこには鮨詰め状態でこんがり日焼けをした新じゃが様たちが居た。

俺は熱々に焼けた新じゃが様を皿に移動させ、バターを1つずつ乗せていく。


一方、親父とお袋は…

「イカの塩辛、マグロの酒盗、とろけるチーズにカレー塩…トッピングはこれくらいで良いかしら?」

「流石母さん、分かっているな。それじゃあ俺も待っている間に即席にんにく味噌でも作っちゃうか!」

…と、新じゃが様を最高の状態で頂くトッピングの用意をしていた。親父に至っては、トースターで新じゃが様を焼いているすぐ近くでニンニクの芳しい香りを漂わせながらニンニク味噌を作り始めている。

幸い明日は休日だからニンニクを摂取しても心配する必要がない。故に今の親父は無敵と言っても良いだろう。


机の真ん中に黄金色に焼かれた新じゃが様が盛られた大皿を置き、その周りに用意したトッピング達を添える。

準備は整った。予定とはちょっと違ってしまったが、豪勢になったので結果オーライ。


───さあ、新じゃが祭りの始まりだ。



今回は食レポ無しで作りました。

じゃがバターとにんにく味噌の組み合わせは絶品なのでオススメです!味噌は合わせ、しょっぱいのが好きな人は赤味噌でも良いでしょう。

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