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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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ケバブは絶えず循環する

昔の俺はこういう格言を残した。


──人間…主に若者の体の70%はケバブで出来ている──と。


皆からすればトチ狂ったことかもしれないが、俺は今もこの格言は真理なのではないかと考えている。


というのも、今日、俺はバイト先の先輩と「若者の街」こと原宿に来ていた。しかも、原宿の中でも若いキャピキャピしているような人たちが集まる場所だ。

あたりを見渡せばオシャレな服屋に、タピオカやハリケーンポテトなど写真映えする流行りのグルメばかり。


一階はキラキラとした電飾やオシャレな広告が眩しいくらいに並んでいるのに、ふと上を見ると普通の民家に見えるので不思議な感覚に襲われるが、それもこの原宿の面白いところだ。


そんな煌びやか原宿の街並みに点々と見かけるものがある。

ドネルケバブの店だ。

ハリケーンポテトやタピオカ、苺や葡萄が連なったフルーツキャンディーのような、如何にも若者たちにSNS映えで人気な料理屋がある中で、ケバブ屋もぽつぽつと見かける。


───ということは、ケバブはSNS映えして且つ若者の体を作る食べ物といっても過言じゃないのでは?


そう感じた俺はふと近くにあったケバブ屋の前に立つ。


「Heyブラザー、ケバブ食ベル?原宿一番ノケバブYo!」


俺に気づいたのか、ケバブ屋にいるちょっとマッチョでファンキーなお兄さんに慣れてなさそうな日本語で声を掛けられた。

見た目と喋り方でちょっと怪しい人に思ってしまう。

それもそのはず。俺はこの街に入って真っ先に、別のファンキーなお兄さんに捕まって偽ブランドを買わされかけ、先輩に手を引っ張られながら逃げてきたばかりだった。


でも、確かにこの回るケバブの肉たちからは美味しそうな香りが漂ってくる。

本能を刺激するような肉の焼ける匂いと、ほんのり感じるスパイスの香りだ。

これだけ良い匂いなら、味もきっと最高のはず。そうだ、ケバブとケバブ屋のお兄さんに悪いものはない。

そう思うと食べないわけにはいかず、俺はケバブを1つ注文した。


「オーケーYo、ビッグボス!チョトマッテネ!!」


そう言ってファンキーなお兄さんが、ケバブを作り始める。

ドネルケバブというのは積み重ねた肉を回しながら弱火でじっくり焼き、そして肉の焼けた部分を削ぎ落として、パンのような生地で野菜と共に挟む料理だ。

その行程を本場の人みたいなファンキーお兄さんがやっているのを見るだけで、原宿なのに本場のケバブを味わっている気分になれる。

にしても俺はいつ兄弟(ブラザー)から社長(ビッグボス)になったのやら。そもそも兄弟(ブラザー)でもないんだけどさ。


「Hey!出来タゼ、ビッグボス!熱クテ口ガ熱イカラ気ヲ付ケテ!」


そう言って、美味しそうに焼けた肉の匂いが香るケバブを渡してきた。

そして多分だけど「口が火傷しないよう気をつけて食べてね」って言いたいのだろう。

早速包みを開けて熱いうちに食べてしまおう。

大きく口をがぶりと齧り付く。

肉の旨みと溢れる肉汁がピリッとのキレのある香りと辛さのソースと絡み合う。そこに甘酸っぱく瑞々しいトマトとシャキシャキと軽やかな音を奏でるタマネギと盛りだくさんのキャベツ、それらをピタパンが喧嘩しないよう高め合うよう纏め上げてくれる。

ケバブの旨さは止まることを知らない。噛めば噛むほど、食べれば食べるほどその旨味が追い打ちをかけるように爆発する。強烈なインパクトとエネルギーを与えてくれる。

まるで原宿にいるキャピキャピした人達のように上がりっぱなしの旨さだ。

このエネルギーがこの地の若者たちの活力となり、活気溢れる街と化してくれているのだろう。

そう思うと、ドネルケバブの活力は俺たちの体内を循環してくれているように感じ、力が溢れてくる。

「さあ、色々あったけど、俺たちも原宿を満喫しましょう!」

この溢れんばかりに漲る活力を生かそうと、俺たちも原宿の若者たちに溶け込むように思う存分、楽しんでいった。


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