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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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梅雨を吹き飛ばすグリーンカレー

梅雨。

それは、湿気が強くなる季節。この時期になると、毎日蒸し暑くジメジメした空気のせいで、自分までジメジメした気持ちになる。

気分が重いというか、怠いというか、何かをやろうにも気力が湧かないのだ。

梅雨が始まった頃はまだよかった。中華まんを想起できるほどの余裕があったくらいだ。

だがこうも蒸し暑さが続くと、中華まんでも蒸しすぎて皮や生地がふやけて蕩けてしまうだろう。


俺は下校中、何かこのジメジメとした環境を紛らわす方法を考えた。だが今の俺にはそんな良い案は思いつかない。


───もう奥の手を使うしかない!


そう思った俺は、電車に乗り『奥の手』がある場所へと向かう。電車に乗って十数分、目当ての駅で電車を降りる。改札を出て、一目散に店に向かう。俺の心のバカンスを目指して。


「やっと…着いた…」


着いた先は、タイの料理を出す食事処。

この店の料理では様々なタイ料理が食べられる。タイと言っても、魚ではなく国の方のタイだ。

早速店に入り、カウンター席に案内される。

席に着いたらメニューを見る。とはいえ、俺が頼む料理は既に決まっている。これは店員が水を持ってきてくれるまでの時間稼ぎだ。

店員が水を机に置いた時に注文する。


「すみません、グリーンカレーを1つください。」

「かしこまりました。」


店員と交わす言葉はこれだけだ。

グリーンカレー。こいつが俺の奥の手だ。インドカレーやイギリス式のカレーとは違う爽やかな辛みを持つタイのグリーンカレーは梅雨にもってこいの料理だ。


暫く待っていると、店員が料理を持ってきてくれる。この時を待っていた。

まずはこいつを目と鼻で味わう。

緑色のルーが青々と茂る草木のよう。そして漂う爽やかな辛さの香りの中にあるココナッツミルクの匂いが、南国のビーチにあるヤシの木を思い浮かべさせてくれる。そして白い米、こいつはまるで太陽の光に照らされて白く輝く砂浜のよう。

そう、ここはジメジメした梅雨の日本ではない。照りつける太陽、爽やかな風、白い砂浜、そして緑が生い茂る真夏のビーチなのだ。



おっといけない、危うく目と鼻だけで真夏のビーチを謳歌してしまうところだった。

さあ、ここからは食して味わうとしよう。


まずはルーだけを掬って口に運ぶ。香辛料の爽やかな香りとココナッツミルクの優しい甘さと香りが口の中で広がり、そして鼻に抜ける。体に溜まった湿気を押し出してくれているようだ。ルーの辛さも丁度よく、舌に来るが胃に来ない良い辛さだ。

続いて野菜と一緒に食べる。ここのグリーンカレーはゴボウが入っているのか、食感がいい野菜が食べ応えを感じさせてくれる。パプリカやナスはよく煮込まれていて、口の中でとろりと溶けていく。

さて、次は肉だ。グリーンカレーと言ったら鶏肉。早速鶏肉を1つ口に運ぶ。よく煮込まれた鶏肉は口に入れた瞬間、ほろほろと崩れていく。ビーフシチューのテール顔負けの柔らかい鶏肉は、もはや飲み物だ。


口の中が辛くなってきたので、ここでライスを一口。ライスはうるち米ではなくタイ米を使っているおかげでパラパラだ。ルーの中にライスを流し入れ、カレーライスのように食べる。

米の一粒一粒にルーが絡み、サラサラと食べれてしまう。気がつけば、目の前には空っぽの皿が置かれ、俺の腹は満たされていた。


「ご馳走様でした」


勘定を終えて帰途に着く。

帰り道に思いっきり深呼吸をしてみると、ジメジメとした空気に爽やかスパイスパワーが打ち勝ち、俺は爽やかな気分でこの梅雨を乗り越えるのだった。

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