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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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咽せるほど、香り溢れし、豚骨ラーメン(字余り)

今日は寒波により都会でも雪が降っていた。

雪は地面に舞い降りて、やがて都会のアスファルトでできた道も白くなっていく。

そんな雪景色を見て俺は考える。


───豚骨ラーメンが食べたい。


雪のように白い、こってり系の豚骨ラーメン。

しかも今俺が食べたいのは、チェーン店のような万人受けのものではなく、博多にはありそうなあの豚骨特有の匂いをムンムンと漂わせる玄人向けの豚骨ラーメンだ。


そんな店、中々ないと思うはずだ。俺も中学の頃まではそう思っていた。

だが高校生になって活動範囲が少し広がったことで、俺の帰り道、最寄りの二駅隣にその店があることを見つけたのだ。

そして今、俺はその店に向かっているのだ。


「おお、この香り…もうすぐだな。」


店から少し離れたところからでも分かる豚骨ラーメンたらしめる強い豚骨臭。この匂いだけで───流石にやらないけど───茶碗一杯のご飯を食べられそうだ。

この匂いを感じたら後はその匂いに辿って向かうだけだ。

匂いを辿っていると、チェーン店では中々見かけられない電飾だらけの看板のラーメン屋に着いた。ここが今俺が求めていたラーメン屋だ。


店に着いたら早速食券を買う。こんな寒い環境は一刻も早く抜け出したいからな。


「さてと、今日はどれにしようか。」


券売機の前で悩む。

この店の豚骨ラーメンは白、黒、赤の3種類ある。

白は皆が思う雪のように白いスープのスタンダードなタイプ、黒は豚骨スープにマー油を加えたもの、赤は唐辛子が散りばめられた辛いもの好き向け…と、3種類に分けられ、どれも違った美味しさがあるので悩むところだ。

しかし、今日俺が楽しみたいのは純粋且つ強烈な豚骨の香りだ。ならば答えは1つ。


「今日は白だな。」


俺は白の豚骨ラーメンの食券を買い、店主に渡してから席に着く。

麺の硬さはバリカタで頼む。


ラーメンを待つ間、店に充満する豚骨臭を肴に水を飲む。

食べるのは勿論好きだが、この待ち時間も意外と好きだったりする。時間を味わうって言うのか分からないけど、こういうのも味になる気がする。

この感性、ちょっとおじさん臭かったりするのかね?


「はい、豚骨ラーメンの白、お待たせしました〜!」


そんなことを考えながら待っていると、出来たての豚骨ラーメンがやってきた。

降り積もる雪が黒く見えてくるほどに白いスープと、この白さからは考えられない濃い獣の香りは、いつ前にしてもインパクトが大きい。


「では…いただきます。」


まずはスープから。

熱々のスープをレンゲで掬い、口に流し込む。

豚骨のまったりとした脂とコクが口の中で爆発するように広がる。

そして喉を流れて胃にたどり着くと、そのスープの熱が雪降る中で冷えた体にじんわりと広がって身体を温めていく。

万人受けするような上品でお淑やかな味ではなく、攻撃的で強い旨みと香りを放つのがここのスープの魅力だ。

ちなみに、この時啜るように飲むのは危険だ。このインパクトのある豚骨の香りが喉元を通り越して気管にガツンと攻撃してくるからだ。

あくまで俺の飲み方ではあるが、こういうインパクトのあるスープは、口に運び、流し込み、口の中で味わい、飲み込む…こうやってスープを飲むのがベストだ。


一頻りスープを味わったら、次は麺をいただく。

豚骨ラーメンといえば、やはり細麺だ。豚骨醤油だと太麺タイプを見かけるが、純白な豚骨スープには細麺と決まっているのだろう。

熱いうちに勢いよくその細麺を啜る。


「ゴホッ、ゲホッ…あー、やっぱり強いな。」


麺と共に現れ、口から肺へと押し寄せてくる強い豚骨の香りに、思わず咽せてしまう。

だがこれで良い。いや、これが良い。

これこそ俺が求める豚骨ラーメンだから。

この香りも味として受け止め咀嚼していく。肺に向かっていった豚骨臭を鼻に抜けさせながら麺とスープの絡みを味わっていく。


時折スープに浮かべられたトッピングたちをつまむ。

紅生姜の酸っぱさが口の中に残る豚骨のコクをリセットさせ、また一から豚骨の旨みを楽しめる。

チャーシューは分厚く切られており、それがスープをこれでもかというほどに吸い、豚骨の香りも纏ったことでワイルドな味わいを楽しめる。

トロッと半熟の煮玉子はスープのこってり感と合わさり、最高のご馳走になる。

またこれらのトッピングを麺とスープとを合わせると更に美味くなる。


麺を啜る、スープを飲む、麺を啜る、スープを飲む…このループの間に時折トッピングを食す、水を飲むを組み込むことで、お椀が空になるまで一心不乱に食して抜け出せない輪廻が完成する。

骨の髄まで味わい、骨の髄まで温まる。これだから冬の豚骨はやめられない。

俺は文字通りお椀が空になるまで、豚骨ラーメンを味わい尽くした。



「ありがとうございました〜!」


食べ終えた俺は、店を出て思いっきり深呼吸をする。熱った体に冷たい空気が入り込み、暖まった豚骨熱が抜けていく。


「おお、豚骨の香りがする。」


豚骨スープが絡んだ麺を啜り続けた影響か、体内にまで豚骨臭が染み付いていたようだ。

これもまた豚骨ラーメンの良いところだ。帰り道はこの余韻を楽しみながら帰るとしよう。

俺は白い雪道の中、旨みと香りの余韻を楽しみながら家へと向かっていった。

今回は豚骨ラーメンでした!

良いですよね、豚骨。あの真っ白なスープからは想像できないあのワイルドな香り…。チェーン店で食べられるものよりもっと豚骨臭を感じるラーメンって、時折食べたくなるんですよね…

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