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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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梅雨に楽しむ中華まん

梅雨が始まり、湿度が高くなるこの時期。


この時期、学校ではクーラーがつけられず、この湿気もどうにも出来ず、教室の中は蒸し風呂状態になっていた。


───肉まんが食べたい。


俺はそんな環境で授業を受け、下校中にはそんなことを考えていた。

夏に入り気温が上がり、梅雨のせいで湿度が上がったこのサウナのような空間に、コンビニに置かれている蒸し器を連想してしまったからだ。

しかも1限が体育だったため、運動後の蒸し暑さも相まって、ちょっとでも頭に過ぎってしまうと、もう食べたくて仕方なくなる。

実を言うと、2限の半ばあたりから既に肉まんは食べたくなっていたが、その時はあんまんやピザまんなど他の中華まんも選択肢に入っていて迷っていた。


だがいくら食べたいと思っても、避けられない問題点が1つあった。それは、今が梅雨…つまり夏に入っているということだ。

学生の味方ことコンビニに行っても、夏に肉まんを売るコンビニはない。スーパーでも見つけるのは難しいだろう。

電車の中でもずっと肉まんのことを考えていた。最寄駅に着き、ちょっとした思いつきと希望を持って駅ナカの店のコーナーに入る。

そこには、おにぎり屋…パン屋…焼き鳥屋…揚げ物屋…焼売屋…惣菜屋…色々な店が駅ナカで構えていた。

俺は色々な店のショーケースや棚の商品を眺めていた。

ふと焼売屋のショーケースに目が止まった。

「嘘だろ…お前、こんなところにいたのか?」

様々な焼売が並べられている端っこで、肉まんとあんまんが蒸し風呂の中で待っていた。

まさか駅ナカで会えるとは!これは運命の出逢いと言っても過言じゃないだろう。

値段を見る。300円…冬であればコンビニと比べて高く感じただろう。だが今はコンビニでも売られない時期。例えこの肉まんが1個あたり500円だろうと、今の俺には安く感じてしまう。これが需要と供給の関係ってやつなのか。

「すみません、肉まんを1つ。あと……」



改札を出て、近くのベンチに座り、袋を開け、肉まんを取り出す。

その肉まんは、夏の暑さすら霧が掛かる明け方の涼しさのように感じてしまうほどに熱く、蒸したての良い香りもしていた。しかも、コンビニの物よりも大きく、食いごたえも抜群だろう。

「いただきます」

一口頬張る。齧ったところから、溜まりに溜まっていた熱気と肉汁が溢れ出す。豚ひき肉がジューシーな肉汁を出し、味付けも最高。包み焼きハンバーグでもこれほどの肉汁は出せないだろう。

蒸しあがった生地もふんわりと柔らかく、肉の旨みを閉じ込めつつ、染み込んだ肉汁の部分がまた美味しく感じられる。

「美味ぁ…」

肉まんを食べると肉汁と熱のほかに幸せも溢れてきて、その幸せに惚けてしまう。

いかんいかん、惚けていたらせっかくのアツアツの肉まんが冷めてしまう。

熱いものを食べる時は一対一の真剣勝負。熱いうちに食べてしまわなければ食べる者の負けなのだ。二口三口と、ひき肉と生地の織りなすハーモニーを楽しみ、熱を味わいながらただ無言で食べ進めていく。

三分の一くらい残ったあたりで、店員さんが付けてくれたカラシを開け、断面に塗って齧りつく。カラシの辛さが、肉の脂を爽やかにしつつ旨みを更に上げてくれる。そしてカラシのツーンと来るような辛さがクセになる。肉には芥子と古くから言われていたらしいけど、こういうことだったんだな。

あっという間に肉まんを食べ終えてしまった。


だが、俺にはまだ楽しみが残っている。袋からもう一つ中華まんを取り出す。あんまんだ。

ホカホカのあんまんを齧り付くと、ふんわりした生地の中からねっとりと濃厚な甘さの餡子が味わえる。あんぱんや饅頭とはまた違った味わいのホクホクの餡子が心をホッとさせてくれる。夏じゃなかったら熱い緑茶と一緒にいただきたいものだ。いや、ここは飲茶に点心みたく烏龍茶でいくべきか……

まあそんなことは今はいい。考え事は食べてからにしよう。その方があんまんの糖分で素早く考えられそうだし、何より、熱いうちにいただきたいから。



ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…


あんまんを食べ終えて帰途につく。

結局、緑茶か烏龍茶、どちらが良いかなんて決められなかった。

何故なら……今は熱いお茶よりも冷たい麦茶が飲みたかったから。

中華まんを食べて溜まった熱に冷たい麦茶を流し込んだ時の爽快感。まるで、サウナの後の水風呂のように爽やかな気分だ。これが夏の中華まんの楽しみ方でもある。


「はあぁぁぁっ………うっま」


梅雨って中華まんの他にも焼売とか…蒸し料理が食べたくなりますよね〜。えっ、違う…?なら、試してみてください、中華まんの熱まで美味しく味わった後に冷たい麦茶は最高ですから。

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