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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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「こたつ」という魔物と禁断の果実「みかん」


「冬になると機械と果実は仲良くなる」



俺はこんな格言を中学の頃に残したことがある。一見何を言っているのか分からないだろう。

機械に果汁を掛けると壊れると言われるくらい相性は悪いものだ。それ以前に、俺が中学の頃に何故そんなトチ狂ったことを言い出したのか。今では謎だ。

だが毎年この寒い時期になると、この狂った格言の意味を身をもって知ることになる。


「参ったな、抜け出せないや。」


俺は今年も抗えなかった。


ヤツは冬になると人の手により生み出され、足を食いつかれてしまったら最後、腰まで食いつかれて抜け出すことはできない。

ヤツの中は春のように暖かく、その暖かさを知った人間はやがて抵抗する力を吸い取られるかのように失い、俎上之肉(そじょうのにく)になってしまう。

そうと分かっていても、こいつが現れると足を近づけてしまう。それが…


コタツというものだ。


「ダメだ、完全に抜け出せなくなった…」


俺もそのコタツの餌食になっている最中だ。

まったく、人類はなんという魔物を作り出してしまったのだろう。友達から借りた漫画に載っていたミミックとかいうものよりも、もっと多くの人間を取り込んでいるに違いない。

って、こんな話をしているうちに、「こいつから抜け出そう」という気力が徐々に吸われていく。


─── 抵抗するためにも、何か食べなくては…


俺はヤツの上に乗っている籠からみかんを1つ取り出す。

皮を剥き、アルベドとかいう少年心をくすぐる名前をした白い部分をほんの少しだけ取ってから口に放り込む。

口の中で弾け出てくる甘酸っぱい果汁、薄皮が割れた後に楽しめる果肉のつぶつぶ感…これが美味いんだよな。


─── 嗚呼、やっぱりコタツにはみかんだよな…


コタツという温かくて抜け出せない物に食いつかれている中で食べる、甘酸っぱくてジューシーでビタミン豊富なみかん。

普段色々な場面で食べられるみかんだが、コタツと組み合わさると悪魔的な美味さに変わる。しかも皮を剥くのに包丁いらずで、俺たち庶民の手に容易に届く値段なのがまた素晴らしいコタツフードだ。


個人的に、こたつに冷凍みかんを合わせたら更に悪魔的だ。


よく「こたつにはアイス」という人がいるだろう?言い分は理解できる。こたつに足を突っ込んで体が温かくなって来たところに入ってくる冷たいアイスという、あのマッチポンプが好きなのだろう。冷凍みかんもそうだ。アイスのような冷たさを感じながら、みかんの甘酸っぱさを堪能できるのが良い。

やはりこたつとみかんの相性はやはり恐ろしい物だね。


「あっ、ミカンの皮は捨てないでね、今日のお風呂に使うから。」


「はーい。」


まだこたつに捕まっていないお袋からそう告げられて返事をする。

みかんの皮はお風呂に入れることで体を温める効果があるらしい。可食部だけでなく皮も使えて、しかも体を温めてくれるものとは…みかんは恐ろしい果実だ。

庶民の味方でもあり、冬の味方でもあり、こたつの味方でもあるのだから。


「あーあ、世の中にこたつについて調べる学問とかないかな?こたつ力学とか、こたつ心理学とか…」


そんな自分で言っても訳の分からないことを呟きながら、俺はまたみかんを1つ取り口に放り込む。

俺のこたつライフはまだ始まったばかりだ。


こたつ、良いですよね。

やはり日本の冬といえば、コタツにミカン。地方によってはコタツに羊羹という方もいますが、キゲンさんはやはりミカンですな。

この悪魔コンビが合わされば、どんな真面目な人間すら堕落させられる…そんな気がします。


キゲンさんも抜け出せません…助けて……あぁ、あったかい。

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