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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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年越し蕎麦は天麩羅か鴨か

1ヶ月ほど空いてしまい申し訳ございません。

リアルの方でちょうど繁忙期だったもので…ですが、今日のこれだけはどうしても書きたかったので、投稿いたします!


題材はそう、年越しそば!

皆さんにズズズと蕎麦を啜りながら読んで頂きたいお話でございます。

「天ぷらが良いに決まってるわ!」


「いーや、鴨こそ至高だ!」



些細な夫婦喧嘩勃発中のところ失礼します、午岩(うまいわ ) 正義(まさよし)です。今日は今年最後の日、いわゆる大晦日。


皆さんは年越しといえば何が思い浮かぶでしょうか?大掃除…おせち作りもしくは受け取り…除夜の鐘…歌番組…ライブと、色々とあるでしょう。

我が家では年越しといえば欠かせないものがあります。


「年越しと言ったら海老の天ぷらが乗った天婦羅そばに決まってるでしょう!?」


「いやいや、肉厚ジューシーで旨い出汁も出てくる鴨南蛮そばに決まってるだろ!!」


「「正義はどっちが良いと思う!?」」


そう、年越しそばです。

そして今、その年越しそばで天麩羅か鴨南蛮、どちらを食すかで争う仲良し夫婦の間に挟まれております。

この夫婦喧嘩は毎年恒例なので、『嗚呼、今年も年越しの時期がやってきたな。』と思うようになってきました。


さて、夫婦喧嘩の件ですが…俺からしたら正直言ってどちらでも良い。

親父が作る鴨南蛮そばも、お袋が作る天麩羅そばも、どちらも美味しいから。

小学生の頃に「どっちも半人前ずつ貰いたい」と言ったら、2人して「どちらか一人前にしなさい!」と言われたので、どちらか選ぶまで年越しそばを食べられない。

とはいえ、ここで俺が決めないと年越しそばが年明けそばになってしまう。どうにかしなければ…


ん、待てよ?一人前にしなければいけなくて、どちらとも美味いのならば…どちらともまとめて頂けばいいのでは?

そう思いついた俺は提案を試みる。


「鴨だし天麩羅そばとか、どうかな?」


「「はあ!?」」


「親父が作る鴨南蛮も、お袋が作る海老天もどっちも美味いのは親父もお袋も知ってるでしょう?ならば、今年最後の夫婦の共同作業って感じでコラボさせるのはどうかな〜って…」


「夫婦…」「共同で…」


俺の提案に互いに顔を見合わせる。親父がお袋の天麩羅を認めているのも、お袋が親父の鴨南蛮を認めているのも事実だし、互いに尊重しているのも知っている。ならば、夫婦共同そばを作ってみるのもアリだと思い提案した。

その結果…


ジュワアァァァッ…

フツフツ、グッグッ…

パチッ、ジュウゥゥッ…


「天ぷら、もうすぐで揚がるよ。父さん、鴨出汁はどう?」


「俺ももう少しで最高の鴨出汁が出来るぞ〜。正義、ネギはどんな感じだ?」


「良い焼き色になってきたよ、程よいシャキシャキを味わいたいなら今かな。」


お袋は天ぷらを作り、親父はその隣で鴨出汁を作り、俺はベランダで七輪を使ってネギを焼いていた。大晦日で今年最後の親子の共同料理ってやつだ。


「よし、ネギはもう完成だな。母さんはシャキシャキでいいか?」


「アタシはシャキトロで!」


「親父はシャキシャキ、お袋はシャキトロね〜。」


ネギの焼き加減は親父もお袋も俺も好みが違うので、あらかじめ聞いておく。

親父は程よく焼き色がついてネギの辛味を楽しめるシャキシャキ派。

お袋はそこから更に火を通して中がトロッとし出して甘みが滲み出てくるくらいのシャキトロ派。

そして俺は、その皮を取り除く前提で外が黒く焦げる寸前まで焼いていく甘さオンリーなトロトロ派だ。

そのため、俺は七輪との一対一の真剣勝負を繰り広げる必要がある。気分は宛らお燗をつける職人さんだ。


「天ぷら揚がったよ。」


「こっちも鴨出汁のつゆ、完成だ!」


「こっちは親父のネギは完成、お袋のはもう少し、俺の分はあと3分くらいかな。」


もう少しで最高のシャキトロ具合になる。ここからは瞬きも出来ないくらいに集中せねば…


「よし、ならば母さんはかまぼこを切ってくれ。俺は蕎麦を茹でる。」


「かまぼこは紅白どっちがいい?」


「どっちも!」


「わかったわ。」


と、親父とお袋はそのネギを待つ間に速やかに蕎麦と追加のトッピングを作り始める。

やっぱり年越しそばと言ったらかまぼこは欠かせないだろう。


「ネギ3人分、完成!」


「かまぼこも出来たよ!」


「よーし、そばももう直ぐ完成だ。」


「じゃあ正義はお椀の準備!」


「イエス、マム!」


「そこは『了解』とか『分かった』でいいから。」


「了解。」


そうして俺はお椀を用意し、茹で上がった蕎麦を軽く湯切りしてお椀に盛り付ける。

あとは親父特製の鴨出汁のつゆを注ぎ、お袋特製の天麩羅、俺特製の焼きネギ、かまぼこで彩りを添えれば…

『一家共同年越しそば』の完成だ。


「それでは…」


「「「いただきます!!」」」



俺たちは食卓を囲み、合掌し、蕎麦を頂く。


まずはつゆを一口啜る。

鴨の旨みとコク、甘い脂が口の中で沁み渡る。鴨南蛮そばの強みである鴨出汁つゆは年越しそばには最適だ。

お次は蕎麦を箸で掴みズルズルと啜っていく。そばの香りが口のなかで口の中に広がり、鼻に抜ける感覚がたまらない。しかも鴨つゆとよく絡むのも最高だ。


さて、いよいよ本命、お袋特製の天麩羅だ。鴨出汁との相性は果たして…うん、美味い!

天麩羅故のあっさりした味わいと海老の旨みが、鴨の主張に負けず且つ上手く調和している。

この夫婦あって、この料理の相性あり。やはり親父とお袋は、料理同士も仲がいいのだろう。


さてと、俺のネギは…勿論、美味い。

トロトロで甘いネギにつゆのしょっぱさ…我ながらパーフェクトな仕上がりだ。

かまぼこも、つゆを吸ってほんのり色が付いている。これはこれで蕎麦とよく合って美味だ。

鴨だし海老天蕎麦のトッピングには最適な組み合わせだろう。



「やっぱり、母さんの天麩羅は美味いな。」


「何言ってるの、父さんの鴨出汁が利いているのよ。」


「どっちも美味しいでしょ。強いて言うなら、俺のネギが2つを纏め上げてると言っても過言じゃないんじゃない?」


「それは過言でしょ。」


「母さんの言う通りだ。まあ、良い具合ではあるがな。」


と、さっきまでの喧嘩が嘘だったかのように仲良し夫婦へと変わった。よかった、これで今年はまったり年を越せそうだ。


皆さんは年越しそばは何を食べますか?

地域や家庭によっては蕎麦ではなく、饂飩やラーメンを頂くところもあるでしょう。

キゲンさんのところは、今年は家族の互いの主張を尊重してコラボ蕎麦をいただきます。

皆さんも年越しそばを食べて、来年も細く長く生きられるよう頑張りましょう!


それでは、良い年越しを。

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