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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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徒然なる築地巡り 玉子焼き編

どうも皆さん、午岩です。

今日俺はどこに行っているでしょう?


…なんと、築地の場外市場にやってきています!!


ここに来た目的は1つ…築地グルメを食すため!噂によれば、築地のグルメは俺たち学生でも手が届く価格で食べられる美味しいグルメがあるのだとか…。

そんな噂を耳にしたら居ても立っても居られず、休める日に行こうと決意し、

なんと今日、その築地に足を運んだのだ!


え?「今日は平日だから普通に学校があるだろう」…って?

今日はなんと学校の文化祭の振替休日!

だから今日は平日で比較的空いている状態の築地に行くことができた。


初めて見る築地の景色、色々な店から漂う絶対美味しいと確信できる料理の匂いが、俺のテンションが高めてくれる。


─── さあ、築地メシを堪能しよう。


俺はそう決意して、築地の場外市場に入っていった。




「まず最初に何を食べよう?」


…俺は悩んでいた。

築地の場外市場に来たのはいいが、何を食べるかはまったく計画していなかった。

行き当たりばったりで美味しいグルメに出会えると思っていたからだ。

だが、いざ来てみると、そこは四方八方に美味しい匂いが漂う店だらけ。何から手をつけようか迷ってしまう。

下調べをしておくべきだった…。


とはいえ、そんな悩みは後の祭り、今更の話だ。ここは落ち着いて築地について考える。

築地と言ったら何が有名だろう…?新鮮な魚、美味しい肉、瑞々しい野菜…他にもその新鮮な食材を使った料理が色々ある。

料理といえば、高級寿司屋の職人でも玉子焼きは築地から仕入れる…という噂を聞いたことがある。

きっとそれほど築地の玉子焼きはうまいのだろう。


─── よし決めた。築地グルメの一品目は、玉子焼きにしよう。


俺はそう心に決め、玉子焼きが売られている店を探した。

しばらく歩いていると、どこからかほんのり甘い玉子の匂いが漂ってきたので、その匂いを誘われるように辿っていった。

そして気がつけば、玉子焼き専門で売っているお店を発見していた。

しかもその玉子焼きはお客さんの前で焼いているものだ。

つまり、焼きたての玉子焼きが食べられる。しかもなんと食べ歩き用に串に刺さった玉子焼きが食べられるのだ。その値段はなんと、1本150円!!


「さて、どちらにしよう…」


俺はここで究極の2択を選んでいた。

というのも、その店では焼きたての玉子焼き以外に、少し冷やした玉子焼きも売られていたからだ。

そして、焼きたての玉子焼きの方は長蛇の列と言えるほど並んでいたが、冷たいタイプはそこまで並んでいなかった。

普段なら玉子焼きにそこまで執着を見せないが、ここは築地の玉子焼き専門の店…きっと焼きたては最高に美味いはずだ。

そう思うと、俺は焼きたての方が食べたくなり、長蛇の列に並ぶ。


並ぶ間もワクワク感が湧いてくる。

今俺が並んでいる列のすぐ近くで、その職人さんが玉子を焼いてところを透明な壁越しに見られるのだから。

あらかじめ作っておいたその店特製の卵液を熱々の玉子焼き器に流し込み、ジワジワと小さな音を立てながら玉子焼きが出来上がっていくのを見られる。それだけで、玉子焼きを味わっている気分になれる。


しばらくその職人さんの技を見ていたら、もう自分が注文する番になるまで前に進んでいた。


「一本ください!」


俺は店員さんにそう言って150円払い、さっき焼けたばかりの玉子焼きが切り分けられ、串に刺さった玉子焼きを受け取る。

向日葵が白く見えてしまうほどの美しい黄色、手にとって分かる玉子焼きの重量感、そしてほぼゼロ距離で感じる優しく甘い匂い。

食べる前から、なんというか、「空気が美味しい」って言葉が似合う一品だ。


さて、目で味わうのはこれくらいにして…焼きたての熱いうちに一口いただこう。


「美味っ…」


一口かぶりつくと、咀嚼する前から「美味い」という言葉が漏れ出てくる。

湯葉にも勝る滑らかな舌触りに、ふわふわの食感、卵のコクのある味わい。ほんのりお出汁の香りと旨味、染み出す砂糖のような甘さ…これらが渾然一体となり口の中で幸せを生み出していく。

寿司に使う魚に鮮度があるように、玉子焼きにも鮮度があると感じた。築地で食べる焼きたての玉子焼きは、どんな高級寿司でも味わえないであろう、築地の味だ。

この優しく幸せへと(いざな)う築地の味を噛み締める。飲み込んだ後もまだ幸せが続き、この玉子焼きの虜になってしまう。

気付けば串に玉子焼きはなく、ただ口の中の幸せだけが残っていた。


「はあ、美味かった〜」


俺はそう満足しながらも、ふと冷やした方の玉子焼き串が目に入る。


─── 熱々であれだけ美味かったのに、冷やしで提供するということは、そっちはそっちで別の味わいがあるのでは?


そんな考えが頭を()ぎる。そして冷たい方も食べたくなった俺は…


「毎度、一本取って行ってね。」


「ありがとうございます。」


…その欲に従い冷たい方も買った。

だが後悔はしていない。これでまたあの幸せを味わえるのだから。


「甘っ。えっ、甘い!?」


一口食べると感じる、しっとり食感の玉子焼き。焼きたてアツアツの玉子焼きとはまったくの別物だ。

熱がない分より甘さが際立ち、ほんのりお出汁の香りがするシロップのように甘い汁が染み出てくる。

しっかりめのプリンを食べているみたいに甘くて美味しい。玉子焼きを甘味として味わいたいなら、この冷えたタイプの玉子焼き串の右に出る物はいないだろう。

そう思えるほどの幸せになれる甘さと美味さだ。

正直、玉子焼きでここまで甘さを感じられるとは思わなかった。俺が考えているよりも、築地の玉子焼きは奥が深いのだろう。


俺はその玉子焼き串をペロリと食べ終え、そう感心と反省をする。この反省を生かすためにも、今日はこの場外市場でたらふくグルメを楽しもう。そう意気込み、俺は玉子焼き屋を後にした。


先日、築地に食べ歩きグルメの旅…もとい情報収集に行ってきまして、そこで築地の玉子焼きと出会いました。

お鮨屋でもよく玉子焼きを頼みますが、築地から仕入れているとはいえ、やはりその店で食べられる新鮮な玉子焼きの方が勝るのでしょう。それほど、築地で食べた玉子焼きは衝撃的でした…

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