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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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品川駅のB級立ち食いグルメ


『品川〜、品川〜、ご乗車ありがとうございます。』


学校からの帰り道。

目的の駅に到着したので急いで山手線を降りる。

到着した…とは言ってもここは乗り換え用の駅なのでここから更に電車に乗る。

本当なら東京や新橋で降りた方が乗り換えはもっと楽なのだが、品川まで乗っていたのには理由がある。


それは…山手線のホームにしかない立ち食い蕎麦屋で、とある名物グルメを食すためだ!

そのグルメというのが…『品川丼』!!

東京や新橋では売られていない、品川のグルメ…しかも年々ホームの工事で立ち食い蕎麦屋が減っているせいで、物件数的な意味で食べられなくなってきている絶滅危惧グルメ。

山手線のホームもいつ工事されるか分からないし、こういう駅のグルメは食べられるうちに食べに行かないとな!


俺は駅のホームで例の立ち食い蕎麦屋を探す。と言っても、もう場所は知っているのでその店に向かって歩くだけだ。

ホーム内を歩くこと約2分。目的の店に着いた。

早速食券売り場で「品川丼」と書かれた食券を買い、店に入り食券渡し口に出す。


「品川丼、一丁〜!!」


店員さんの元気な掛け声が入り、品川丼なるものを作っていく。

(どんぶり)に飯をよそり、その上に何かのつゆに飛び込ませたかき揚げみたいなものを救出して乗せる。

あとはお盆にその丼、漬け物が乗った小皿、味噌汁ならぬ蕎麦汁が入ったお椀を乗せれば完成。


「品川丼のお客様〜!」


と掛け声が入り、俺はそのお盆を受け取った。

見た感じは大きなかき揚げが乗った丼だ。だがこれを「かき揚げ丼」とは言わずに「品川丼」と呼ぶくらいだ。きっと何か仕掛けがあるはず…。

そう思い、かき揚げと思しきこいつにがぶりと食らいつく。


「…ッ!!」


食らいついた時に気づいた。

これはかき揚げじゃない、たぬきだ!

たぬきそばを頼んだ時に、蕎麦の上に乗っているあのザクザク食感の天ぷらだ。

そいつが甘じょっぱいつゆにどっぷり浸かっていた時に吸い込んだのか、噛む度にじゅわりとつゆが溢れてくる。

昔親父に連れて行ってもらった天ぷら屋で食べた「天茶」とはまた違う、ガツンと来るボリューム感がある味わいが、胃に満足感を与えてくれる。

このザクザク食感と甘じょっぱさでご飯が進む。かき込まずにはいられない!


丼をかき込みながら、時折添えられた漬け物をいただく。

色が変わるくらい漬け過ぎているのだろう、見た目がかなり紫色だ。柴漬けとはまた違う紫色。そんな漬物の味は………うん、思った通りしょっぱい。

だが、秋になってもまだまだ地味に暑い残暑の時期、汗で塩分をかなり失うので、このくらいの漬け具合は正直言って有難い。

しかもこのしょっぱさが丼を食べるのを加速させる。天ぷらも漬け物もこの丼飯(どんぶりめし)には最高のおかずだ。気付けば、丼には米粒ひとつ残っておらず、漬け物も食べ切っていた。


最後にお椀に入った蕎麦汁で締める。

蕎麦汁と言っても、蕎麦が入っているのではなく、蕎麦つゆを汁物として飲めるようにした物だ。

丼を食べたあとなのでちょっと冷めてしまったが、それでも充分温かい汁の熱が体に染み込んでくる。蕎麦屋の中でも立ち食い蕎麦屋でしか味わえないであろう熱を味える汁物だ。


「ふう、ご馳走様。」


蕎麦汁も飲み干し、お盆をさげて店を出る。

野菜は漬け物のみの完全エネルギー食な働く男のメシ……品川丼。


─── できればこのグルメを、まだまだ味わえるよう生き残って欲しい。


絶滅危惧グルメの存続を願いながら、俺は山手線のホームを後にした。


キゲンさんは学生時代、品川駅の立ち食い蕎麦屋には大変お世話になっていました。

特に品川丼は学生の胃袋をがっちり掴んでくる一品だったので、大好物でしたよ。

今はもうおじさんなので品川丼を食べ切れるか分かりませんが…きっと食べ切れちゃうんだろうな…。

今後、山手線で品川駅に来た時は是非ご賞味を。

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