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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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雨の日のコロッケ

今日は休みの日…

親父とお袋はデートで出掛けていて、俺は家で留守番をしていた。部活もなく、課題を終えた俺は、自室でただ横になっていた。

自室の窓からザーザーと雨が降る音が聞こえる。

窓を見ると、窓の外が水滴で見えないほどに大雨が

降っていた。

最近暑さが続いていたのもあって、雲に大分水が溜まっていたのだろう。だがこの雨も、晴れの暑さの間に撒かれる打ち水みたいなものだ。

次の日はきっと涼しくなっているだろう。


───コロッケが食べたい。


大雨を見ていると、ふと昔インターネットで見た話を思い出す。台風の時にはコロッケを食べる風習が出来たという話だ。

今は台風とまではいかなくとも大雨だ。そのせいか、無性にコロッケが食べたくなる。

そして嬉しいことに、俺の家から商店街まで片道徒歩5分圏内。傘を差して買いに行って帰ったところで10分程しか掛からない。

これだけ近くにあるんだ。行かない手はない。

俺はポケットに鍵と財布を突っ込み、家を出て、傘を差しながら商店街へと向かう。


商店街にある肉屋に到着した俺は、ショーケースの中を見る。ショーケースには、色んな惣菜がある中で、コロッケが俺を待っていたかのようにずらりと並べられていた。

財布の中を見る…銀行に行かなかった俺の財布の中には100円玉が3枚…あと他の小銭が少ししかなかった。

だが心配はいらない。この肉屋のコロッケは美味いうえに安いからだ。3個買ってもお釣りが出てくるぐらいに安いのだ。

「すみません、コロッケを3つください」

「はいよ、コロッケ3つね」

肉屋のおばちゃんがトングでコロッケを持ち上げ、紙袋の中に詰めていく。

店で揚げてくれているので、トングで挟む時からザクザクと音がする。

この音が食感を想像させ、俺を興奮させてくれるのだ。

お代を払った俺は、おばちゃんから商品を受け取ると、早くコイツを味わうために足早に家へと帰った。


家に帰って、手を洗う。

そして、冷凍ご飯をレンジで温め、コロッケを皿に盛り付ける。

最後に温まってご飯を茶碗に入れれば、今日の昼飯完成。

「いただきます」

まずは何も付けずにコロッケを一口齧る。

サクッと軽やかな音を奏でて口の中に入っていく。口の中ではサクサクと音を立てながら、ホロホロと崩れていく。

店で揚げたコロッケの熱、衣の食感、ホクホクのじゃがいもの仄かな甘み、中に入っている挽肉の旨味が口いっぱいに広がる。ソースを掛けていないのに、あっという間に1つ食べてしまった。

残りは2つ、ソースとの共演を味わいたい俺は1つにウスター、もう1つに中濃ソースを掛ける。

「まずはウスターから…おっ、これはイケるな」

衣がソースの色に染みたコロッケは、少ししっとりしたおかげか、ジャガイモのホクホク感が際立って、後味もすっきりしていて美味い。ご飯よりもコロッケが進み、ウスターを掛けたコロッケをペロッと食べ終えてしまった。

「最後に中濃…やっぱり中濃は美味いな」

衣がソースをあまり吸わないおかげか、衣はサクッとしたまま、しょっぱい中濃ソースがよく絡んでご飯が進む。ソースのしょっぱさがご飯の甘みとひき肉の旨みを引き立たせ、箸が止まらない。

気がつけば、コロッケは全部腹の中へ収まっていた。

「ご馳走様でした。」

皿を洗って乾燥器に伏せ、自室に戻る。

次コロッケを食べるときは銀行でお金を引き落としてから買いに行こう。

そう決意したのだった。


お肉屋さんの惣菜って美味しいよね。

コロッケなんて1個100円もしないで売られているのにあの完成度はもはやチートだよ。ご飯が止まらない。

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