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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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蜜より甘い3つの芋



『…焼〜き芋〜…石焼〜き芋〜〜、焼〜き芋〜』


最寄りの改札を出て家に帰っている途中、そんな歌が聞こえてきた。

歌の出所をらしき方を見ると、そこには焼き芋屋のトラックが停まっていた。


秋から冬にかけての風物詩とも言える石焼き芋屋のトラックとそこから流れる独特な歌。この歌を聴くと、より秋が来たと感じられる。


俺が勝手に「秋の甘味四天王」と呼んでいる物の1つ、さつまいも。その芋を熱い石でじっくりと焼き上げることによって生まれる蜜にも勝る甘さは、まさに秋にしか味わえない御馳走だ。


トラックから漂う石焼き芋の香ばしい匂いが、俺の食欲を刺激する。これを嗅いでしまったらもう本能には逆らえない。


─── よし、今日は焼き芋を味わおう。


俺はそう決意し、焼き芋屋のトラックに向かった。トラックの方へ着いて、俺はまず驚いた。

この石焼き芋屋、よくスーパーで売られる石焼き芋と違い、紅さつま,シルクスイート,安納芋…と、なんと3タイプの焼き芋が売られているのだ。


「すいません、全種類1つずつ下さい!」


俺は焼き芋屋のお兄さんにそう注文する。

3つの中から1つを選ぶことなんて出来ない俺は、3つとも買ってしまった。

でもこのくらいの贅沢は許されて良いはずだ。何せ、今日はバイトの給料日なのだから。


「はい毎度、熱いから持つ時気をつけてな。」


「ありがとうございます。」


お兄さんから焼き芋が入った袋を受け取り、礼を言う。そして俺は足早に家に帰った。



帰宅したら、すぐに手洗い,うがいを終え、袋から焼き芋を取り出して皿に乗せる。

紡錘形で美しい曲線を描く紅さつま、さつまいもと言ったらこの形でしょうと言わんばかりの美しい姿を魅せるシルクスイート、ぽってりと妖艶かつふくよかな姿の安納芋…どれも凄く美味そうだ。


まずは「紅さつま」からいただく。

皮を剥いて一口齧る。

砂糖のような優しい甘さと、さつまいもを芋たらしめるホクホク感が味わえる。こいつは甘さというより、焼き芋でしか味わえないこのホクホク感を楽しむには最適なさつまいもだ。

そして紅さつまにはバターを1切れ乗せて溶けたバターと共にいただく。ホクホクとした芋にバターが加わることによって芋の食感をしっとりとさせ、かつバターの塩味とコクが芋の甘さを引き立たせて、紅さつまが1つランクアップした良いお味になった。

もし、「じゃがバター」ならぬ「さつまバター」を作るのであれば、紅さつま以上の適任はいないだろう。


次は「シルクスイート」だ。

紅さつまがホクホクだったのに対し、こいつはねっとりとした舌触りと食感が味わえる。

程よい優しい甘さと絹のように滑らかでねっとりとした舌触りはシルクスイートの強みだ。

しっとり食感で優しい甘さのさつまいもを味わいたい人にはオススメと言えるだろう。

こいつには雪塩をひとつまみ振りかけて食べる。雪のようにふんわりとした塩が芋の甘さをぐっと高め、より濃厚な甘さに仕上げてくれる。シルクスイートは焼き芋も美味しいが、さつまいもチップスも塩気が甘味を増幅させて塩でなく砂糖を入れたのではと考えるほど甘くなるのでオススメだ。


最後に「安納芋」。

こいつは皮を剥かずに頬張る。

ふくよかな形に見合った蜜にも勝る甘さとねっとり感は、まさに極上の一品。

しかも、石焼きのおかげで甘いシロップが溢れ出て、皮はカラメルのように香ばしくて甘い。

これはもはや芋ではなく、芋の形をしたスイーツだ。畑で獲れたクレームブリュレだ。

安納芋に塩やバターは要らない。ただこの芋の濃厚な甘さを楽しめばいい。それが安納芋の強みなのだから。



「ふうぅぅぅ…食った〜!」


ひと通り食べ終えた俺は、家にあった茶葉で淹れた煎茶を飲みながら一息つく。

煎茶が甘く感じる。どうやら口の中に蜜芋たちの甘い余韻が残っているみたいだ。

…暫くはその余韻をお供に、煎茶を楽しめそうだ。


キゲンさん、一度安納芋でスイートポテトを作ったことがあったんだけど、焼き芋の方が甘くて美味しかったです。

「目黒のさんま」と同じように、安納芋は焼き芋に限るってことなのかな?(キゲンさんがまだ安納芋の美味しいスイーツを知らないだけだろうけど…)

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