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徒然メシ  作者: 友好キゲン
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田舎のたまきび


── どう食べたらいいだろう?


俺は親戚のおばちゃんから貰った野菜を眺めながら悩んでいた。

おばちゃんがお土産にとくれた野菜はどれも新鮮でそのままでも御馳走になるものばかり、故にどう食べようか迷っていたのだ。


「えーっと、茄子と胡瓜は糠に漬けたし、トマトは残った茄子と一緒にラタトゥイユにしてもいいな。にんじんは…スープにしても良いよな。あとは……こいつか。」


そう言って手に取ったのは、葉っぱの着物でお粧しをしたとうもろこしだ。

こいつは自然の栄養と太陽の恵みを目いっぱい吸って育ったとうもろこし。生で食べても甘くて美味い。

だからこそ困っているのだ。

こいつの甘さをしっかり感じられる料理が思いつかないのだ。


「何をそんなに悩んでるんだ?」


俺が悩んでいるのが見えたのか、親父がそう声をかけてくる。

一人で考えるより誰かと考えた方が案が出やすいと考えた俺は、親父にとうもろこしをどう調理するか相談した。すると…


「お前は、落語の『目黒のさんま』って話は知っているか?」


「何それ?」


「さんまを食うときは、貴族の料理みたいに丁寧に料理するより、庶民みたいに無造作に料理した方が美味いって話だ。」


その話には一理ある。秋刀魚は懐石料理みたいにするより塩焼きとか刺身にした方が絶対美味い。だが、それととうもろこしに何の関係があるのだろうか?


「まだ分からないか?つまりだな…こういう田舎の空気が美味いところで収穫したものは、田舎の流儀で食うのが一番美味いのさ。ってわけで、ベランダに行くぞ!」


そう言って、親父は俺の腕を掴みベランダまで向かっていった。親父はいつも思い切りがいいが、腕を引っ張ってまで証明したい気持ちは抑えて欲しいものだ。


◆◇◆◇◆


ベランダに着くと、親父はせっせと準備を始めた。七輪に炭を入れて火を起こす。とうもろこしの葉を剥き取る。着物が脱げて姿が露わになったとうもろこしを暖かい網の上に寝かせる。

とうもろこしの甘く香ばしい匂いが出てきたところに、醤油をひと塗りする。

醤油の香りが立ち、祭りの屋台を彷彿させるあの香りが漂う。醤油でコーティングされたとうもろこしはより色っぽく美味しそうに仕上がっていた。


「やはり、とうもろこしと言ったら焼きに限るな!」


そう言って親父は焼き上がったとうもろこしをトングで掴み、俺に渡してくれた。

熱い。茎っぽい部分を持ちながら食べようとしたが、焼きたて故に熱くて上手く持てない。

親父がとうもろこしを焼く時に持ってきたキッチンペーパーで茎っぽい部分を包むと多少熱が伝わらなくなり持ちやすくなった。これなら安心して食べられそうだ。


ガブっとかぶりつき、実を食らう。

シャキシャキとハリのある皮を噛むと、中から砂糖のような甘さが飛び出てくる。

そして醤油の塩気と香ばしさが甘さを引き立たせ、感動するほど美味い。

またこの甘さと塩気を感じたくなり、再度かぶりつく。


「どうだ、美味いだろう?田舎で獲れた野菜は田舎の食い方で食うのが美味い。俺の言ってる意味が分かっただろう?」


俺が無我夢中にとうもろこしを食らうのを見た親父がドヤ顔でそう語る。

これは確かに親父の言う通りだ。おばちゃんから貰った新鮮なとうもろこしは、新鮮な時にしか味わえない食べ方をした方が美味しいに決まっている。

そう感じた俺は、再び貰った野菜で作る料理を考え直す。


─── ラタトゥイユはスーパーのでも充分美味いのができるし、トマトはやはり冷やしトマトかサラダで食おう。


そう誓いながら、また香ばしく焼けたとうもろこしに齧り付くのだった。



とうもろこし、甘くて美味しいですよね。

自分は茹でより焼き派なので、焼きで描きました。

醤油を塗った焼きとうもろこしはもはやご馳走!それも新鮮なものなら尚旨し。


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